EYの事例

Yaraが人事オペレーションを統一した方法とは

EYのチームは、ノルウェーの肥料メーカー、Yaraにおける人事オペレーションの再構築と、国境を越えたシームレスな統合作業を支援しました。その結果、人事部門が戦略性の高い業務に集中できるようになった事例をご紹介します。



EY Japanの視点 

コーポレート機能の一端を担う人事領域は、多様化する人材ポートフォリオの中での管理の高度化や従業員との接点も非常に多く、社内業務オペレーションが煩雑になりがちです。

人事部門が担う管理の高度化と従業員のエンゲージメントを高めるためには、最適なテクノロジーの活用が必要不可欠です。人事領域の基幹システムに加えて、労務管理やタレントマネジメントなど複数のシステムで構成された業務オペレーションのあり方を、従業員体験(EX)を向上させる取り組みの一環として検討するアプローチが有効です。

ServiceNowは、従業員のエンゲージメントを高めるプラットフォームとしての実績を持ち、各種申請や事務手続きを電子ワークフロー化する機能を有し、データや人工知能(AI) を活用した業務効率化や自動化に強みを持つソリューションです。EYは、デジタルを活用したEXに精通するプロフェッショナルを有し、ServiceNowの導入を強力に支援いたします。


EY Japanの窓口

山本 公一
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 デジタル・エンジニアリング アソシエートパートナー 



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The better the question

サイロ化されていた人事オペレーションを、デジタル戦略に適合させる方法とは?

Yaraの欧州地域における人事オペレーションは国ごとに異なり、解決策が求められていました。

世界有数の肥料メーカーであるYaraは、環境および農業ソリューションを提供しています。同社は世界複数の地域で従業員が働く多国籍企業ですが、人事担当者が互いに協力して作業を進め、社内向けサービスを提供するための統一されたプロセスやシステムが整備されていませんでした。

グローバル規模で人事管理アプリケーションが導入されていたものの、各国それぞれ独自のやり方で、あらゆる人事業務が行われていました。国によって業務のやり方が異なり、ある国ではメールですべての人事業務に対応し、別の国では紙の書類が必要とされ、さらに他の国では独自のSharePointサイトを人事連絡用に使う国もありました。その結果、基本的な業務でさえ、人事担当者が手作業で多くの時間を割く必要があるプロセスが残っていました。また、人事サービスの申請処理を自動化する仕組みがなかったため、すべての人事手続きが従業員にとって煩わしいものとなっていました。

私たちの目標は、人事オペレーションを標準化することでした。しかし、そのような変革に必要な専門知識や人材が当社に不足していたのです。

人事プロセスを1つの標準システムで一元管理する必要性

EYのプロフェッショナルとYaraで分析した結果、人事の役割と責任を明確化し整合性をとるべきことが明らかになりました。また、人事プロセスを最適化し、統合された人事システムを導入することが必要でした。こうしたことは、欧州一般データ保護規則(以下、欧州GDPR)に準拠するためにも役立ちます。現在のシステムでは人員需要を見える化・数値化する機能が限定され、経営陣が人員を最適化するために把握すべき情報を十分に得られていませんでした。

「私たちの目標は人事オペレーションを標準化することでした。しかし、そのような変革に必要な専門知識や人材が社内には不足していたのです。そこで私たちはEYに相談し、人事オペレーションモデルを分析し、従業員のための解決策を提案・導入することを依頼しました」と、 Yara のHead of HR TransformationであるSigrid Nordeide氏は述べています。

会議室で打ち合わせを行うビジネスパーソン
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The better the answer

人事プロセスを標準システムへ移行する

EYのグローバルなチームは、Yaraの人事サービスを完全にデジタル化し、各国・地域に適用できるモデルへ移行する支援をしました。

変革ジャーニーに向けたEYとの協力体制

約1年半にわたってYaraとEYが協力し、現状分析や欧州地域の新たな人事ターゲット・オペレーティング・モデル(TOM)の設計に取り組みました。人事サービスの問題解決に当たり、共通の自動化サービスチャネルを構築し、業務の効率化を図るよう取り決め、次のような期待効果を上げることを目指しました。

  • 業務プロセスとワークフローをデジタル化する
  • 従業員が各自で必要な情報を確認し、人事関連の申請用ポータルを整備し、作業時間を短縮する
  • 人事担当者が、戦略性の高い業務にかける時間を確保する
  • 欧州各地に散在するオンラインチームのコミュニケーションツールと、人事担当者のケース管理システムを導入する
  • 欧州GDPRに準拠する

「現状分析フェーズにおいて、新たな業務モデルやオンライン型のシェアードサービスチームの導入メリットを生かすためには、ServiceNowのようなデジタルプラットフォームがYaraの成功に欠かせないことが明確になりました」と、EY Consulting Engagement Partner Anja Undrumは述べています。

パーソナライズされたユーザー体験の実現

本プロジェクトチームでは、まず基本方針と最終的に目指す姿は何かを定めることから開始しました。そこから逆算し、既製のソリューションで対応できる機能と、変更が必要な機能について特定しました。特に各国独自の法律・規制、ワークスタイルの違いを踏まえて、人事担当者と従業員の双方にとってパーソナライズされたユーザー体験が最も重要であることがすぐに判明しました。

EYは同様の課題を抱えていた他企業を支援した実例を参考にしながら、Yaraのニーズを理解し、同社の目標達成に見合う多数の直観的なデザインや機能を提案しました。YaraがServiceNowの導入メリットや達成すべき成果を具体的にイメージする上で、EYの知見・見解が一助となりました。

開発はスプリント方式を採用し、何度もサイクルを繰り返して進められました。ワークショップでは、EYの提案についてYaraが自社の組織やワークスタイルに合うかどうかフィードバックを提供しました。3週間ごとのサイクルで、各スプリント直後にEYが開催した振り返りセッションでYaraが進捗状況を把握し、同社の意見を早い段階で吸い上げました。最終的に必要な品質保証/ユーザー受け入れテスト(QA/UAT)時間を短縮することができました。何度もやり取りを重ねたことで、EYのチームはYaraのニーズや価値観への理解を深めることができました。Yaraもまた、ServiceNowの仕組みや新しいワークスタイルがどのように実現できるのか納得できました。

「アジャイルに仕事をすることは、変化に対応することでもあるのです。プロジェクトを進める中で、問題の発生や優先課題が変わる状況にも対応するために、当初の進め方を見直し、方向転換しなければならない場面もありました。Yaraはアジャイルに対応できる優れたパートナーでした。こうした協力体制や仕事のしやすさが、EYが高品質で安定したプロダクトを開発する支えになりました」と、EY Norway ServiceNow Practice LeadであるVaibhav Shahは述べています。

“One EY”体制で大きな価値を創出

YaraのServiceNow導入プロジェクトにおいて、“One EY”体制で複数のEYのチームが連携して取り組み、Yaraに一貫した提案を行い、同社の成果達成を支援しました。EYは、人事および業界知識、プロジェクト管理、テクノロジー、組織変革などのノウハウを持つメンバーを投入した結果、Yaraに幅広いソリューションを提供することができました。


導入から半年後の顧客満足度
満足度スコアは、従来、従業員エクスペリエンスを重視している方針の成果を裏付けています。

円滑な移行の実現に向けて

EYはトレーニングや説明会を複数回実施し、Yaraが新しい仕組みに難なく慣れるよう支援しました。これが、人事担当者が円滑にServiceNowへ移行準備するための鍵となりました。エンドユーザーにとって、事前トレーニングなしで直感的に使える仕組みにすることが重要方針の1つでした(初期設定ガイドだけで新規にiPhoneを使い始めるイメージ)。

 

YaraのITチームへ開発内容をしっかり引き継ぎ、自社で修正・機能追加を行えるようにトレーニングを実施しました。こうしたことも、Yaraが今後改善を続けていく上で役立つでしょう。



セルフサービスは、Google検索世代のYaraの従業員に便利なものとなりました。導入から半年で約2万6,000回のポータル利用があり、そのうち問い合わせにエスカレーションされたのはわずか11.5%でした。その結果、人事担当者は時間に余裕ができた分、戦略性の高い業務に集中できるようになりました。




畑でノートパソコンを扱う女性
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The better the world works

サイロ化された分断型の人事体制から、統合化された組織へ移行する

新システムは、従業員に便利なものとなり、人事担当者は戦略性の高い業務に集中する時間を確保できるようになりました。

Yaraの人事部門は、国ごとに分断されていたサイロ型体制から、欧州地域共通の統一された組織へと移行しました。人事が同じ1つのチームとして機能するために欠かせないものとして、まず人事ポータルが導入され、国境を越えてサポートできる共通の仕組みが整いました。このポータルはシンプルかつ直観的なデザインで、操作も簡単です。セルフサービスは、Google検索世代の従業員に便利なものとなりました。導入から半年で約2万6,000回のポータル利用があり、そのうち問い合わせにエスカレーションされたのはわずか11.5%でした。その結果、人事担当者は時間に余裕ができた分、戦略性の高い業務に集中できるようになりました。

 

以前、Yaraでは各国の人事業務や、担当者が抱えていた問題を可視化できていませんでした。それが今では1つのシステムに集約されたことで、人事ポータルで起票されたケースをすべて人事マネジメントが確認でき、継続的な改善ができるようになったのです。こうして各作業にかけている工数が見える化でき、人事担当者が直面しているさまざまな課題を把握することが新たなシステムでは可能になりました。また、従業員が一番大事にしていることは何かが分かるため、人事は集中的な対応もできるようになります。

 

このシステムには人事のナレッジポータル機能があり、必要な情報検索や新着記事を追加する使い方もできます。現在、人事担当者51人が新システムを利用し、世界18カ国3,400人以上の従業員をサポートしています。従業員は、国ごとの福利厚生や給与情報を調べるために、複数のSharePointを行ったり来たりすることが不要になりました。ポータル上で必要な情報が見つからない場合、ポータル上から人事担当者に情報をリクエストすることもできます。このように人事は従業員が探している情報をポータルに追加でき、ナレッジデータベースとしてポータルをさらに充実させることができます。従業員はポータルから人事に直接質問や依頼ができるようになったため、以前のようにメールで依頼する必要がなくなりました。メールで対応していた時は、ワークフローが決められていなかったため、対応に時間がかかっていました。

 

「全プロセスをデジタル化したことで、従業員からの依頼をすべて追跡できるようになりました。担当者に自動で仕事が振り分けられるようになり、大幅な時間の節約ができました。その結果、人事業務が効率化され、重要性の高い業務に集中できるようになりました」と、People Services Team Manager Juliana Filippelli氏は述べています。



現在、51人の担当者がServiceNowのプラットフォームを活用し、18カ国で3,400人以上の従業員をサポートしています。




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