EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY-Parthenonは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
GENIUS法案の通過はデジタル決済インフラとトランザクション処理の進化の転換点となります。規制を明確化する枠組みを提供することで、法人・クロスボーダー・消費者決済全体でコストを削減し、トランザクション速度を加速させ、流動性を改善させる新たなチャンスの扉を開きます。ブロックチェーンを活用したステーブルコインは、現金や米国債のような現実世界の資産に裏付けられており、世界の金融市場の成長とイノベーションに必要な新しいツールとして台頭してきました。
米国上院がこの重要な法案を審議している間、EY-Parthenonのチームは企業と金融機関の幹部350名を対象に調査を行い、ステーブルコイン関連の計画やステーブルコインに対する楽観度、そしてステーブルコインの現在の利用状況を評価しました。その結果は、ステーブルコインがグローバルな決済を変えようとしているという多くの人の見方を裏付けるものです。
ステーブルコインは世界全体の金融機関や企業の13%が利用しており、利用していない事業者の54%が今後6~12カ月以内に導入する予定。
ステーブルコインを現在利用している事業者の41%が、主にB2Bのクロスボーダー決済で米ドル建てステーブルコインを利用して、少なくとも10%のコスト削減を実現したと回答しました。一方、非利用者の80%がステーブルコインの導入を積極的に検討しています。
2025年7月18日に成立したGENIUS法案は米ドル建てステーブルコインの基本的枠組みとなります。主な条項は以下のとおりです。
こうした規制の明確化については、EYのデジタル資産チームが2025年7月に発表した記事に詳しく書かれています。今回の調査結果と合わせて読んでいただければ、ステーブルコイン普及に対する楽観的な見方や、ステーブルコイン導入への投資の動きの背景を理解する上で重要な情報となっています。
ステーブルコインの認知が広がり、聞いたことがあると回答した人の割合は100%に達しました。
13%がステーブルコインを利用したことがあり、金融機関(23%)が企業(9%)をリードして初期導入段階。将来的には、事業者の60%が今後12カ月の間にステーブルコインに対する関心が高まると予想し、58%が今後2年以内に導入する予定。
今回の調査の終了後にGENIUS法案が成立したため、この数字はさらに増えている可能性があります。
回答者の過半数が、2030年までにクロスボーダー決済の5%から10%がステーブルコインで行われるようになると考えているが、EY-Parthenonの推計によると、これは2兆1,000億米ドルから4兆2,000億米ドルに相当。
これは、2024年の国・地域をまたいだB2B(トレードやFXなどホールセール業務は除く)、P2P、C2B、B2Cの決済額を合わせたクロスボーダー決済額を基に推計した数字です。この推計値は、ステーブルコインの市場規模と、ステーブルコインが金融・決済エコシステム全体にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを如実に表しています。
ステーブルコインをすでに利用したことのある回答者のなかで、特に多かった用途はクロスボーダー決済です。
ステーブルコインを利用したことがある人(回答者の13%)で、最も多かった用途はクロスボーダー決済。金融機関の70%、企業の55%が最大の用途と回答。
多国籍企業の場合、即時決済プラットフォームへの移行には、在庫品や原材料の支払い業務の合理化や資金調達の加速、大規模な国際資金移動に伴う決済時間の短縮と手数料削減など大きなメリットがあります。こうした決済インフラの進化により、ステーブルコインはグローバルサプライチェーンの流動性改善と業務効率化を促す戦略的な手段となることができたのです。
ステーブルコインがどのような影響を及ぼす可能性があるのかを理解するために、企業の80%が正式なROI分析をすでに行ったか、今後行う予定です。また、そのうちの実に87%が、ステーブルコインを導入すれば、事業を展開する各市場で競争優位性を獲得できると考えています。関心を持った要因の上位は「取引コストの削減」(52%)や「クロスボーダー決済の迅速化」(45%)などです。
ステーブルコインがコスト削減をもたらすことは証明されていますが、それにはインフラの整備が不可欠であることに変わりはありません。現時点では、ステーブルコインでの支払い受け入れを支持している企業はわずか8%です。その一方で、取引先の20%以上が受け入れるのであれば、決済でのステーブルコインの利用を検討すると答えた回答者は60%に上りました。充電ステーションの整備状況に普及率が左右されるEVと同様、ステーブルコインも普及拡大にはベンダーとクライアントのエコシステムが連携して、必要なインフラを構築する必要があるでしょう。
企業の41%がほどほどの労力でステーブルコインを既存システムと統合できると考えているのに対して、36%は大規模なシステム変更が必要になるとみており、導入に向けた態勢は企業により異なります。こうしたばらつきを考えると、先行者利益を得られる企業と、別の企業や組織と提携して能力育成を加速させる必要のある企業に二極化するかもしれません。新たな規制の明確化に伴い、企業はより有意義な評価を実施して自社の現状を探り、導入モデルの深堀りに着手し、独自のモデルの構築やコンソーシアムへの参加、既存のステーブルコインの利用などを行うとEYではみています。
ステーブルコインサービスのエコシステムは成長を続けており、規制の明確化で需要が加速するにつれ、今後さらに拡大していくはずです。既存の提携銀行との関係を深めることが多くの法人顧客にとって理にかなった対応であり、実際に企業の63%がステーブルコイン機能の提供においては従来の提携銀行・金融機関に頼ると回答しています。一方で、フィンテック事業者やサードパーティプロバイダーが、クライアントに直接サービスを提供したり、銀行向けのインフラを構築するなど、重要なな役割を果たすことになるでしょう。ステーブルコインの機能を全て独力で構築する計画だと回答した金融機関はわずか5%にとどまります。銀行の半数以上(53%)が、社内での構築と外部ベンダーとの提携を組み合わせた「ハイブリッドアプローチ」でサービス提供を行う見通しです。企業もステーブルコイン機能の導入に当たっては、プロバイダーの選定や市場投入までのスピードなどを総合的に検討する必要があります。
ステーブルコイン関連のインフラの整備については、金融機関の79%がサードパーティプロバイダーの利用を計画し、73%がライセンス提携する意向です。その背景には、ステーブルコインと既存システムの統合が複雑であることと、規制・技術面の課題に対応するには連携が必要となることがあります。
最優先課題は、既存の財務システムとの統合。企業の56%が現行の財務プラットフォームにAPIを組み込むほうがいいと考え、ERPの統合が可能であれば、ステープルコインの導入にもっと前向きになる企業も70%に上る。
こうした要件に沿ったソリューションを提供する好位置にあるのはサードパーティプロバイダーです。ほとんどの企業(79%)はトランザクションの直後に、ステーブルコインを法定通貨に換金します。その主な理由は、規制の明確化に対する懸念(79%)と流動性に対する信頼の欠如(56%)です。
クライアントの関心は、強力な推進力です。現時点では金融機関の15%がステーブルコインサービスを提供しており、2年以内にこのサービスを立ち上げる予定の金融機関も15%あります。このサービス関連の取り組みの51%がクライアントの需要を原動力としており、また金融機関の51%が、このサービスに関心を示す顧客は10%を超えると回答しました。
クライアントのニーズを満たすために金融機関が特に重視しているのは「オン・オフランプサービス」(56%)と「ウォレットインフラの整備」(56%)です。こうしたサービスは、法定通貨とステーブルコインの間のシームレスな交換を容易にするとともに、安全にデジタル資産を保管し、またデジタル資産で取引をする上で不可欠です。
収益化について、金融機関は、金融サービスでおなじみのモデルを踏まえ、「取引手数料」(47%)や「従量課金」(37%)で利益を生み出す方針です。
ステーブルコインの出現は、特にGENIUS法案の成立を考えると、財務業務が今後世界全体で変革的な転換を遂げることを如実に示すものです。取引コストの削減や流動性の改善、クロスボーダー決済の合理化を実現させる可能性を秘めたステーブルコインは、企業と消費者、両方の取引のあり方を再構築しようとしています。
今後は金融機関が中心となり、提携関係を生かしてステーブルコインサービスとインフラを提供するようになるでしょう。エコシステムが成熟するにつれ、ステーブルコインが持つ可能性を完全に引き出すには企業・銀行・フィンテック事業者・規制当局間の連携が不可欠となります。
これから求められるのはイノベーションと戦略的プランニングです。金融機関と企業のリーダーは、環境が常に変化するなかで、自らが担う役割を見極め、次の段階へと進むグローバルな商取引で成功するための態勢を整えるべく、今すぐ行動を起こさなければなりません。
調査方法
2025年6月に実施した今回の調査の目的は、金融機関(n=100)と企業(n=250)がステーブルコインについて(決済の現状と用途、予想されるメリットと課題、導入計画、クライアントへの価値提案を含め)どう考えているかの理解を深めることです。今回は現在ステーブルコインを利用している組織と、ステーブルコインについて知っている組織を対象として、回答者を意思決定者(CFOやCTO、CIO、ブロックチェーン・デジタル資産部門のトップなど)に限定しました。回答者を地域別でみると、米国が最も多く(全体の63%)、これにEMEA(同17%)が続き、その他が20%です。また、回答者が所属する組織はいずれも、収益の20%以上を米国で上げています。
注:今回の調査は、2025年6月17日に上院でGENIUS法案が可決された後の2025年6月中旬に実施しました。しかし、同法案が下院を通過した2025年7月17日、大統領がこれに署名して成立させた2025年7月18日より前に行ったことになります。
レポート「Stablecoins in focus: navigating the new digital financial landscape.」の全文をダウンロードする。
本記事の執筆協力者:
ステーブルコインは企業や消費者が商品やサービスの決済方法を大きく変えようとしています。決済のコスト削減や即時決済は、企業にも、金融機関にも、大きなメリットと効率化をもたらします。企業がステーブルコインの新たな用途の開拓とステーブルコイン戦略の策定を進めるなか、GENIUS法案の成立と、それに伴い予想される規制の明確化で、普及が加速するのは間違いありません。
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