タイ、源泉徴収税率の1%引き下げ及び外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の順守を含む、e-Taxシステムの採用を奨励する措置の延長

タイJBS フラッシュニュース 2023年1月30日

源泉徴収税率の1%引き下げ及び外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の順守を含む、e-Taxシステムの採用を奨励する措置の延長

e-Taxシステムに係る税制措置の延長

タイ閣議は、e-Taxシステムへの投資を奨励する税制措置を3年間(2023年1月1日から2025年12月31日まで)延長する勅令案を、以下の要約のように承認しました。

  1. 2023年1月1日から2025年12月31日までの期間に発生する、次の項目に係る損金算入費用の法人所得税目的における2重控除

    a)e-タックスインボイス及びe-領収書システムへの投資
    電子証明書を作成、受信、送信又は保存するためのコンピューター及び装置に係る支払を含む、電子文書作成及び情報受信のためのシステム費用。ただし保守費用を除く。

    b)e-源泉徴収税システムへの投資
    電子情報の送信目的におけるコンピューター/ストレージに係る支払を含む、電子情報の送信のために行われる投資原価。ただし保守費用を除く。

    c)e-タックスインボイス及びe-領収書又はe-源泉徴収税サービスのサービス提供者に支払われる費用

    a)及びb)の資産は以下でなければなりません。

    (1)未使用であり、2025年12月31日までに使用可能となっていること。
    タイ国内に所在すること。
    (2)取得され、使用可能となる会計期間から少なくとも3連続会計期間にわたって使用されること。
    (3)一部又は全部が投資奨励法、国家競争力強化に関する法律又は東部特別開発地域に関する法律に基づく優遇税制の対象となっていないこと。

  2. e-源泉徴収税システムによる送金に係る源泉徴収税率の引き下げ
    2023年1月1日から2025年12月31日までの期間に行われる支払について、通常の5%、3%、2%の税率が1%に引き下げられる(以前の低減税率は2%であった)。

e-寄付システムを通じて行われる寄付の税制措置の延長

タイ閣議は2023年1月24日、e-寄付システムを通じて寄付を行った個人、会社又は法人格を有するパートナーシップに対する税控除措置の延長を承認しました。2023年1月1日から2024年12月31日までの期間に、13の特定慈善団体*に行われる寄付において適用されます。

  • 個人所得税:金銭で行われる寄付は2重控除となるが、他の寄付費用と合算して、控除項目を控除した後の課税対象所得の10%を超えてはならない。
  • 法人所得税:資産又は金銭という形で行われる寄付は2重控除となるが、慈善又は公益のための他の寄付と合算して、純利益の10%を超えてはならない。
  • 13の慈善団体への寄付を目的として行われた資産移転、販売取引又はその他の活動から所得が発生する個人、会社又は法人格を有するパートナーシップに係る法人所得税、付加価値税、特定事業税及び印紙税が免除される。ただし、資産/物品の原価は、個人所得税又は法人所得税のいずれの目的でも、控除可能な費用として扱われない。

*13の慈善団体は、(1)タイ赤十字社、(2)バドラマハラジャヌソーン財団、(3)シリラート財団、(4)チュラポン財団、(5)プラモンクットクラオ財団、(6)熱帯病病院財団、(7)シリラートがん財団、(8)ラジャビティ病院財団、(9)ソムデットプラピンクラオ財団、(10)クイーンシリキット病院財団、(11)サンドク病院財団、(12)神経学研究所財団、(13)小児病院財団。
 

外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act: FATCA)に対応した新たな税制立法の導入

タイ閣議は2023年1月24日、仏暦2560年(2017年)国際的税務コンプライアンス向上のためのタイ王国政府とアメリカ合衆国政府の間の協定のコンプライアンスに関する法律(「仏暦2560年FATCA法」)に基づいて交付される2省令案を承認しました。これらの省令案は、金融機関及び管轄当局に、FATCAに関連する国際協定に基づく税務情報の交換に関連する規則を提供します。

背景

FATCAとは、外国口座税務コンプライアンス法の略で、米国外の金融機関又はオフショア投資商品を使用する米国の納税者による脱税を防止することを目的とした米国の法律です。

税の透明性を向上させ、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を実施するために、タイ国と米国の政府間協定(Intergovernmental Agreement: IGA)が2016年3月4日、調印されました。IGAを順守するために、タイ政府は、金融機関及びその他の特定の事業体及び個人(同法では「報告義務者」という)が米国内国歳入庁と情報交換するために米国人の財務情報をタイ歳入局に報告することを義務付ける補助法である仏暦2560年FATCA法を官報に掲載しました。財務省は、同法に基づき、以下の2つの省令を起草しています。

  • 仏暦...(以下、「第1号案」という)報告義務者又は報告義務を有しない者としてのステータス証明書を申請する規則、手続及び要件を規定する財務省令案。及び
  • 仏暦...(以下、「第2号案」という)報告義務者が報告可能な情報を収集して管轄当局に提出するための規則、手続及び要件を規定する財務省令案

第1号案

ステータス証明書の申請を必要とする者

「報告義務があるか否かを示すステータス証明書の申請を必要とする者」は、仏暦2560年FATCA法第3条に基づく「報告義務者」である。

仏暦2560年FATCA法第3条には「報告義務を有する者」が列挙されている。それらは1)商業銀行、2)証券会社、3)生命保険会社、4)損害保険会社、5)デリバティブ取引業者、6)エスクロウ法による財産管理人、7)クレジットカード事業者、8)証券預託又は投資業務を行う個人である。

期限

省令の発効日より前に終了する暦年(おそらく2022暦年)については、ステータス証明書の申請は当該発効日から2カ月以内に提出しなければならない。

将来的には、毎年1月31日までに申請書を提出しなければならない。

方法

ステータス証明書の申請は、タイ歳入局のウェブサイトを通じて提出しなければならない。

申請検討委員会

財務大臣は、(1)ステータス証明書申請の検討、及び(2)税務当局に対する意見又は助言の提供、を行う委員会を任命する。

第2号案

報告義務者の義務

税務情報(氏名、住所、米国の納税者番号)及び金融口座情報(口座番号、口座残高/金額)を含む管轄当局への報告が必要な情報を収集する。

期限

前暦年に係る情報を翌年6月末日までに提出しなければならない。

方法

情報の提出は、タイの管轄当局(タイ歳入局であると想定されるが、特定されていない)が情報を承認し、国際データ交換サービス(International Data Exchange Service:IDES)システムを通じて提出したときに完了したとみなされる。

データ保持

顧客情報及び証拠書類は、情報を受け取った年から少なくとも6年間保持しなければならない。

当該措置のさらなる詳細、施行日及び関連規制は、まだ発表されていません。
 

※フラッシュニュースは、最近の閣議決定および財政政策上の発表に係る潜在的な税務上の便益・債務について、注意を喚起することを意図しています。係る閣議決定・発表の執行に必要な規制の枠組みはいまだ施行されていない可能性があるため、ここに示した情報・意見は暫定情報としてのみお取り扱いください。

※このフラッシュニュースの目的は提案事項の理解を容易にすることであり、事前に専門家に相談せず、税務計画のためだけに使用しないようご留意ください。
 

お問い合わせ先

EY Corporate Services Limited
33rd Floor, Lake Rajada Office Complex
193/136-137 Rajadapisek Road
Klongtoey, Bangkok 10110
Thailand
Tel: +66 2264 9090

事業税サービス及び法務サービス
Business Tax Services

ユパー・ウィチットクライソーン(パートナー)
Yupa Wichitkraisorn (Partner)
Tel: +66 2264 9090 ext. 55003


カモンラット・ヌチットプラシットチャイ(パートナー)
Kamolrat Nuchitprasitchai (Partner)
Tel: +66 2264 9090 ext. 77062


国際税務・トランザクションサービス‐
トランザクション税務アドバイザリー(ITTS-TTA)
International Tax and Transaction Services -
Transaction Tax Advisory (ITTS-TTA)


カセム・キエットセイリクン(パートナー)
Kasem Kiatsayrikul (Partner)
Tel:  +66 2264 9090 ext. 77033


チヌマー・フクハン(パートナー)
Chinumar Huk-Han (Partner)
Tel:  +66 2264 9090 ext. 77118


ジンスパー・チャナポーン(シニア・マネージャー)
Jinsupha Chanaporn (Senior Manager)
Tel:  +66 2264 9090 ext. 21133


日本デスク
Japanese Business Services

山岡 耕志郎(アソシエート・パートナー)
Koshiro Yamaoka (Associate Partner)
Tel: +66 2264 9090 ext. 54030

※所属・役職は記事公開当時のものです

日付:2023年1月30日
Date: 30 January 2023

EY | Building a better working world

EY exists to build a better working world, helping to create long-term value for clients, people and society and build trust in the capital markets.

Enabled by data and technology, diverse EY teams in over 150 countries provide trust through assurance and help clients grow, transform and operate.

Working across assurance, consulting, law, strategy, tax and transactions, EY teams ask better questions to find new answers for the complex issues facing our world today.

EY refers to the global organization, and may refer to one or more, of the member firms of Ernst & Young Global Limited, each of which is a separate legal entity. Ernst & Young Global Limited, a UK company limited by guarantee, does not provide services to clients. Information about how EY collects and uses personal data and a description of the rights individuals have under data protection legislation are available via ey.com/privacy. EY member firms do not practice law where prohibited by local laws. For more information about our organization, please visit ey.com

© 2023 EY Corporate Services Limited.
All Rights Reserved.

Japan Score no.: 00891-226Jpn
ED None

This publication contains information in summary form and is therefore intended for general guidance only. It is not intended to be a substitute for detailed research or the exercise of professional judgment. Neither EY Corporate Services Limited nor any other member of the global EY organization can accept any responsibility for loss occasioned to any person acting or refraining from action as a result of any material in this publication. On any specific matter, reference should be made to the appropriate advisor.

本書類は、簡潔な形の情報を含むものであり、したがって、一般的な指針提供のみを意図しています。これは詳細な検討または専門的意思決定の実行の代わりとなるものではありません。EY コーポレート・サービス株式会社およびその他の世界的なEY組織のいかなる一員も、この出版物におけるあらゆる内容を結果とする行動またはその差し控えによって生じた損失に対していかなる責任も負いません。特定の問題に関しては、適切なアドバイザーにご照会いただく必要がございます。