中国、2023年度納税申告期限の明確化についての通知他

中国JBS‐中国税務及び投資速報(日本語要約版)2023年1月

税務法規

1. 全般

・2023年度納税申告期限の明確化についての通知(税総弁徴科函2022年245号)

概要

国家税務総局弁公庁は2022年12月27日付で、税総弁徴科函2022年245号(以下、「245号通達」)を公布し、月次又は四半期で申告する各税目の2023年度納税申告期限を明らかにしました。具体的な規定は次の通りです。

  • 2023年2月、3月、6月、8月、9月、11月、12月の納税申告期限はそれぞれ当月の15日までとする。
  • 2023年1月15日は日曜日のため、納税申告期限が23年1月16日まで延長される。
  • 2023年4月15日は土曜日のため、納税申告期限が23年4月17日まで延長される。
  • 2023年5月1日から3日までの3日間は法定休日のため、納税申告期限が23年5月18日まで延長される。
  • 2023年7月15日は土曜日のため、納税申告期限が23年7月17日まで延長される。
  • 2023年10月1日から6日までの6日間は法定休日のため、納税申告期限が23年10月23日まで延長される。

各地の主管税務機関が特別な事情により納税申告期限の調整を必要とする場合には、あらかじめ国家税務総局(徴管科技司)に届出を行う必要があります。

245号通達の全文は下記リンクからご覧ください。
www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810825/c101434/c5183381/content.html

・「徴税管理サービス事項の最適化に関する通知」(税総徴科発2022年87号)

概要

行政の簡素化及び下位組織への権限委譲、政務サービス改革をさらに深化させるべく、国家税務総局は2022年12月29日付で税総徴科発2022年87号(以下、「87号通達」)を公布し、徴税管理改革をさらに深化させ、一部の徴税管理サービスを最適化する意向を示しました。

87号通達の主な内容は以下の通りです。

  • 登記変更手続きの簡略化
    • 87号通達により、2023年4月1日より、納税者は市場監督管理部門での登記変更手続きを行う場合、税務機関へ変更情報を報告する必要はない。情報は金税三期核心徴収管理システムを通じて自動で共有される。
  • 省外移転に係る租税サービスの最適化
    • 納税者が省外に移転を行う場合、又は新たに転入する場合の手続きを最適化する。例えば、転入先の主管税務機関は、納税者情報の受領後1営業日以内に、期日内での納税申告とその他の税務手続きを行うよう、納税者に注意喚起しなければならない。
    • 納税者が移転前に税金を予定納税した場合は、転入先で引き続き規定に基づいて控除することができる。企業所得税、個人所得税(例えば、個人経営者に発生した経営損失など)において未使用となっている欠損金も、引き続き移転先で規定に基づいて使用することができる。

87号通達は2023年4月1日より施行されます。関連する納税者は87号通達を確認し、上記の税務サービスの利便性を享受することが推奨されます。

87号通達の全文は下記リンクからご覧ください。
www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810825/c101434/c5183506/content.html

2. 企業所得税(移転価格)

・事前確認(APA)に関する年度報告書

概要

2022年11月21日付で、国家税務総局は「中国事前確認に関する年度報告書(2021)」(以下、「2021年報告書」)の中国語版と英語版を公表しました。中国が事前確認に関する年度報告書を公表するのは今回で12回目です。

「2021年報告書」には、中国における事前確認(APA)の実施手続き及び実施状況の説明のほか、2005年1月1日から21年12月31日までの事前確認に関する統計データ及び分析も含まれています。21年12月31日までに、中国の税務機関はユニラテラル(一国)APA125件、バイラテラル(二国間)APA101件を成立させました。21年には、9件のユニラテラルAPA、11件のバイラテラルAPAが成立しました。成立したバイラテラルAPAのうち、アジア諸国、北米諸国、ヨーロッパ諸国との間で成立したものがそれぞれ8件、2件、1件あります。製造業のAPAが主体であり、実体経済に対する租税サービスの重要性を示していると言えます。

「2021年報告書」は法的効力を有せず、企業及び中国の税務機関が事前確認を行う根拠とはなりません。

「2021年報告書」の全文は下記リンクからご覧ください。
www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810214/n810606/c5182942/content.html

3. 増値税

・「中華人民共和国増値税法(草案)」に対する意見募集について

概要

「中華人民共和国増値税法(草案)」(以下、「増値税法草案」)は、2022年12月に第十三期全国人民代表大会常務委員会第三十八回会議で審議されるとともに、パブリックコメントの募集が行われています。募集期間は22年12月30日より30日間です。「増値税法草案」の主な内容は以下の通りです。

項目

「増値税法草案」における規定

備考

課税範囲

「増値税法草案」では、中華人民共和国国内で貨物、サービス、無形資産、不動産を販売する、及び貨物を輸入する組織と個人を増値税の納税者と規定している。

現行の「増値税暫定条例」に規定される「加工、修理・補修労務」の表現は削除され、関連内容はサービスに集約されている。

税率及び徴収率

現行の13%、9%、6%の3段階税率は維持され、小規模納税者等に適用される簡易課税の徴収率は3%。

現行の5%徴収率(納税者が労務派遣サービスを提供し、差額納税を選択した場合等に適用)が維持されるか否かは未定。

みなし課税取引

「増値税法草案」に規定されるみなし課税取引は、以下の3項目及び雑則が含まれ、既存の増値税法令におけるみなし販売の範囲を大幅に縮小している。

  • 組織・個人経営者が、自己生産又は委託加工による貨物を福利厚生又は個人消費に使用する場合。
  • 組織・個人経営者が貨物を贈与する場合。
  • 組織・個人が無形資産、不動産又は金融商品を贈与する場合。
  • 国務院財政部、税務主管部門が規定するその他の状況。

無償で提供されるサービスはみなし課税取引に含まれておらず、具体的な規定は実施条例でさらに明確に示される可能性がある。

混合販売

一つの課税取引が複数の税率・徴収率に及ぶ場合、取引の主要業務に応じて税率・徴収率を適用する。

「増値税法草案」では、企業の主要事業内容によって適用税率が決定される現行規定とは異なり、対象取引の主要業務により適用税率・徴収率が決定される(現行規定では、貨物の生産、卸売又は小売に従事する組織の混合販売は、貨物の販売として増値税を納付し、その他に従事する組織の混合販売は、サービスの販売として増値税を納付する)。

控除不能の仕入税額

控除不能の仕入税額には以下を含む。

  • 簡易課税方式を適用する項目に対応する仕入税額
  • 免税項目に対応する仕入税額
  • 非正常損失項目に対応する仕入税額
  • 福利厚生又は個人消費に用いられる貨物、サービス、無形資産、不動産に対応する仕入税額
  • 直接消費される飲食サービス、住民向け日常サービスと娯楽サービスに対応する仕入税額
  • 国務院財政部、税務主管部門が規定するその他の仕入税額

2019年11月に公布された「増値税法(意見募集稿)」と比較すると、その中で控除不能とされていた貸付サービスに対応する仕入税額の規定は、「増値税法草案」には含まれていない。具体的な規定は、実施条例及び関連通達による明確化が待たれる。

未控除税額の還付

当期の仕入税額が売上税額を超えた部分は、翌期に繰越し又は還付を請求することができる。

「増値税法草案」における期末未控除仕入税額の還付制度は、現行の中国政府による減税・費用削減政策の方針と整合している。

「増値税法草案」の内容についての意見提出は、2023年1月28日をもって締め切られています。

・「増値税小規模納税者に対する増値税減免等の政策の明確化に関する公告」(財政部、国家税務総局公告2023年1号)

・「増値税小規模納税者に対する増値税減免等の政策に係る徴収管理事項に関する公告」(国家税務総局公告2023年1号)

概要

2023年1月9日、財政部、国家税務総局は共同で、財政部、国家税務総局公告2023年1号(以下、「1号公告」)を公布し、2023年1月1日から23年12月31日までに施行される増値税の関連政策を明確化しました。同日、租税徴収管理に関する事項を明確化するため、国家税務総局は国家税務総局公告2023年1号(以下、「国税1号公告」)を公布しました。1号公告及び国税1号公告の主な内容は以下の通りです。

項目

詳細

増値税小規模納税者に関する増値税政策

小規模納税者の増値税免税政策

  • 増値税小規模納税者が課税対象の販売行為をし、月次の合計販売額が10万人民元を超えない場合(四半期ごとに納付する場合、販売額が30万人民元を超えない場合、以下同じ)、又は合計販売額は10万人民元を超えるものの、当期に発生した不動産販売額控除後の月次の販売額は10万人民元を超えない場合には、貨物、労務、サービス、無形資産の販売に係る増値税を免税とする。
  • 増値税差額課税政策を適用する小規模納税者については、差額計算後の販売額によって、上記規定における増値税の免除政策の適用可否を決定する。

上記免除政策の条件を満たす小規模納税者であっても、当該販売収入に係る免税優遇を放棄し、増値税専用発票の発行を選択することができる。

リース収入

その他の個人が一括賃貸料として受け取った賃貸料収入は、リース期間内で均等分割した場合の月次の賃貸料収入が10万人民元を超えない場合、増値税を免税とする。

小規模納税者に適用される徴収率/予定納税率

3%の徴収率・予定納税率が適用される小規模納税者の課税販売収入・予定納税項1 には、1%の軽減徴収率/予定納税率が適用される。

上記の小規模納税者は、1%の徴収率で増値税発票を発行する必要がある。納税者は当該販売収入に係る減税優遇を放棄し、増値税専用発票の発行を選択することができる。

追加控除政策

生産型サービス業納税者2

当期に控除可能な仕入税額の5%を追加控除でき、控除可能な仕入税額は105%となる。

生活型サービス業納税者3

当期に控除可能な仕入税額の10%を追加控除でき、控除可能な仕入税額は115%となる。

1 現行の増値税規定により、「増値税予定納税項目」とは、納税者がその機構の所在地以外の県(市、区)で関連するサービスを提供することを指す。例えば、納税者が県(市、区)をまたがって建築サービスを提供する場合、当該サービスの発生地の主管税務機関に予定納税する必要がある。

2 生産型サービス業の納税者とは、郵政サービス、電信サービス、現代サービス、生活サービスの提供による販売額の総販売額に占める割合が、50%を超える納税者を指す。

3 生活型サービス業の納税者とは、生活サービス(文化体育サービス、教育医療サービス、観光娯楽サービス、飲食宿泊サービス、住民日常サービスとその他生活サービス)の提供による販売額の総販売額に占める割合が、50%を超える納税者を指す。

関連する規定、公開文書は、下記リンクをご参照ください。

「1号公告」
www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5183530/content.html

「国税1号公告」
www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2023-01/10/content_5736056.htm

4. 会社法

・「中華人民共和国会社法(改正案第二次審議稿)」に対する意見募集について

概要

会社の組織と行為をさらに規範化し、会社、株主及び債権者の合法的権益を保護するため、第十三期全国人民代表大会常務委員会第三十八回会議は、「中華人民共和国会社法(改正案第二次審議稿)」(以下、「会社法二審稿」)について審議を行い、2022年12月30日付でパブリックコメントを募集しています。全15章262条からなる「会社法二審稿」のうち、主な改正内容は以下の通りです。

  • 株主の出資責任の強化
    • 株主が期日までに出資金を全額納付しなかった場合の権利喪失持分の処理と賠償責任の明確化
    • 会社が期限到来した債務を弁済できない場合において、会社又は期限到来債権の債権者は関連株主に対して出資の前納を求める権利を有することの明確化
    • 出資予定だが払込期限未到来の持分を株主が譲渡する場合には、譲渡人は払込未了の出資に関して譲受人に対して填補(てんぽ)責任を負うことの明確化
  • 会社組織機構の設置とその職責規定の完備
    • 株主会と取締役会の職責区分のさらなる明確化
    • 取締役会メンバーのうちの従業員代表に関する規定の完備
    • 株式有限会社監査委員会の人員構成と資格要求のさらなる明確化
    • 小規模な有限責任会社は株主全体の同意を経て監査役を設置しなくてもよいことを明確にし、企業ガバナンスの柔軟性のさらなる向上
  • 取締役責任の完備
    • 取締役、高級管理者が職務執行に際して他人に損害を与えた場合、会社は賠償責任を負わなければならない。取締役、高級管理者に故意又は重大な過失がある場合にも、賠償責任を負う必要がある。その在任期間中に取締役が会社の職務を執行することに起因して会社が負担する賠償責任に対し、責任保険をかける規定を新たに追加
  • 上場会社組織機構の完備
    • 国務院証券監督管理機構に対し、上場会社の独立取締役の具体的な管理方法を規定する権限を授権
    • 上場会社の監査委員会の職権を明確化
    • 上場会社は法律に基づいて株主、実質支配者の情報を開示しなければならず、関連情報は真実、正確、完全でなくてはならないことを明確化
    • 上場会社の支配子会社が当該上場会社の株式を取得してはならないことを明確化
  • 国家出資による会社の関連規定の改正
    • 「会社法二審稿」は国家出資による会社に関する規定を完備し、企業国有資産法と関連付けている。国有独資会社は監査役会又は監査役を設置しないことを明確にし、取締役会監査委員会は監査役会の関連職権を行使する。
  • 会社登録抹消に関する実務上の困難への解決策
    • 「会社法二審稿」に強制抹消の規定が新たに設けられ、会社登記機関は統一的な企業情報公示システムを通して対象企業の情報を開示する。開示期間満了後、異議がない場合、会社抹消登記を完了する。

改正案第二次審議稿についての意見募集は、2023年1月28日をもって締め切られています。

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