ブラジル連邦歳入庁、新たな移転価格税制の早期適用に関する標準指針を公表

  • 2023年2月17日、ブラジル連邦歳入庁(RFB)は、2023年(暦年)中に行われる関連者間取引に関して、2022年12月28日から暫定措置(PM)1,152号に定められた移転価格税制を早期適用する納税者の選択肢に関する標準指針(NI)2,132/23号を新たに公表。
  • この指針では、2023年(暦年)にPMの早期適用を希望する納税者は、2023年9月中に適用することを規定。
  • その他NIは、年間を通じて移転価格調整を実施するための基準を規定。
  • また、NIは、ロイヤルティの損金算入に関してPMが定めた一定の規制を正式に承認。
背景

ブラジルは過去にPM1,152/22号の公表により、独立企業間原則の採用に向けて重要な一歩を踏み出しました。しかしながら、この新法はブラジル税制の枠組みにおける新しい概念であったため、現行のモデルからPMによって導入されたモデルへの移行に関連するいくつかの側面について、RFBによる明確化が期待されていました。

2023年2月17日、RFBはNI2,132/23号を公表し、2023年(暦年)中に行われる関連者間取引に関してPM1,152/22号で定められた移転価格税制の適用に対する納税者の選択肢を設けています。

NIで導入された条項のうち、主要な施策は以下のとおりです:

  • 2023年に発生した関連者間取引にPM1,152/22号の定めを適用する場合は、2023年9月1日から2023年9月30日までの期間にバーチャル・センター・サービスのポータル(Portal e-CAC)を通じて、納税者によって電子的に正式承認され、NI RFB2,132/23号で公表された付属資料を添付しなければならない。一旦納税者が早期適用を行った場合、取り消しが不能になり、暦年中に行われたすべての取引に適用される。
  • 2023年9月から12月の期間に事業活動を開始する納税者、または同年1月から9月の間に事業活動を停止する納税者は、PM1,152/22号の適用について、個別で特定の期限を選択するものとする。
  • PM1,152/22号適用の結果、移転価格調整(補償調整の例外)により、過年度の法人所得税(IRPJ)および法人所得に対する社会負担金(CSLL)の算定基準を引き下げたり、その期間の税務上の欠損金額を増やすために行うことはできない。仮に納税者が合併、統合、分割、または閉鎖の場合を除き、2023年中に自発的な調整を認識したい場合、12月31日付にてIRPJおよびCSLLの算定基準として調整が行われる。
  • 納税者が2023年を通して補償調整を実施する場合、年度末までに実施しなければならず、以下のような補償調整の根拠説明が必要とされる:
    • 国内の事業体および関連者間取引で相対する海外事業体の会計帳簿への記帳の整合性。
    • 調整の性質および金額を証明するのに十分な、借方票、貸方票、または会計および商業文書の発行。
    • 関連者間取引で相対する海外事業体がブラジルの事業体が行った調整と同額の調整を行った旨を代表者が記載した上で、署名を行った宣誓書。
  • 自発的または補償的な調整については、2,132/23号により、商品の輸入および役務に関する税金を含む、その他税金の算定に反映されない。
  • ロイヤルティ支払いに関して(支払い、与信、現金引渡し、使用、または送金のいずれの手法にもかかわらず)NIは、PM1,152/22号に定められている以下いずれかの場合には損金不算入にする旨を制定している:
    • 低税率の国・地域または特権的な税制の恩恵を受けている事業体への支払い。
    • 当該金額の控除が次のいずれかに該当し関連者間取引にて二重非課税となる場合:
      • 支払先の関連者が同額を当該国で損金として取り扱っている場合。
      • ブラジル国内で支払いとして控除した金額が、支払先の国・地域の法に従い、課税所得として取り扱われない場合。
      • 直接または間接的なファイナンススキームにより上記事象を誘発する関連者間取引を創出している場合。
  • なお、ロイヤリティの損金算入に関して、NI2,132/23号は、PM1,152/22号の早期適用を適時に選択しない納税者については、現行適用されている損金算入限度額を引き続き順守することを定めている。また、移転価格税制の適用を受けない場合でも、PM1,152/22号が定める規則を、今後どの納税者でも採用することができる。
次なるステップ

NI2,132/23号の公表は、PM1,152/22号によって導入されたブラジルの新移転価格税制の解釈をより補強しています。また、ブラジル国内で新規則に関して激しい議論が行われている中、NIを今回追加公表したことは、この主題を推し進めようとするRFBの強い意欲の表れであり、政府が議会に提出しているPM1,152/22号を承認させたいと言う意思があることに期待が高まっています。

NI2,132/23号において、規則の適用期限を2023年に早期設定したことで、多国籍グループに対する圧力が高まりました。ブラジルの新しい移転価格税制に関するリスクを軽減し、この機会を活用するためには、新制度の効果を適切に識別・測定し、9月までに詳細な評価とプランニングを行う必要があります。これらの初期評価は、とりわけ新制度の迅速な導入に関心のある多国籍企業にとって重要なステップと考えられます。

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