Tax controversy update vol. 14 ― 共通ポイントの税務処理

第13回では、今後の税務調査における消費税の重要性を取り上げました。 第14回では、その中の具体的項目の一つとして「共通ポイント」にかかる税務処理の問題を取り上げます。

令和4年10月3日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ系の「Tポイント」と、三井住友フィナンシャルグループの「Vポイント」が統合されるとの報道がありました。実現すれば、会員数は単純合算で国内最大規模になるとのことで、ポイントを通しての企業の顧客囲い込みは今後もますます増えていくものと想定されます。この「ポイント」、特に複数の企業が加盟して利用できる「共通ポイント」の税務処理については、当局も大変注目しています。

近時では、大手百貨店が運用する共通ポイントの消費税法上の取り扱いを、当局が認めた事例が新聞で報道されました。また、訴訟まで発展した事案として大阪高裁令和3年9月29日判決があり、会員が共通ポイントを交換した際に生じる交換先企業と交換元企業の処理について明らかにされています。少しずつではありますが、共通ポイントの税務処理が明らかになってきている状況かと思われます。

そのような中で、令和2年1月に国税庁から公表された処理例は、当局の考え方を端的に示しているように思います。当該処理例では、ポイント付与加盟店、ポイント使用加盟店およびポイント会員の処理を例示しています。処理の具体例として重要なのはもちろんですが、ポイント制度運営会社の処理を明らかにしてはいないことと、ポイント付与加盟店とポイント制度運営会社との取引は不課税との前提を置いていることに注意が必要です。

すなわち、当局は、ポイント付与取引については対価性のない取引との理解を前提においていることになります(下記図参照)。あくまで個別判断をするという建前にはなっていますが、税務調査での対応でも、ポイント付与取引を対価性のある課税取引と認めてもらうことのハードルは高いと感じます。 

よって、納税者としては、付与取引を課税取引とする場合には、何に対する対価なのかを明確にする必要があり、ポイント制度運営会社との契約書、会員との規約という契約関連資料を納税者が行った税務処理と整合する形で準備しておく必要があります。また、10月から開始されるインボイス制度により、レシートや受領証から形式的に消費税の取り扱いを判断するという実務が浸透すると、これらレシート等の疎明資料としての価値が一層高まることが想定されます。レシート等の改定には、システムの改変等も必要になってくることから、インボイス制度対応とセットにした対応が望まれます。 

また、近時では、ポイントの「値引き」という性質を前面に出し、ポイントの付与と使用を通してみると納税額に影響しないという立論で、付与取引を課税取引とする考え方も有力に提起されています。ただ、この考え方も付与加盟店と使用加盟店の処理をあわせる必要や、ポイントの使用追跡ができるようにしておくことなどが必要になり、事前の準備が必要な点には変わりありません。 

すでにポイント制度を導入している企業、これから導入する企業に関係なく、またポイント制度を自ら運営しているか、加盟しているにすぎないかに関係なく、ポイントにかかる税務処理のポジションを決め、それと整合した疎明資料を準備して、税務調査に臨むことが望まれます。 

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