EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
最初のEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)四半期報告書の提出期限が2024年1月31日であることを踏まえ、欧州委員会はこのほど、追加のガイダンスを発表しました。
2023年8月17日、欧州委員会はEU CBAMの移行期間に関する規則を規定する実施規則を採択しました。EU CBAMの移行期間は2023年10月1日に開始しました。CBAMの対象となる物品の輸入者は、輸入品の「内包排出量」に関する追加記録を保持し、四半期ごとに欧州委員会に報告書を提出することが義務付けられます。2023年12月22日、欧州委員会は、移行期間中に使用する内包排出量を計算するためのさらなるガイダンスと「デフォルト値」を発表しました。
EUのCBAM制度は2023年10月1日に発効しました。現在の対象範囲は、セメント、肥料、アルミニウム、鉄鋼、電力、水素のカテゴリーに属する輸入品で、川上製品および加工された川下製品も多数含まれます。CBAM制度の下で対象となる範囲は、現在EU排出量取引制度の対象となっている他の排出集約型製品も含めるよう、いずれ拡大される可能性が高いと思われます。
EUの輸入者は、CBAMの義務の対象となるかどうかを確認し、それに応じて最初の期限に備える必要があります。CBAM報告申告者は、2024年1月31日までに、2023年10月1日から2023年12月31日までの期間に輸入された物品について、最初のCBAM四半期報告書を提出しなければなりません。CBAM四半期報告義務は2025年末まで継続されます。
2026年からはCBAMが本格的に施行され、これには追加義務も含まれます。輸入者がCBAMの対象となる物品の輸入を継続するためには、新しいタイプの認可が必要となります(「認定CBAM輸入者(authorized CBAM declarant)」としての認可)。輸入者は、輸入品の製造過程で発生する内包排出量に応じてCBAM証書を購入し、申告することが義務付けられます。
2023年8月17日付欧州委員会実施規則2023/1773(CBAM実施規則)により、CBAM対象輸入品の内包排出量を報告するために、申告者がデフォルト値を使用することが認められることが確認されました。2023年12月22日、欧州委員会は、移行期間中に使用するデフォルト値を示す資料(publication providing default values for use during the transitional period)を公表しました。
デフォルト値を使用することが認められるのは、施設レベルでの特定の製品の内包排出量に関する実際のデータが入手できない場合のみです。この場合、次の条件が適用されます。
それ以外の場合は、実際の内包排出量の算定に「EU方式(EU method)」が適用されます。
また、CBAM実施規則では、実際の排出量データが施設運営者から入手できない場合(および、法律によるデフォルト値が使用できなくなった場合)に、推計値を使用することが明確化されました。報告申告者は、施設運営者からの推計値に依拠して、いわゆる複合製品の総内包排出量の20%までを計算することができ、文言が更新されました(以前は「デフォルト値」という用語で呼ばれていました)。
実際には、多くのCBAM報告申告者が、CBAM報告書で完全なデータを提供することに課題を感じています。CBAM実施規則では、報告申告者は提出後2カ月までは提出したCBAM報告書を修正することができ、最初の2つの報告期間の報告書は3回目の報告書の提出期限まで修正することができるとされています。また、報告申告者は、正当な理由があれば、この期限を越えて報告書を更新する要請を提出できる可能性があります。ただし、このような要請が考慮されるのは、最初の報告書の提出から1年間だけです。
CBAM実施規則では、移行期間中、報告申告者は独立した検証者による四半期ごとのCBAM報告書の検証を要求されないことが確認されています。
規制案に規定されているように、再輸出加工の対象となった製品がその後自由流通に供される場合、輸入者は、当該製品の内包排出量に関する情報を含むCBAM報告書を提出する必要があります。CBAM実施規則では、再輸出加工の対象となり、その後自由流通に供される加工製品の内包排出量の計算について、さらなる詳細を定めています。このシナリオでは、同じCBAM製品カテゴリーに属する製品の加重平均内包排出量を用いて、内包排出量を計算する必要があります。
EU CBAMは、EU内外の企業に直接的および間接的な影響を与えます。最初の報告書の提出期限である2024年1月31日が間近に迫っており、期限内に順守するためには早急に行動を起こす必要があります。
他の国・地域もCBAMの導入を検討しています(例えば、英国は2027年までにCBAMを導入することを確認しました。2024年1月29日付EY Japan税務ニュース「英国政府、炭素国境調整メカニズム(UK CBAM)の採択を発表」をご参照ください。また、オーストラリアもCBAMの導入を検討しています。2023年8月21日付EY Global Tax Alert「Australia considers CBAM to address carbon leakage」をご参照ください)。
サプライヤーの見直し、関税や調達の最適化、製品フローの変更など、より広範なサプライチェーン変革の要素を含め、制度の影響を効果的にマッピングして対処するためには、バリューチェーン全体にわたる総合的なアプローチと同様に、状況をモニタリングすることが不可欠です。
CBAMの詳細については、最近のオンデマンドウェブキャストを再生してご覧ください(英語のみ)。
EY税理士法人
岡田 力 パートナー
上田 理恵子 パートナー
中村 健 アソシエートパートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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世界各国において持続可能な経済成長を志向する中で、主要な国や地域では脱炭素化に向けた新たな租税制度を採用しています。 CBAMとは、欧州連合(EU)および英国で導入・検討される炭素国境調整メカニズムで、域外からの特定の輸入産品に対してその製品が含有する炭素排出量の報告とそれに応じた価格調整のための課徴金を課す制度のことです。 EYは、企業が直面するCBAM上の課題に対して、環境・税務の専門家集団によるアドバイザリーやコンプライアンス支援を提供することで、サプライチェーンにおける効率的な管理をサポートします。
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