EYの事例

人とテクノロジーの融合でグローバルトップティアにふさわしい財務部門を目指すSMBCグループの変革

2026年度から始まった新中期経営計画で、「世界をつなぐ日本発のトラステッド・パートナー」というビジョンを掲げるSMBCグループ。グローバルトップティア水準への飛躍を目指す変革の中で、財務部門も大きく変わろうとしています。

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The better the question

経営をリードする存在として、財務部門はどのような価値を提供できるでしょうか?

SMBCグループが変革に挑む中で、財務部門にも経営を支える立場からリードする立場への転換が求められています。これまで以上の高付加価値を生み出すために、正確性の担保と業務の標準化・高度化が課題となっていました。


英知と専門性で、経営をリードする部門へ

中村 辰也(以下、中村): SMBCグループは2026年度から新中期経営計画を始動しました。至る所にSMBCグループらしさを感じさせる計画であるとともに、2025年度までの前中期経営計画の成果を土台に、グローバル規模で大きく飛躍していこうという力強さを感じます。

岡橋 準 氏(以下、岡橋氏): 新中期経営計画の基本方針は、「高みを目指して大胆な変革にチャレンジ」です。財務部門としても、既存の業務を維持するだけではなく、経営を支える基盤として自ら変革していく姿勢が必要だと考えています。

その指針として、財務部門のビジョンに「財務・税務の“英知を結集”し、“確固たる専門性”をベースにグローバル経営を支える中核」を定めました。これまでの財務部門の役割は、グループの経営を専門的な知識でバックアップすることでした。しかし、新中期経営計画で掲げるグローバルトップティアに伍(ご)する金融グループとなるためには、財務部門もこれまで以上に高付加価値な業務を提供し、経営をリードする存在に進化していく必要があります。また、当グループはこれまで、アジアや米国を中心にグローバルにビジネスを拡大してきた一方、財務部門においては、グローバルでの連携にさらなる強化の余地がありました。グローバルトップティアに伍するためにも、海外との連携を一段と強化することに加えて、海外にベストプラクティスがあれば積極的に取り入れるなど、グローバルベースで財務部門の「英知を結集」することで、経営をリードする存在に進化していきたいと考えております。

中村:「英知を結集」するという言葉には、SMBCグループらしさとグローバルかつオープンに最適解を求めていこうとする覚悟が、「中核」という言葉には、これまで以上に経営戦略をリードしていこうという決意が込められていることがよく分かりました。これからの財務部門には、グループにどのような価値を提供していくことが求められるとお考えですか。

岡橋氏:経営基盤、事業戦略の両面で価値を提供し続けることだと考えています。経営基盤の面では、各事業部門がボトムアップで進める施策に対して財務の観点から専門的な知見を提供するだけでなく、必要に応じて適切ではない施策について是正を促すとともに、課題があれば解決策を提示し、各事業部門に伴走していきます。事業戦略の面では、トップダウンでグループ全体の事業ポートフォリオ変革が進められる中で、財務部門としての案件発掘や示唆の提示に挑戦するつもりです。


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三井住友フィナンシャルグループ 執行役員、財務部・経理業務部副担当役員 岡橋 準 氏

中村:経営にさらに貢献していく存在を目指すに当たって、どのような問題意識を持たれていますか。

岡橋氏:世界水準で見ると、当グループの財務部門は後れを取っていた部分がありました。海外拠点では一般的な仕組みが日本国内では確立されていなかったり、テクノロジーの導入が進んでいなかったりしたことが、2つの課題を生んでいました。

1つ目は正確性の担保、2つ目は業務の標準化・高度化です。この課題認識・目的意識の順番を入れ替えてはいけないと考えています。昨今、人口動態の変化に加え、生成AIをはじめとする革新的な技術が登場しており、誰もがこれを取り入れようとしています。人口減少に対応するために、最新の技術を利用して業務を標準化・高度化する必要があることは間違いありません。しかし、財務部門にとっての最重要項目は、常に「信頼のおける情報を対内外のステークホルダーに提供すること」にあります。会計基準や開示制度が複雑化の一途をたどり、労働人口が減少し、より多くのデータを扱うことで加速度的に業務が高度化している現在の状況であっても、それは決して変わりません。テクノロジーを導入したり、グローバルにベストプラクティスを追求したりする目的は、投資判断や経営判断に資する正確な情報を提供することです。業務の標準化や高度化は、あくまでもこの目的を達成するための手段であり、その結果として実現されるものです。近年のさまざまな経験や、マンパワーに頼った結果として生じたミスを踏まえて、この順番を間違ってはいけないと改めて感じています。

もちろん、業務の標準化・高度化も重要な課題として認識しています。当グループでは各国の法規制に対応するため、地域ごとの業務の独立性が高く、決算プロセスやシステムが地域ごとに異なるという特徴があります。そのため、地域間でのデータや業務の連携が難しく、精度にもばらつきが生じるケースがありました。これまで以上に業務を標準化・高度化することで財務データの活用が可能な環境をつくり、グループ全体の業務基盤を底上げする必要性が高まっていました。

新中期経営計画で、「グローバルトップティアに伍する存在」として世界を舞台にさらにビジネスを拡大し、持続可能なグループを目指す姿勢を明確に示したことで、グループ内でグローバル化の意識が向上したと感じています。それに伴って変革の機運が醸成されたことは、財務部門にとってプラスになりました。


EY新日本有限責任監査法人 金融事業部 パートナー 中村 辰也

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The better the answer

人とテクノロジーの補完関係が、財務部門の価値を最大化する

人とテクノロジーの役割分担を明確にしながら、業務プロセスの再構築を進めている財務部門。EYが支援したデータ分析ツールの導入は、テクノロジーが人の専門性を最大化する補完関係のモデルケースになりました。


財務業務プロセスの見直しで、人とテクノロジーの役割分担が明確に

内藤 裕(以下、内藤):新中期経営計画の基本方針の一つとなっている「ITトランスフォーメーション」を、財務部門はフロントランナーとなって進めていると伺いました。具体的にはどのような取組みをされているのでしょうか。

岡田 達郎 氏(以下、岡田氏): 財務部門の中期経営計画でも「人とテクノロジーの融合で、グローバルトップティアにふさわしい財務・税務業務基盤を確立する」を基本方針に据え、本腰を入れて取り組んでいます。テクノロジーの力を借りながら、誤操作や異常時でも安全に機能する仕組みを構築することが目標です。

その一環として進めているOracle Cloudによる会計システム基盤のグローバルプラットフォーム化は、主要拠点における総勘定元帳の移行という中長期的な取組みなので、成果が出るまでに時間を要します。そのため、現場で生じている喫緊の課題にも並行して対応していく必要があります。その一つとして実施しているのが、米国企業が提供するノーコード型データ分析ツールの導入です。当グループのデータマネジメント部が全社的に導入を推進しており、海外拠点で既にモデルケースがあったことも後押しとなって、当部でも導入を決めました。

奥宮 陸 氏(以下、奥宮氏):財務部門として改めて業務の「正確性」を見直すため、まずは、決算プロセスに対してオペレーションミスの起こりやすさやその影響度などの観点でリスクアセスメントを実施しました。さらに、リスクアセスメントの結果を踏まえてプロセスを整理・分類し、一定以上のリスクのあるプロセスで使用されるファイルについては、構造や運用方法がエラーを防止する要件を満たしているかを重点的に点検しました。また、その中でもリスクが高いと判定された業務プロセスは、EYの皆さまの支援もいただきながら、ツールを活用した自動化に着手しました。

EYからは、決算業務の全体像を踏まえ、私たちのアセスメント結果をもう一段整理していただいた上で提案をいただきました。現場に寄り添い、実務に即した内容で、ツール導入後の実作業への落とし込み方をイメージできた点がよかったです。

首藤 真琴(以下、首藤): SMBCグループはこれまでに別の部門で支援させていただいたことがあり、その経験も生かしてお力になれたらと思っていました。またこれらの経験に加え、EYにはツール構築、会計・監査、内部統制構築のプロフェッショナルがそれぞれ在籍しています。伴走支援では、これらの知見を総動員してEYが考える業務水準や業務モデルを示しながら、ツールをどのように運用していくのかを含めて現場での自走を想定することが大切だと考えているので、評価していただけて光栄です。

岡田氏:四半期ごとに決算が巡ってくる多忙な環境下では、現行の業務プロセスを変えるインセンティブが働きにくいという構造的な課題もありました。さらに、暗黙知化していることや業務の複雑さゆえに属人化している業務も多く、非効率なプロセスが是正されずに温存されていました。

また、EYに実施していただいたファイルの構造分析やリスクアセスメントの再検証を通じて、想像以上に難解で肥大化したファイルを使用していたことも明らかになりました。一部の業務ではコピー&ペーストを繰り返す作業が存在しており、長年の手作業の積み重ねによってファイルが継ぎはぎだらけになっていたのです。

プロジェクト開始時は、複雑な手作業が介在するファイルに対象を絞って改善作業を実施する想定でした。しかし、提案段階から支援をいただく中で、特定のファイルや一部の業務フローのみを改善するのではなく、プロセスの上流から下流まで一気通貫でより良い業務フローを構築する方針に切り替えてはどうかという助言をいただきました。その結果、今後、自動化を進めるためのモデルケースを構築することができました。情報の正確性や実作業に当たる担当者の目線を大切にした提案のおかげで、今後の業務改善にも継続的に活用できる成果になったと感じています。第三者の目線から客観的なレビューやアドバイスをいただけたことは大きかったです。


財務DXにおけるデジタルツール導入のモデルケース

図:EY作成

内藤:ITトランスフォーメーションの成功に向けた大きなテーマが「人とテクノロジーの融合」だと思いますが、財務部門としてはどうあるべきだとお考えですか。

奥宮氏:テクノロジーは、あくまで仕組みを強化するためのツールです。財務部門は、金融規制や会計基準の解釈、個別事象の見極め、最終的な妥当性判断など、どうしても人の判断が必要になる領域があります。ですから、任せられる部分はテクノロジーに任せ、最終判断は人が担うというのが基本的な役割分担の考え方です。

そのような分担が実現できれば、作業者に左右されず、一定の品質を担保しながら業務効率を高めることができます。自動化によって創出された時間を使い、人がより高度な業務を行ったり、スキルや能力を高めたりすることで、より高い付加価値を提供していきたいと考えています。

今回のツール導入では、業務の可視化、要件定義、移行可能性の見極め、担当者との対話など、業務全体のどの部分をテクノロジーで自動化し、どの部分を人が担い続けるべきか、実務に即してEYの皆さまと整理することができ、現場での役割分担が明確になりました。

人とテクノロジーの補完関係のモデルケースとして、今後の取組みに役立てていきたいと考えています。



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The better the world works

変革を加速させ、グループ全体の社会的価値を高めていく

テクノロジーの活用に対する意識が変化したことで、財務部門での変革の土壌が整いつつあります。さらなる活用を推進し、社内外に広く価値を提供する役割を強化していきます。


社内外に広く価値を提供する財務部門を目指す

中村:ここまでの「ITトランスフォーメーション」によって、グループ内での意識や判断基準などに変化はありますか。

岡橋氏:現場レベルでツールを導入したことで、部内の意識が変化したと感じています。テクノロジーは仕事を奪うものではなく、私たちの専門性を最大化してくれるものであるという共通認識ができつつあります。長年続けられてきた財務業務プロセスを変えるハードルは高かったので、それを変えていく土壌ができたことは成果と言ってよく、変革の大きな推進力になると確信しています。

中村:テクノロジーに対する前向きな共通認識は、次のモデルケースにつながる鍵になりそうですね。これから変革を加速させていくに当たり、さらなるテクノロジー活用のご予定があればお話しください。

岡橋氏:暗黙知の継承にAIを活用できないかと考えています。現在の財務部門には、買収や合併といった大規模かつ複雑なプロジェクトを経験していない若手社員も増えてきました。ベテランが持つ知見をAIにインプットし、若手社員が判断に迷った際に参照できる仕組みを構築することを一案として検討しています。実現すれば、若手社員の経験値の低さをテクノロジーで補完できるだけでなく、人口動態の変化や人材流動化の高まりに伴う人員不足や人材育成にかかる時間・リソースの確保が難しいといった課題の解決にもつなげられるはずです。

中村:「社会的価値創造」は前中期経営計画の基本方針から引き継がれており、本業を通じての一層の取組み強化が求められるSMBCグループの考え方と理解しています。財務部門としては、どのような社会的価値を提供していけるとお考えですか。

岡橋氏:今回のツール導入のようなモデルケースを広く社内外に発信し、横展開につなげていきたいと思っています。財務部門の業務は、業界を問わず、すべての企業にとって必要不可欠ですから、当グループの取組みをオープンにしてもよいと考えています。また、可能であれば他社ともベストプラクティスを共有し、高め合っていくことが理想です。そのためにも、人とテクノロジーを融合させたより高度な仕組みを確立し、より高い価値を生み出せる財務部門を目指していきます。

中村:企業の枠を超えて、社会のための価値創造を目指す姿勢は、EYのパーパス(存在意義)である 「Building a Better Working World ~より良い社会の構築を目指して」 と通ずるものだと感じます。これからも、志を同じくするパートナーとして、お力になれたらうれしいです。

岡橋氏:これまでの取組みを土台として変革を深化させていきたいと考えていますので、EYの皆さんのお力添えはとても心強いです。当グループが「世界をつなぐ日本発のトラステッド・パートナー」へとまい進する力になれるよう、財務部門もたゆまず成長を続けていきます。



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