中小企業の生存に不可欠となる情報の力

EYがCOVID-19の影響で苦境に立つカナダ企業を支援した事例をご紹介します。
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EY Japanの視点 

人手不足や資金繰り等の課題を抱えた中小企業は少なくなく、政府は補助金や税制支援、経営力向上支援などの多様な制度を社会情勢に応じて整備しています。

中小企業に対して的確かつタイムリーに公共支援を行うには、企業独自の多様なニーズの把握と、迅速にサービス提供できる仕組みづくりが必要不可欠です。高度化するニーズに対応するには、業務やデータを統合し、継続的に顧客体験価値を最適化する取り組みが重要です。

ServiceNowは、住民や中小企業向けの行政サービスを提供するプラットフォームとしての実績を持ち、データやAIを活用した高度な分析、オペレーションの効率化・自動化を実現するための最新機能が組み込まれたソリューションです。EYは、ビジネスモデルの再構築からデジタル変革、顧客体験(CX)に精通するプロフェッショナルを有し、ServiceNowの導入を強力に支援いたします。


EY Japanの窓口

山本 公一
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
テクノロジーコンサルティング デジタル・イノベーション アソシエートパートナー 



顔は見えてないビジネスマン2人がオフィスで互いの拳を合わせている
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The better the question

競合が協力者になるとき、ビジネスは成長するのだろうか?

競合となる多くの会計事務所が、逆境に立ち向かう企業を支援するために、かつてないスピードで協力した例を見てみましょう。

COVID-19のパンデミックは、多くの国の経済を大きく揺るがし、カナダにも深刻な影響を及ぼしました。カナダには従業員99人未満の中小企業が120万社あり、カナダ国内全企業の98%を占めます。パンデミックが発生した当初、これらの企業の半数以上が大幅な減収を余儀なくされました。このうち最大33%の企業が1カ月以内に資金枯渇に陥り、さらに25%が2カ月以内に資金援助を必要とする状況でした。

こうした企業の財務負担を軽減するため、カナダ連邦政府および州政府は、賃金補助、賃料支援、特別金利融資、緊急救済制度などの支援策を矢継ぎ早に導入しました。一連の支援策は、カナダ企業がCOVID-19に起因する経済的影響を乗り切るために設けられたものの、実際の利用や手続きは容易ではありませんでした。事業主は、まずそれぞれの支援策の適用条件や申請手続きを理解するのにひと苦労しました。さらに状況を複雑にしたのは、多くの中小企業に指導を行える専属の会計士がいなかった点です。

 

連邦政府およびカナダ商工会議所は、こうした失意の声を聞き入れて、迅速な行動が必要なことを認識しました。連邦政府や州政府の支援策と、中小企業が自社に最適な制度を見つけるまでの“ギャップ”を埋める情報の架け橋となるものが求められていたのです。

Woman writing in diary while talking on smart phone at store
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The better the answer

企業向け相談窓口の開設

EYは数多くの会計事務所からアドバイザー150人を招集し、企業が支援制度を有効活用できる体制をわずか3週間で構築しました。

カナダ商工会議所は、EYに支援を依頼しました。EYは、支援制度の内容や利用条件を中小企業に助言できるプロフェッショナルネットワークを迅速に立ち上げ、たった12時間で数多くの会計・税務事務所から協力の合意を取り付けたのです。最終目標は、中小企業各社が自分たちの状況に最適な支援策を選択し、適切な判断ができるようにすることでした。EYはカナダ商工会議所と協力し、数週間のうちにBusiness Resilience Service (BRS) を立ち上げました。

「競争すべき時もあれば、手を取り合う時もあります」と、Ernst & Young LLP ParterであるWarren Tomlin氏は述べています。「私たちは、企業が迅速に支援を受けることのできる革新的な仕組みを構築しました。税務・会計に精通するプロフェッショナル集団を結集して中小企業を支援することが、関係者全員にとって大きな意義を持ちました」

イノベーションを大規模に展開する(innovation@scale)―― 対面できないパンデミック期に、どう進めるのか?

BRSでは、ソーシャルディスタンス規制の下、「非接触」でも人とのつながりを失わずに重要情報を迅速かつ効果的に共有する方法が求められていました。リモートワークが新たな常識となった環境でも、地理的に離れたプロフェッショナルチームが協力して解決策を練り、短期間で非接触型のコールセンターを構築・運営することに成功しました。

「EYが持つ4つのサービスライン(アシュアランス、コンサルティング、ストラテジー・アンド・トランザクション、税務)全てから人材を集め、5カ国にまたがるチームを組み、テクノロジーアライアンス体制に頼ることができました」と、Ernst & Young LLP Executive DirectorであるMike Smith氏は述べています。「私たちが総力を挙げ、BRSはさまざまな変動要素をつなぎ合わせたソリューションを構築し、事業主にスピードと思いやりのある支援を届けることができました」

具体的には、ServiceNowを使って問い合わせフォームを作成し、ケース管理ツールを開発しました。また、コラボレーションや研修にMicrosoft Teamsを使用しました。最終的に中小企業が政府の支援情報にたどり着けるようになったのは、イノベーションがもたらした結果でもあるのです。


競争すべき時もあれば、手を取り合う時もあります。私たちは、企業が迅速に支援を受けられる革新的な仕組みを構築しました。税務・会計に精通するプロフェッショナル集団を結集して中小企業を支援することが、関係者全員にとって大きな意義を持ちました。

EYは独自の方法論・ツールおよびGenesysの技術を駆使したテレフォニーシステム基盤を整備し、遠隔で情報を共有できるシステムを構築しました。これは、業界のプロフェッショナルたちが、苦難を抱える中小企業経営者とバーチャルに電話面談を行えるようにした初めての取り組みでした。他の主要機能として、今後の利用者対応を改善するための通話録音、必要に応じて上位者が通話中にリアルタイムで助言できるウィスパリング機能、重要情報を自動案内し、通話を効率化する自動音声応答(IVR)なども取り入れられました。

「現場では英語とフランス語による通話サービスを提供し、他の言語にも堪能な多様な人材がそろっていました」と、Ernst & Young LLP Manager Debby Wong氏は述べています。「あるスタッフが翻訳に苦労している時には、安全なチャネルでメッセージを送り、対象言語のネイティブスピーカーであるBRSアドバイザーへ、簡単に引き継ぐこともできました」

スピードを支えるテクノロジー(technology@speed)―― テクノロジーの力でスピードをどう加速させるのか?

テクノロジーは、相談窓口スタッフの労力をサポートし、スピードと効率性を備えた新たな業務モデルを生み出す原動力になりました。クラウドソリューションで機密情報を安全に保護し、連邦政府のセキュリティ基準に準拠しました。安全なインフラ基盤を整え、ケース管理の仕組みや高度な分析機能を開発し、利用者からのフィードバックを次の改善に生かすことができたのも、テクノロジーが支えになったからです。

さらに、テクノロジーを活用したトレーニングも実施されました。連邦・州政府が管轄するプログラムの詳細について学ぶ技術的な側面でテクノロジーが役立ちました。技術トレーニングが完了すると、プログラム情報は ServiceNow アプリケーションに入力され、BRS の担当者が該当情報にアクセスし、迅速かつ一貫したアドバイスを提供できるようになりました。経験豊富な税務・会計のプロフェッショナルから、共感力のあるカスタマーサービスのエキスパートに育成するといったソフトスキル面においても、テクノロジーが支えとなりました。具体的には、仮想ロールプレイングを使用して通話をシミュレーションし、最適なコミュニケーションやチームワークで相互にサポートする方法について学習しました。

「BRSが何千もの中小企業に助言を行い、困難な時期にカナダの人々を救うことができました。そして、さまざまな企業や非営利・慈善団体が再開と回復に向けて準備する助けにもなりました」と、Canadian Chamber of Commerce Senior Director of Tax and Financial PolicyであるPatrick Gill氏は述べています。

人を中心に(humans@center)―― 事業を続けるために、人々はどう支援を受けるのか?

2020年5月25日から、BRSヘルプラインは中小企業向けに、連邦や州の支援制度を活用するためのアドバイスを提供し始めました。ヘルプラインは6週間開設され、毎日迅速に電話相談に対応しました。各担当者は、相談1件ごとに平均20分以上かけて対応し、利用者から97%という高い満足度を獲得しました。

「多くの成功体験を聞くことができました」と、Ernst & Young LLP Senior Manager Hussain Basit氏は述べています。「地元のホッケーリーグを設立したある中小企業は、試合が中止となり、90%の減収に陥りました。BRSのプロフェッショナルは、事業主が存在すら知らなかった支援制度を提案しました。そのアドバイスを得たおかげで、地元のホッケーリーグは今も運営を続けています」

BRSは、危機的状況における支援の重要性を理解していました。BRSのチームは、テクノロジーを駆使して24時間態勢で活動し、親身になって網羅的なアドバイスを届けることができました。

店のウィンドウの「開店」表示を回す女性
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The better the world works

カナダ人は、世界的なパンデミック下でどのようにして互いに助け合い、事業を継続できたのか?

BRSの担当者は、企業から4,000件に達する質問を受け付け、累計7万7,000分かけて対応しました。相談者は、950億カナダドル相当額の政府支援金を手にすることができました。

BRSは、事業者に情報を提供するだけでなく、政府の政策にも影響を与える存在になっていました。具体的には、BRSがデータを収集・分析することで、カナダ政府は中小企業全体の財務状況をより正確に理解できるようになりました。政府は中小企業のニーズを把握できた結果、支援策をさらに調整し、より多くの中小企業が破綻せず存続できるよう救済しました。

「このヘルプラインは、緊急支援策を強化すべきものは何かを明らかにしました」と、Gill氏は述べています。「例えば、BRSは既存の融資や家賃補助の受給資格のない企業・団体を特定しました。こうした調査結果は、政府が問題解決に向けた新たな支援プログラムを作る助けとなったのです」

パンデミックを通じて、多くのカナダ企業は「変化に適応し、アジャイルな組織になる」ためには、どうすればよいか教訓を得ました。例えば、自動車メーカーが人工呼吸器の製造に乗り出し、蒸留所ではハンドサニタイザー(消毒液)を作るようになり、ホッケーリーグはマスクや手術着を生産するようになったのです。


BRSが何千もの中小企業に助言を行い、困難な時期にカナダの人々を救うことができました。そして、企業や非営利団体、慈善団体が再開と回復に向けて準備する助けにもなりました。

また、EYをはじめとする会計事務所は、先行き不透明な状況下に置かれた企業に財務アドバイスを無償提供しました。業界トップレベルの会計・税務コンサルタントとテクノロジーの力を組み合わせることで、BRSは過去に例のない速さで包括的な仕組みを立ち上げることができました。競合企業が知恵を出し合って起こすことのできるイノベーションが即時にビジネスの存続を救った、という事実が明らかになったのです。