EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
ウクライナを巡る情勢は、冷戦終結以来最も顕著な変化を地政学的関係にもたらしました。2023年も、ウクライナ情勢とその影響については引き続き不確実性が非常に高く、広く世界に大きな政治・経済的影響を与えることになりそうです。
現状では、ウクライナに対して何らかの形で勝利宣言ができるようになるまで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が停戦等に応じる可能性は低いのではないかと考えられています。またウクライナ側もこれまでと同程度の経済的・軍事的支援を、米国とEUから今後も受け続けることができれば、徹底抗戦を続ける可能性が高いと思われます。そのため、この状況が長引けば長引くほど、両国間の戦争が消耗戦となるリスクは上昇します。
こうした情勢がこのまま続けば、プーチン大統領が国内で苦しい立場に立たされる可能性もあります。しかし自ら辞任するとは考えにくいことから、何らかの体制転換が生じるとなればロシアが無秩序な状態に陥ることも想定可能です。万が一、強硬派が権力を掌握した場合には、ウクライナの情勢が悪化するリスクも高まりかねません。また、プーチン大統領が激しい圧力に追い込まれ、その結果情勢をエスカレートさせることになれば、NATO加盟国が巻き込まれる恐れも高まりそうです。
ウクライナ情勢の著しい悪化により、先進国・地域がロシアに追加制裁を科す可能性は高く、またそれが制裁を科す側の経済にも強く影響を及ぼすことになるとみられます。そのような経過をたどる場合、制裁のスピードと内容を巡り、米国とEUとの見解に隔たりが生じるリスクが高まりかねません。また、ウクライナ情勢における中国やインドといった諸国の立ち位置も、地政学的環境の今後を大きく左右することになりそうです。
【共同執筆者】
許斐 建志
(EYパルテノン マネージャー)
EYパルテノンにおいて戦略コンサルティング業務に従事すると同時にEYの地政学戦略グループメンバーとして、地政学に係るサービスを幅広く提供している。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
ウクライナを巡る情勢は、冷戦終結以来最も顕著な変化を地政学的関係にもたらしました。2023年も、ウクライナ情勢とその影響については引き続き不確実性が非常に高く、広く世界に大きな政治・経済的影響を与えることになりそうです。