【EY関西エリアの取り組み】滞在から居住へ:関西に築く高度外国人材コネクションとは

【EY関西エリアの取り組み】
滞在から居住へ:関西に築く高度外国人材コネクションとは


急増する日本の高度外国人材。大阪・関西万博で注目を浴び、大阪IR開業に向けて活気づく関西経済圏にその先鋒(せんぽう)を呼び込み、世界に冠たる国際交流拠点づくりの起点とするプロジェクトが動き出しています。

その担い手として期待される阪急阪神ホールディングス株式会社の構想に耳を傾けながら、関西圏での「高度外国人居住拡大」への道を探ります。



要点

  • 関西圏では在留外国人の増加傾向を背景に、海外スタートアップやデジタルノマドを呼び込み国際交流拠点を創出する構想が膨らんでいる。
  • 短期で来訪する海外イノベーターを起点に据え、いかにしてグローバル企業の誘致やエグゼクティブ層の長期滞在・定住へとつなげるかが課題。
  • 「世界から選ばれる都市」を実現するには、関西ならではの魅力発信と居住空間をはじめとする環境整備、そのための連携体制づくりが重要。


高度外国人が「訪れ、働き、暮らすまち」を関西に

岩崎 亜希 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 公共・社会インフラセクター ディレクター
岩崎 亜希
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
公共・社会インフラセクター ディレクター

岩崎:

本日は「関西圏における高度外国人の居住拡大」をテーマに、阪急阪神ホールディングスの草間徹氏をお招きして議論を進めてまいります。まず、在留外国人の現況ですが、日本全体で見ますと、2025年6月末時点で、約395万7,000人で過去最高を記録し、前年比で約19万人(5%)の増加となっています。このうち大阪府は約36万人で、東京に次ぐ第2位。出身国・地域は180を超えています1。草間さんはこの3月まで阪急阪神不動産に所属しておられましたが、外国人の居住が進んでいる実感はおありですか。


草間氏:
個人的な印象ですが、確かに外国籍の方が増えているのは感じます。少し前まではアジア系の方が多い印象でしたが、最近では欧米系、特にドイツやイタリア、メキシコといった方々が多くなっているように思います。とはいえ、不動産業として手応えを感じる、というところまではまだ至っておりません。

岩崎:
一足飛びに居住とまではいかないのかもしれませんね。ただ、日本が国際人材受け入れの方向に動いていることは確かだと思います。政府の定める高度人材ポイント制で学歴や職歴、年収などの要件を満たす、いわゆる高度外国人材の広がりは特に顕著で、2024年度末で約2万9,000人と、前年比で約20%の伸びを示しています(高度専門職1号・2号の合計値)2。その背景には、国の拡充策に加えて、自治体の誘致策や、企業による高度外国人材活用への流れがあるとみられます。

草間氏:
そうですね。大阪府が掲げる「国際金融都市OSAKA」構想はその最たるもので、世界中から活力ある外国企業を呼び込もうと力を入れていますし、大阪・関西万博の開催やIRの開業、インバウンド拡大の動きもそれを後押ししています。ですから、短期滞在の観光客だけでなく、中長期で滞在する外国籍の方々がここ関西でも増えていくのは間違いないでしょう。外国の人々が単に訪れるだけでなく、ここで働き、暮らしていけるよう、どのようなまちづくりをするか。それが私どもの目下のテーマです。

岩崎:
そのターゲットの中心と目されるのが、専門性の高い外国人材ということですね。御社グループとしては、どのようなアプローチを考えておられますか。

草間氏:
私どもでは2022年に「UMEDA VISION(梅田ビジョン)」を発表し、グループを挙げて大阪梅田エリアの国際競争力を高め、世界と関西をつなぐ国際交流拠点とすることを目指す方針を打ち出しました。国内最大級の交通結節点であり、当社グループ最大の事業拠点でもある梅田を、世界中から人と情報が集い、交流が生まれる国際的な舞台に一層高めていこうという構想です。高度外国人材の呼び込みと定着もその一環であり、具体的には、デジタルノマドと呼ばれる、リモートワーク主体で場所に縛られずに働く高度技能人材や、スタートアップの海外起業家層に注目しています。

岩崎:
重要な着眼だと思います。実はEYでも高度外国人材の多様性には注目していまして、働き方や滞在目的、生活スタイルの違いに応じて事業ターゲットを見極めることが大切だと考えています。例えば、高度外国人居住者といってもひとくくりにできるものではなく、滞在スタイル(循環型か定住型か)、居住コストの負担主体(企業か個人か資本か)を掛け合わせて分類すると、おおむね6つのタイプが浮かび上がってきます(図表1参照)。このうち、ご指摘のあったデジタルノマドの増加は顕著な動きと言えますし、日本企業のグローバル採用や研究職、外資系企業の誘致に伴うエグゼクティブ層の駐在員なども、定住への広がりという意味で着目したいところです。

日本の高度外国人材のペルソナ像(EY仮説)

日本の高度外国人材のペルソナ像(EY仮説)

草間氏:
今は全方位を狙うより、まずは的を絞った取り組みを先行すべき段階と考えています。

 

海外イノベーターを起点に広がる高度外国人材の輪

岩崎:
デジタルノマドとスタートアップが有望というお話ですが、具体的にはどのような点を重視していますか。

草間氏:
どちらも概してフットワークが軽く、来訪や拠点設置のハードルが低いことが挙げられます。加えてデジタルノマドは、来訪先での体験を重視する傾向にあり、その体験をSNSなどで発信することにも積極的です。そうした情報がまた別のイノベーターへの連鎖を呼び、さらにグローバル企業やエグゼクティブ層の来訪、定着へとつながる長い導線を描くこともできるでしょう。

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岩崎:
まさに結節点となるわけですね。そうしたデジタルノマドやイノベーターたちの集まりを起点として、高度外国人材のニーズを探り、ひいては中長期滞在に必要な要素をあぶり出そうとしているということですね。

草間氏:
はい。新進の高度外国人材との接点を求めて国内外からさまざまな事業体が集まってくることが期待されます。例えば、当社グループを含む9社JVがJR大阪駅北側に開発した大規模複合施設の「グラングリーン大阪」において、「JAM BASE」というイノベーション拠点を開設したところ、ベンチャー企業やVC、大学等の研究機関だけでなく、大手国内企業がイノベーターとの出会いを求めて社員を常駐させたり、銀行が出先機関を置いたりといった動きも見られています。まだこちらは日本企業が中心ですが、視察やイベント等で訪れる海外の関係者の関心も高く、国際的な交流のハブになることが期待されます。

岩崎:
阪急阪神不動産と阪急電鉄の両社で手掛けておられる「FUTRWORKS(フューチャーワークス)」も、同じような趣旨のイノベーション拠点と言えますね。いわゆるコワーキングスペースということですが、手応えはいかがでしょう。

草間氏:
これもUMEDA VISIONの一環なのですが、まさに世界中のスタートアップやデジタルノマドワーカーが集い、交流し、新たなビジネスの芽を育む場所として、2024年1月から大阪梅田の阪急グランドビルで展開しています。「グローバルな視点で新産業を生み出すエコシステム」を提供することが目的ですが、その対象となるのは外資系企業や外国人だけではありません。海外展開も含めた日本のスタートアップの成長支援等にも取り組んでおり、最近では国内外の有望なVCに入居いただいたり、入居者と当社オフィスのテナントの従業員の方との交流の場を設けたりもしています。ただ、この施設の規模はさほど大きくありませんので、ここで成長のきっかけをつかんだスタートアップには「JAM BASE」でさらに飛躍していただくことを目指しています。

岩崎:
これが東京であれば、スタートアップの拠点となる施設もそれなりに数があるのでプレイヤーを集めやすいと言えますが、関西ではその点どうでしょう。拠点づくりの難しさはありませんか。

草間氏:
おっしゃるように、そこがわれわれの勝負どころで、人々が集まるきっかけと、そのための場所をどうつくるかです。東京には確かに外国人が多く暮らし、イノベーションの起点となる場も、日本橋、大手町、虎ノ門、渋谷などと複数あります。ですが、それらは独立して点在するため、スタートアップやデジタルノマドが自ら比べて選択しなくてはならないように思います。対して関西はそれほどの数があるわけではなく、しかもそれぞれの拠点の方々がさまざまな形で交流しているので、どこに着地しても受けられる支援等に大きな差はないとみています。そうした中で、大企業や経済団体、行政機関などと連携して、梅田に来れば、あらゆる分野の主だったプレイヤーとの接点が持てるようにすれば、高度外国人材に強くアピールできるのではないかと考えています。

岩崎:
まさしく「梅田コネクト」(※)を中心とした連携ですね。同じ業種のライバルであっても手を結び、オール関西で一枚岩になろうというエリアマネジメントの強さを感じます。

※梅田コネクト:梅田地区に乗り入れている鉄道各社(JR西日本、阪急、阪神、Osaka Metro大阪メトロ)とグランフロント大阪TMOの計5社から構成される梅田地区エリアマネジメント実践連絡会の取り組み

草間氏:
ここ2、3年で、急速に求心力が高まってきたように思います。以前であれば、われわれも阪急阪神沿線エリアでの展開を優先して考えましたが、今は違います。各デベロッパーや交通機関が、皆で梅田全体の価値を高めていくことの重要性を認識するようになっています。高度外国人材を呼び込む心構えは十分にできていると言えます。
 

関西独自の個性を打ち出し、産官学民の連携強化へ

草間 徹 氏 阪急・阪神ホールディングス株式会社 BX推進室BX推進部長(前・阪急阪神不動産株式会社 開発事業本部 都市マネジメント事業部長)
草間 徹 氏
阪急阪神ホールディングス株式会社
BX推進室BX推進部長
(前・阪急阪神不動産株式会社 開発事業本部 都市マネジメント事業部長)

岩崎:
高度外国人材が集まる拠点づくりをまず進め、そこから関西という土地の魅力を徐々に広げつつ、中長期滞在・居住者のニーズへとつなげていく。そういった道筋が見えてきますが、そこで課題となるのが、制度整備や情報発信、魅力の訴求といった「来る前」の対策と、住宅供給や教育・医療の整備をはじめとする「来た後」の環境づくりだと思われます。どのように見ておられますか。

草間氏:
「来る前」の導線として注目すべきは、やはりSNSや口コミによる拡散でしょう。先ほども触れたように、海外スタートアップやデジタルノマドは魅力発信の起点となり得る人々です。私どもではFUTRWORKSにおいて定期的に「FUTRFEST」というデジタルノマドを主なターゲットにしたイベントを年2回開催していますが、海外から参加された方がその体験をSNSに投稿し、それに触発されたフォロワーが来阪するといった流れがかなりできています。また、関西の強みとしては、京都や奈良等の歴史や文化に容易に触れられること、さまざまな食が楽しめること、さらには十三や天満など近隣エリアに見られる下町風情等が挙げられます。関西ならではの個性そのものに、人を引きつける魅力があります。

岩崎:
日本らしさと都市性の両方が味わえるわけですね。実際、外国人の方からそうした声が聞かれることはありますか。

草間氏:
そうですね。英国系スタートアップの私の知人は、こちらに来るたび十三の飲み屋街に繰り出して、喜々としてBARホッピングを楽しんでいます。要するに居酒屋のハシゴですが、言葉も通じない大阪のおっちゃんやおばちゃんとの交流がとにかく面白い、人情がいいというわけです。新しい仕掛けも大切ですが、同時にこうした関西本来の魅力もしっかり伝え、「選ばれる理由」を太くしていかなくてはなりません。

岩崎:
「来た後」についてはいかがでしょう。東京ではサービスアパートメントの開発も進んでいますが、関西の外国人向け居住空間は足りていますか。

草間氏:
短期・中期の滞在先という意味では、居住空間の提供にはまだまだ課題があるというのが実情で、長期滞在へとつなげるためにも、まずここを何とかすることが大きな課題だと感じています。短期・中期の受け入れを拡大しながら、長期のための環境整備を徐々に進めていこうという段階で、小規模ながら実験的な取り組みを開始したところです。その前提として、住宅だけでなく、教育や医療を含む生活面での基盤づくりは不可欠ですから、そこは行政との連携が重要になるとみています。

岩崎:
外国人にとっても暮らしやすいコミュニティーをどうつくるか、ですね。

草間氏:
おっしゃるとおりです。先ほどのFUTRWORKSを利用する外国人ワーカーにアンケート調査をしたところ、英語だけで生活が完結できるような基盤の整備や容易にアクセスできる外国人コミュニティーを求める声も多くありました。その意味で、大阪産業局が運営する大阪スタートアップ・エコシステムコンソーシアムと私どもが連携して開設した「Osaka Landing Pad」のような取り組みは、大きなポイントになると思っています。これは海外からのスタートアップに対し、各種手続きに必要な関係各所との導線をワンストップで提供する相談窓口です。

岩崎:
それは素晴らしいですね。事業に関することだけでなく、生活全般にわたるさまざまなサービスの支援までもカバーできると理想的です。大阪・関西万博で世界中の注目を集めた今、また大阪IRの開業を間近に控えたこの時期に、ぜひデベロッパーを含む多様な企業と生活関連サービス業者、そして行政が一体となった連携体制で、「高度外国人に選ばれる都市」をつくっていただきたいと思います。

関西圏における高度外国人材誘致を起点としたまちづくりの展開

関西圏における高度外国人材誘致を起点としたまちづくりの展開

草間氏:
ありがとうございます。今のこの機運を逃さず、経済団体や学術機関も加わった関西ならではの連携の輪をつくり、伝統と国際性と未来性が共存するまちを実現できるよう努めてまいります。

  1. 出入国在留管理庁「令和7年6月末現在における在留外国人数について」:https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00057.html
  2. 出入国在留管理庁「国籍・地域別高度外国人材の在留者数の推移」:https://www.moj.go.jp/isa/content/001421740.pdf




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サマリー 

来訪ハードルの低いデジタルノマドや海外起業家の招致から始め、中長期滞在に向けた環境整備を進めながら規模を広げ、外資系企業の誘致や駐在員・エグゼクティブ層の長期滞在・定住へ。関西圏において、高度外国人材が集い、働き、暮らす国際交流都市への道筋は、着実に切り開かれ始めていることが感じられました。



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