EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
今回の国民経済計算によると、2026年初めの時点で、経済はすでに勢いを失いつつあり、中東情勢の影響や最近のオーストラリア準備銀行(RBA)による利上げの影響が本格化する前から減速が見られていました。 実質GDP成長率は前期比0.3%と、市場予想を下回り、前期の0.9%から減速しました。
データセンター向けの投資が、オーストラリア経済の成長を3四半期連続で支えています。こうした動きを背景に、機械・設備投資は16.3%増となり、2012年の資源ブーム期のピークを上回る伸びとなりました。一方で、データセンターの設備の多くは輸入に依存しているため、これらの増加分は相殺され、純輸出はGDP成長率を0.8ポイント押し下げています。 また、サイクロンの影響による鉄鉱石や石炭の輸出減少や、教育サービス輸出の低下も、成長の下押し要因となりました。
他の民間需要についても、全体的に低調な動きとなっています。データセンター以外の分野における企業投資は低迷しており、政府の補助が終了したことにより、電気代など生活に不可欠な支出の負担が家計に重くのしかかっています。 また、裁量的支出の減少や消費財の輸入減少、消費者マインドの低迷とも相まって、今後の個人消費は低調に推移する見込みです。
政府部門は、防衛資産への支出や州政府による交通・医療プロジェクトへの支出の増加が見られたものの、州政府による電気料金補助制度の終了により相殺され、GDP成長には寄与しませんでした。
前年比2.5%の成長率は前期と同程度であり、オーストラリアの長期平均成長率とおおむね一致する水準となっています。一方で、生産性が伸び悩み、単位労働コストも高止まりしていることから、インフレ圧力は今後も続く可能性があります。
今回の結果が、6月のRBA会合の判断に影響を与える可能性は低いと考えられますが、EYでは、今年後半にさらなる金融引き締めが行われると予想しています。
中東紛争の影響や金利上昇、インフレの影響はまだ十分に現れていないものの、2026年のオーストラリア経済の見通しは、ますます厳しさを増しているように見受けられます。 慎重な消費行動や企業マインドの弱まり、さらには住宅市場の減速の可能性が、これらの影響に拍車をかけ、成長をさらに押し下げる要因となる可能性があります。
家計消費は0.5%増加し、GDP成長率に0.3ポイント寄与しました。 家計は引き続き、必需品やサービスへの支出を優先しています。必需品への支出は、政府の電気料金補助制度の終了も一因となり、電気代の増加などを背景に、0.8%増加しました。 一方、裁量的支出は0.1%の増加にとどまり、生活費の上昇圧力や中東紛争を巡る不確実性が引き続き影響していることがうかがえます。
可処分所得に占める所得税(社会給付控除後)の割合は、12.0%と引き続き高水準にあり、家計消費の重しとなっています。 家計の貯蓄率は6.2%となり、前期の7.0%からは低下したものの、コロナ禍前の過去10年平均とおおむね一致する水準となっています。
前年比では、家計消費は2.5%増と、前期から横ばいとなりました。 一方で、インフレの高止まりや金利上昇が需要を抑制する中、消費者マインドの低下にも示されているとおり、2026年には家計支出の伸びは鈍化すると見込まれます。さらに、経済の不透明感が続く中、RBAによる追加利上げの可能性もあり、下振れリスクが高まっています。
住宅投資は0.7%増加したものの、経済成長への寄与はありませんでした。 前年比では、住宅投資の伸びは3.5%と、前期の5.1%から大きく減速しました。
増改築投資は3.2%増加し、前年比でも3.5%増となりました。 新築住宅建設は、民間の一戸建て住宅の減少を背景に、今期は0.8%減少しましたが、前年比では3.5%増と、過去5四半期の比較的強い伸びから大きく減速しました。 所有権移転費用は今期に4.1%減少し、不動産市場の活動の弱まりを反映して、前年比の伸びも前期の11.0%から6.1%へと鈍化しました。 これは、連邦予算後に見られた住宅に対する消費者マインドの低下に先行する動きとなっています。
住宅投資の名目GDPに占める割合は5.4%と、コロナ禍前の過去20年平均とおおむね一致する水準で推移しています。 また、今期は建設コストの上昇圧力が強まり、今後は建設費や金利の上昇が住宅投資の伸びを抑制する可能性があります。 住宅着工許可件数は4月に3.4%減少し、3月の10.5%減に続く落ち込みとなりました。
総労働時間は0.9%増加しました。一方、労働生産性(労働時間当たりGDPで測定)は0.6%低下しました。 前年比では、生産性の伸びは0.3%にとどまり、コロナ禍前の過去20年平均である1.2%を大きく下回っています。
労働市場は需給が引き締まった状態が続いており、経済全体の賃金総額を示す指標である従業員の報酬(COE)は、今期に1.2%増加し、前年比でも5.9%増となりました。 3月までの前年比で3.3%増にとどまる賃金価格指数(WPI)と比べて高い伸びとなっていますが、これはCOEが雇用者数や労働時間の増加も反映しているためです。
より広範な労働コストの指標である名目単位労働コストは、0.8%増加しました。 前年比では、3.2%と前期から横ばいとなり、引き続き高水準にあります。 今後、単位労働コストの伸びを抑制しインフレ圧力を和らげるためには、労働生産性の持続的な改善が重要となります。
資源価格の下落や、鉄鉱石や石炭を中心とした鉱業生産の減少を背景に、企業収益は0.4%減少しました。 一方、前年比では企業収益は3.9%増加しました。
輸出価格と輸入価格の比率である交易条件は、1.1%上昇しました。 輸入価格は豪ドル高を背景に1.2%低下した一方、輸出価格は鉄鉱石価格の下落を受けて0.1%低下しました。
国内経済における物価上昇圧力を示す国民経済計算ベースの指標は、今期に0.4%上昇しました。 中東情勢悪化の影響による燃料価格の上昇や建設コストの上昇が、物価の押し上げ要因となりました。 前年比では、国内価格の上昇率は前期の3.1%から2.9%へとやや低下しました。
国際価格は、豪ドル高により輸入価格が低下したことを受け、1.3%低下しました。 前年比では、国際価格は0.8%低下し、2024年10~12月期以来初めての低下となりました。 中東情勢の悪化が継続する中、国際的な物価上昇圧力は強まる可能性があります。
民間投資は6四半期連続で拡大し、GDP成長率に0.7%ポイント寄与しました。 企業投資の増加を背景に、民間投資は3.6%増と前期の0.7%増から大幅に回復しました。 前年比では、民間投資は8.1%増と、2021年12月期以来の高い伸びとなりました。
企業投資は6.0%増加し、前年比でも10.5%増となりました。 ニュー・サウス・ウェールズ州およびビクトリア州におけるデータセンター関連投資の拡大が主な要因となり、機械・設備投資は30年ぶりの高水準となる16.3%増に達しました。 企業投資の名目GDPに占める割合は12.9%まで上昇しましたが、依然として、長期平均(15%弱)を下回る水準にとどまっています。
企業投資の先行指標である設備投資計画は、2025/26年度について4.5%上方修正され、2,080億豪ドルとなりました。 また、2026/27年度の設備投資計画の第2次推計は、前回の推計を上回り、2025/26年度の同時点の見込みと比べて11.1%増となりました。 設備投資計画の拡大は引き続き非鉱業部門が主導しており、前年比で15.3%増加しました。一方、鉱業部門の設備投資計画は2.2%の小幅な増加にとどまりました。 こうした動きは、データセンター投資に支えられ、今後も続く可能性がありますが、この指標にはコスト上昇の影響が含まれている点には留意が必要です。
公共投資の増加が政府消費の減少によって相殺され、公共需要は伸びが見られず、GDP成長に寄与しませんでした。
政府消費は前期に0.9%増加した後、減少に転じ、0.2%減少となり、GDP成長への寄与はありませんでした。 前年比では、公的消費の伸びは2.8%へと鈍化しました。主な要因は州政府による電気料金補助制度の終了であり、一方で住宅や高齢者介護などの分野における連邦政府の非防衛支出の増加が、防衛支出の減少を一部相殺しました。
公共投資は前期と同様、0.9%増加となりました。 主に、連邦政府による防衛装備品への支出(約7%増)や、州・地方政府による輸送や医療分野のプロジェクトへの投資が寄与しました。 公共投資は低調な伸びが3四半期続いた後、前年比で1.1%増加しました。 公共投資はGDP成長率に0.1%ポイント寄与しました。
公共需要の名目GDPに占める割合は引き続き約29%前後で推移しており、その内訳は政府消費が23.2%、公共投資が5.6%となっています。 この水準はパンデミック前の平均を大きく上回っています。 政府サービスへの強い需要や、進行中の公共インフラ案件を踏まえると、今後もこうした傾向は続くと見込まれます。
輸入が2.1%増加する一方で、輸出は1.1%減少し、純貿易は成長率を0.8%ポイント押し下げました。
データセンター向け設備の輸入拡大にけん引され、商品輸入は1.4%増加しました。 一方で、自動車需要の低下に伴い消費財輸入が減少し、これを一部相殺しました。 サービス輸入は3.8%増加し、豪ドルの上昇に支えられて、幅広い分野で堅調な伸びとなりました。
商品輸出は0.8%減少し、サイクロンの影響で港の稼働が制限されたことから、石炭や鉄鉱石の輸出が減少しました。 サービス輸出は、留学生数の減少に加え、学生1人当たりの支出が減少したことで、2.1%減少しました。
在庫動向は成長に寄与しませんでした。鉱業の在庫増加が、製造業や小売業の在庫減少によってほぼ打ち消されたためです。
国民経済計算によると、2026年初めの時点で経済はすでに勢いを失いつつあり、今期の成長率は0.3%にとどまりました。データセンター関連投資が成長をけん引し、家計消費も寄与した一方、公共需要の寄与はなく、純輸出はGDP成長を押し下げました。年率成長率は2.5%と前期並みでしたが、中東情勢や金利上昇、インフレの影響が今後本格化する中で、先行きは引き続き厳しいとみられます。
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