米国IRS、スケジュールUTP違反の納税者への通知開始

IRSが特定の納税者に対して、不確実な税務ポジション(UTP)の報告に関する規則違反の通知を開始したことが分かりました。特にこの通知では、報告対象となるUTPについての「簡潔な説明」の要件がスケジュールUTPで満たされていない点が指摘されています。

背景

2022年12月、IRSは、不確実な税務ポジションを開示するスケジュールUTPおよびその作成指示書を改訂の上公表しました。スケジュールUTPは、(1)1000万ドル以上の資産を有し、(2)監査済み財務諸表を提出または監査済み財務諸表に含まれ、(3)スケジュールUTPで報告する必要がある何らかの不確実な税務ポジションを有する法人が対象とされ、フォーム1120(米国法人)、フォーム1120-F(外国法人)、フォーム1120-L(米国生命保険会社)またはフォーム1120-PC(米国損害保険会社)のおのおのの法人税申告書に添付する必要があります。

法人は、以下の2つの条件に該当する場合、スケジュールUTPにおいて連邦法人税のポジションを報告する必要があります。第1に、当年度またはそれ以前の課税年度の米国連邦法人税申告書において課税上のポジションをとっていること。第2に、法人もしくは関連者が、(1)監査済み財務諸表において、米国連邦法人税の税務ポジションに帰するタックスベネフィットに対する引当金を計上している、または(2)当該法人が当該ポジションについて訴訟提起する意図があるためその税務ポジションについてタックスベネフィットを認識していること。

スケジュールUTPを添付する法人は、(1)税務ポジションの税務上の取扱いに影響を及ぼす事実関係、(2)IRSが税務ポジションを特定するに足ると思われる情報、(3)ポジションが抱える不確実性の特色、と共に不確実な税務ポジションについての簡潔な説明をスケジュールに含めなければなりません。

IRSによるUTP通知

IRSには、UTPに関するすべての簡潔な説明をレビューおよび評価し、スケジュールUTPのガイダンスを順守しているか評価する集中審査チームがあります。スケジュールUTPにおける情報がスケジュール作成指示書の要件を満たさない場合、審査チームが納税者に連絡を取ることとなります。IRSが発行している通知は、このチームによるUTP審査に基づいていると考えられ、簡潔な説明に、不確実性を記述する十分な詳細が含まれないため、スケジュールUTPの作成要件が順守されていないことを伝えています。この通知はまた、IRSが今後もスケジュールUTPをレビューする予定であると警告しており、納税者はフォームの作成指示書に準じてスケジュールUTPを作成する必要があります。

通知の重大性

IRSは、他のリスク分析要素と組み合わせてスケジュールUTPをコンプライアンス違反のリスクが高い納税者特定の手段として活用し、税務調査時に問題の効果的かつ効率的な検討に役立てています。IRSによる通知は、納税者が適切な不確実性の高い税務ポジションの詳細を報告することを徹底するコンプライアンス主導の取り組みのようです。したがって、納税者は将来のコンプライアンス違反に問われぬよう、必要な具体性をもって報告対象となるポジションを説明していることを確認しなければなりません。

お問い合わせ先

秦 正彦 シニア・テクニカル・アドバイザー

野本 誠 パートナー

※所属・役職は記事公開当時のものです