ドイツ、立法手続き中の法改正の動向、重要な判決および連邦財務省通達他

ドイツ JBS Newsletter - 2023年8月

以下のドイツ最新情報についてご紹介します。

I. 法改正

1. 2023年中に成立した法改正の概要一覧
2. 立法手続き中の法改正の概要一覧

II. BEPS

OECD、第1の柱のAmount Bに関するさらなるパブリック・コンサルティーション・ドキュメントを公表
OECDは、2023年7月17日付で、BEPS2.0プロジェクトの一環の「第1の柱」のAmount Bに関する2021年12月8日付のコンサルテーションドキュメントに代わる新たなコンサルテーションドキュメントを公表しました。

OECD、第2の柱に関するさらなる報告書を公表
OECDは、2023年7月17日に、BEPS2.0プロジェクトの第2の柱であるグローバル税源浸食防止(GloBE)ルールに関する追加の運用指針を公表しました。

III. 移転価格

移転価格に関する連邦財務省通達(行政原則-移転価格)の改定
税務当局は、2023年6月6日付で「2023年行政原則-移転価格」(以下、VWG VP 2023)を公表し、国際取引課税法第1条に基づく所得更正ならびに国際的な独立企業原則の適用に関する原則を改定しました。

機能移転の要件に関するニーダーザクセン財政裁判所判決
ニーダーザクセン財政裁判所は、機能移転に関する初めての判例となる事案において、経済財(資産)の移転を伴わない機能移転の要件に関する審理を行い、「機能」および「機能移転」の定義を詳細に検討しました。

国際取引課税法に関する新しい適用通達草案の公表
税務当局は、2004年5月14日付の国際取引課税法通達に代わる、通達改定草案を2023年7月19日に公表しました。草案には、特に、2022年1月1日から施行されているATAD導入法(ATAD-Umsetzungsgesetz、以下ATAD-UmsG)により新たに規定された国外所得の加算課税に関する規定および出口課税、ならびタックスヘイブン防止法(Steueroasen-AbwehrG)に基づく国外所得の合算課税の厳格化が反映されています。

IV. 法人税

EU域内恒久的施設の「永久欠損金」の控除に関する判決ドイツニュースレター2022年10月号の続報)
EU法に基づく設立の自由の原則は、所得免除方式の適用対象となるEU加盟国内に存在する恒久的施設で生じたいわゆる「永久欠損金」の消滅に矛盾するものではないとした欧州司法裁判所判決を受けて、連邦財政裁判所は、恒久的施設で生じた永久欠損金の国内本店側での法人税上および営業税上の控除を否認する判決を下しました。

無利子の出資者(株主)勘定に係る隠れた利益配当の評価
連邦財政裁判所は、会社側で出資者(株主)勘定に計上された貸付債権に対して妥当な金利が請求されない場合の隠れた利益配当認定に際して適用される金利を、いわゆるマージン案分原則に基づいて決定することを容認する判決を下しました。マージン案分原則に基づく金利は、一般的な銀行預入金利を下限とし、借入金利を上限とするマージンレンジ内で見積もられます。

V. 組織再編税法

現物出資に際しての組織再編税法上の損失相殺禁止規定の適用
組織再編に際しては、組織再編税法第2条第4項第3文により、税務上の遡及(そきゅう)期間において、譲渡側の権利主体の有する(プラスの)所得と、譲受側権利主体の有する繰越損失、当期中再編日以前に発生したマイナスの所得、繰越利息との相殺が禁止されていますが、連邦財政裁判所は、この損失相殺の禁止は、現物出資の場合にも適用されるとの判決を下しました。

VI. 源泉税

EUレベルで統一化された源泉課税手続きに関するEU指令案
欧州委員会は、2023年6月19日に、EU域内におけるクロスボーダーの投資を促進し、課税の簡素化を図るとともに、乱用的な源泉課税制度を防止するため、源泉課税の対象となる支払い(配当および利子)に対する源泉課税および関連する軽減措置に関するEU共通の手続き(いわゆるFaster and Safer Relief of Excess Withholding Taxes、以下FASTER)を導入するための、FASTER指令の第1次草案を公表しました。

VII. VAT

充電ステーションでの電気供給に関する欧州司法裁判所判決
欧州司法裁判所は、充電ステーションでの電力購入は単一の(財貨の)供給に該当し、充電に関連する個々の役務要素が、財貨の供給から独立したその他の役務に分類されることはないとの見解を示しました。

チェーン取引に関する適用通達の改定
連邦財務省は、2023年4月25日付通達により、VAT適用通達の中のチェーン取引に係るVAT上の取り扱いに関する章を改定しました。中核となっているのは、チェーン取引の最初または最後に位置しない中間事業者に関する説明です。

旅行役務に関する猶予期間の再延長ドイツニュースレター2023年2月号の続報)
2021年1月29日付連邦財務省通達に盛り込まれた、第三国所在の事業者によるVAT法第25条のマージンVAT課税規定の適用に関する容認規定が、2026年12月31日まで再延長されています(2023年6月27日付連邦財務省通達)。

経営ホールディング会社による前段階VAT控除ドイツニュースレター2022年10月号の続報)
連邦財政裁判所は、2023年2月15日に、経営ホールディング会社が自身が受益した役務(仕入役務)を無償の株主出資として子会社に拠出する場合、ホールディング会社による前段階VAT控除は原則として認められないとした欧州司法裁判所の先行判決を受けた判決を下し、ホールディング会社による仕入役務に係る前段階VAT控除が認められない場合を示しました。

VIII. 不動産取得税

不動産取得税上のグループ条項に関する適用通達の改定
税務当局は、2023年5月25日付連邦各州上級財政局共同通達を通じて、不動産取得税上のグループ条項(不動産取得税法第6a条)に関する適用通達を改定しました。通達には、支配企業の要件に関する連邦財政裁判所判決が反映されるとともに、2021年7月1日以降適用されている法改正に合わせた編集上の修正に加えて、個々の項目について修正が行われています。

IX. 関税

欧州委員会による関税制度改革
欧州委員会は、2022年12月8日に発表された、「デジタル時代のVAT(VAT in the Digital Age、以下ViDA)」と呼称される付加価値税の分野での広範な提案に続き、2023年5月17日に関税制度改革を目的としたさらなる改正パッケージを発表しました。

X. 個人所得税/賃金税

小規模太陽光発電設備に対する所得免税規定に関する適用通達
特定の小規模太陽光発電システムの運営者は、2022年以降、所得税免税の恩恵を受けています。連邦財務省は、2023年6月12日付連邦財務省通達を通じて、事業届出および税務登録に関する容認規定を公表し、2023年7月17日付通達において、所得税法上の新規定に関する見解を示しました。

XI. 税務会計

国外子会社への貸付金に伴う為替差損の損金算入
バーデン・ヴュルテンベルク財政裁判所は、国外子会社に対する出資者(株主)貸付に伴う為替差損は、法人税法第8b条第3項第4文(2021年まで適用された旧条文)に規定される損金不算入の対象にはならないとの判決を下しました。本判決に対しては連邦財政裁判所での上告審が審理中で、連邦財政裁判所による判決が待たれます。

XII. トランスペアレンシー・レジスター

国内不動産を保有する国外会社の届出義務に関する質疑応答集
連邦行政局(Bundesverwaltungsamt、以下BVA)は、2023年5月5日に、トランスペアレンシー・レジスターに関する新しい質疑応答集(以下FAQ)を公表しました。詳細な分野における個々の変更点に加え、特に、いわゆる「不動産事案」について特別のセクションが追加されています。
 

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