デジタルトランスフォーメーションはファン体験と収益の向上にどう寄与したか

スポーツフランチャイズとは、地元密着型のリーグ構成を意味します。プロスポーツチームが各地に本拠地を持ち、そこで行われる試合に特別な興行権をもつことで、地域に密着した活動を行うシステムです。

 

あるプロスポーツフランチャイズは、EYのサポートを得て、ビッグデータを期待を超える大きな価値に変換することに成功しました。


EY Japanの視点

各企業は顧客を自社のファンに育てあげ、自社収益の最大化することを狙っています。ときに自社顧客のファン化における考え方としてプロスポーツとファンの関係構築のメカニズムは、自社と顧客の関係構築に向けたヒントをもらえるなど、学べることも多いと言えます。

DXにより、ファンとスポーツチームとの接点はアリーナやスタジアムといったリアルな場における観戦タイミングだけでなく、デジタルメディアやスマートフォンを通じ、仕事や学校の隙間の時間、観戦後の帰り道、家族との時間などあらゆるタイミングで顧客接点を持つことを可能にし、ファンを虜にするチャンスをもたらしました。

本来、「お客様に、より心地良い時間を過ごして頂く」という精神はわれわれ日本人の強みであります。このような海外のスポーツチームのCX事例からも多くを学び、私たちは”デジタル”×”おもてなし”で何ができるのか。グローバルのCX先進企業に負けない世の中を日本発で作って参りたいと思っております。


EY Japanの窓口

岡田 明
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 公共・社会インフラセクター パートナー
青木 健泰 
EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション パートナー

シュートする男性プレーヤー
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The better the question

どうすればスポーツフランチャイズは、ファンにより良い体験を提供できるのか?

このスポーツフランチャイズが運営するバスケットボールチームは、優勝経験もあり、リーグで最も熱狂的なファンを抱えていました。しかし、フランチャイズはファン体験をさらに向上させたいと考えました。

このフランチャイズは、マーケティングのコンバージョン率を高めて収益成長を促進するため、時代遅れとなったITシステムを最新化し、最先端のツールを導入することを決意しました。そこで、EYでは、観客動員数と収益機会を最大化し、同時にファン体験も高めることができるデジタルソリューションの設計・開発を支援することになりました。

私たちは、常に、従来の枠にとらわれないアプローチでビジネスを行ってきました。また、イノベーションにおいても、業界の外にも目を向けて取り組んできました。今回のプロジェクトを機に、デジタルテクノロジー戦略をさらに進化させる基盤を築くことができました。

フランチャイズの営業チームは、ファンへの不要なメッセージの送信回避や、効率的な収益創出を可能にするソリューションとして、最先端の顧客関係管理(CRM)システムと顧客データのデジタルリポジトリを構築したいと考えていました。既存のシステムには、個々の顧客の興味や購入パターンが十分に反映されていない一般的なメッセージが送信されるリスクがあったからです。

 

また、フランチャイズは、CRMシステムのアップグレードに加え、営業スタッフのモチベーションの向上とより洗練されたツールの提供を可能にする、スマートなデジタルソリューションに投資することも望んでいました。これを受け、EYは、日次、月次、四半期ごとの目標の達成度を示す大画面の販売スコアボードの導入を支援しました。これにより、建設的な競争が促進され、組織全体で収益が増加しました。

Miami heat casestudy
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The better the answer

AIを活用したマーケティングで、適切なファン層に適切なオファーを届ける

このスポーツフランチャイズは、新しいデータアーキテクチャを構築し、リーグ内で最も洗練されたマーケティングシステムを確立しました。


販売状況を一元的に追跡し、収集したビッグデータを大きな価値に変える統合型プラットフォーム

フランチャイズは、マーケティングのコンバージョン率を飛躍的に高めるために、顧客データを追跡し活用することができる統合型のシステムを導入したいと考えていました。この要望に応えるため、EYはまず、EYと強い結び付きのあるAdobeとMicrosoftに協力を仰ぎ、既存の問題点の解決と、今後の収益成長および目標ROIの確実な達成に向けたデジタルロードマップを作成しました。

アリーナでのファン体験を最大化する強力なモバイルアプリ

次に、共同開発した新CRMシステムを、チームのモバイルアプリに統合しました。これにより、顧客の購買決定と行動について深い洞察が得られるようになりました。例えば、チームのアリーナがチケットレスであることから、新システムの導入により、入場者数、物販の売り上げ、飲食の購入履歴などの追跡が可能になりました。このようにして得られた膨大な価値ある情報は、空席を回避するための価格調整など、ファン体験の向上のために活用されます。また、このアプリを新たに導入されたAIプラットフォームと組み合わせて使用することで、ファンは、売店、トイレ、駐車場への最短ルートをアプリ上に表示させることができ、ストレスフリーな体験を楽しめるようになりました。

適切なメッセージを適切な相手に適切なタイミングで届ける、自動化されたマーケティングプラットフォーム

新たに得られた膨大なデータを活用するためのソリューションとして、EYは、Microsoft Dynamics 365 CRMとAdobe Experience Cloudの導入を支援しました。この統合されたテクノロジースタックを通じて、フランチャイズは、来場したファンが購入する飲食物の種類に至るまで、顧客行動をより詳細に把握することが可能になりました。

 

Adobe Experience Cloud の一部であるAdobe AnalyticsとAdobe Campaignは、集約データの分析に特化したソリューションであり、7つの異なるデジタルプロパティにおけるファン行動を理解するのに役立ちます。顧客行動に対する理解が深まれば、完全に自動化されたマルチチャネルのマーケティングキャンペーンを迅速に実行することができます。こうしたマーケティングキャンペーンを通じて、適切なメッセージが適切なタイミングで適切なチャネルを介して配信されるため、コート上のチーム成績に関わりなく収益成長を促せます。

Miami heat casestudy
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The better the world works

ファンにとってもフランチャイズにとっても、より良いスマートな体験

最先端のCRMプラットフォームの導入により、チケットの売り上げが伸び、販売スタッフの業務効率も改善しました。

最先端のCRMシステムの導入によるチケット販売額の増加率
これは注目に値する成果です。

このような成果は、データの力によるものであり、特に、こうしたデータを営業チームが手軽に活用できるようになったことが要因として挙げられます。またEYは、シーズンチケットの販売に関し、スタッフと購入者双方のプロセスの合理化も支援しました。その一環で、フランチャイズは電子署名などのテクノロジーを導入し、取引完結の迅速化とコンバージョン率の向上を実現しました。

 

AIを駆使して事業収益を増加させる

今回、新たな試みとなった数々のアップグレードは、そのすべてが相まって、このフランチャイズのビジネスに目を見張るような変化をもたらしました。運営するバスケットボールチームが、モバイルアプリによるグッズとチケットの販売収益を、わずか1シーズンで以下の増加率まで伸ばすことができたことは特筆すべき成果です。

モバイルアプリによるグッズとチケットの販売収益の増加率
これはフランチャイズにとって非常に大きな成果です。

より豊富な顧客データを取得できるようになった現在、営業チームは、チケット価格をリアルタイムのマーケティング情報に基づいて再設定するなど、空席の問題に迅速に対応できるようになりました。こうしたメリットはファンにも及び、よりシームレスで楽しいデジタル体験を生み出しています。

また、フランチャイズのマーケティング力が飛躍的に向上し、営業チームやマネージャーは目標を達成し成功を収める上で不可欠なさまざまなツールを利用できるようになりました。ファンも、より価値が高く、個々人の嗜好に沿った情報を基に最先端の観戦体験にアクセスできるようになりました。総じて、運営側とファン両者にとって有益なデジタルトランスフォーメーションとなりました。  




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