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地方公共団体が目指すべき内部統制のあり方


自治法改正から5年が経過しましたが、地方公共団体における内部統制制度の導入はいまだ限定的です。本稿では、制度導入が進まない背景を整理した上で、業務改善と結び付け、職員がメリットを感じられる内部統制の導入について解説します。


要点

  • 導入が進まない背景は、「追加の作業負担」「難解な専門用語」「類似の取組みとの重複感」
  • 内部統制は、組織的なリスク対応の仕組みであり、職員を守ることにつながる。
  • 業務改善の視点を活用することで、職員がメリットを感じられる制度導入が可能。

地方公共団体における内部統制制度の今

地方自治法(以下、法)が改正され、都道府県及び指定都市(以下、義務団体)に内部統制制度の導入が義務付けられて5年が経過しました(指定都市以外の市町村〈以下、努力義務団体〉は努力義務)。
法に基づく内部統制制度を導入している地方公共団体は、令和5年4月1日時点で義務団体と努力義務団体合わせて111団体となっており、全体の1割未満にとどまっています。

なぜ、制度の導入が進まないのでしょうか。


制度導入の壁

地方公共団体が法に基づく内部統制制度を導入する場合、以下の対応が必要となり、職員に追加の作業負担が発生します。 

  • 内部統制に関する方針の策定
  • 内部統制体制の整備
  • 内部統制評価報告書の作成
  • 内部統制評価報告書について、監査委員の審査に付した上で議会に提出し公表

努力義務団体についても、法第150条第2項に基づくものとして内部統制に関する方針を策定した場合は同様の対応が求められます。
また、内部統制制度の導入にあたっては、多くの場合、「地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン」(以下、ガイドライン)などを参照しながら取り組むことになりますが、職員にはあまりなじみのない専門用語が多く登場します。そのため、取りあえず制度は導入したものの、その趣旨や内容を十分に理解できず、形式的な作業に陥りがちです。
さらには、コンプライアンス推進や事務処理適正化など、内部統制と類似する取組みを既に行っている団体においては、制度の重複感から取組みに着手しづらいと考えられます。

このような「追加の作業負担」「難解な専門用語」「類似の取組みとの重複感」が、地方公共団体において内部統制制度の導入が進まない原因の1つであると考えられます。

<図表1>

内部統制を正しく理解する

まず重要なことは、内部統制制度の趣旨とメリットを職員にしっかり理解してもらうことです。
そもそも内部統制は、言葉こそ聞き慣れないものの、地方公共団体がゼロから取り組まないといけないものではありません。
内部統制は、業務に組み込まれ、組織内の全ての者により遂行されるプロセスであり、例えば、支出の決裁や備品の点検など、職員が日常的に行っている業務の多くが内部統制の一部を構成していると言えます。
では、なぜこれを制度として取り組む必要があるのでしょうか。
ポイントは、“組織”という点です。
近年、地方公共団体の業務は多様化・複雑化し、業務量も増加している一方、対応する職員は今後減少することが見込まれ、業務上の不正や誤りに関するリスクが増大しています。このような増大するリスクに対しては、個人の意識や能力に頼るのではなく、組織としてリスクを識別・評価し、対応していくことが重要です。

つまり内部統制は、リスクへの対応を“個人任せ”にせず“組織的に行う”ことで、結果として職員を守ることにつながる取組みであると言えます。

職員がメリットを感じられる制度導入を

多くの場合、内部統制制度に取り組もうとすると、ミスや不正を減らそうとチェックを増やす方向でリスクへの対応が検討され、業務が煩雑になった結果、職員が疲弊し、制度が形骸化しがちです。しかし、ガイドラインでは、内部統制制度は、リスクに対応して業務の適正な執行を確保するだけでなく、職員がより働きやすい環境となるよう業務改善(いわゆるBPR〈Business Process Re-engineering〉)へつなげる役割もあるとされています。

内部統制制度の導入により、地方公共団体は、組織として、予めリスク(組織目的の達成を阻害する要因をいう。以下同じ。)があることを前提として、法令等を遵守しつつ、適正に業務を執行することが、より一層求められる。そうした組織的な取組が徹底されることによって、長にとっては、マネジメントが強化され、政策的な課題に対して重点的に資源を投入することが可能となる。また、職員にとっても、業務の効率化や業務目的のより効果的な達成等によって、安心して働きやすい魅力的な職場環境が実現される。ひいては、信頼に足る行政サービスを住民が享受することにつながることとなる。

総務省「地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン」(令和6年3月改定)

内部統制制度を通じて自分たちの業務に潜むリスクへの対応を考えることが、「今のやり方でよいのか」という問いにつながり、業務のあり方を見直し、改善のきっかけをつかむ重要な機会となります。

この業務改善の観点を忘れ、統制を強化することばかりに意識がいってしまうと、業務上のリスクを正しく認識できない上に、積み重なるチェックに職員が疲弊し、せっかく導入した制度が形骸化してしまう恐れがあります。

内部統制に取り組むことで自分たちの仕事がやりやすくなるのであれば、そこにメリットを感じ、制度を前向きに捉えてくれる職員が増えるのではないでしょうか。

特に、努力義務団体においては、法第150条第2項に基づくものとして内部統制に関する方針を策定すると義務団体と同様の対応が求められますが、当該方針を策定せず、法に基づかない柔軟な制度運用を行うことも可能です。例えば、法に基づく内部統制制度の場合、財務事務全体を対象としなければならないところ、契約事務に限定して現行業務のプロセスを見える化し、業務の見直しを行った上で、内部統制に取り組むことなどが考えられます。

EYが提案する「内部統制×BPR」というソリューション

EYでは、内部統制制度が表面的な取組みとならないよう、現場で「使える・回せる・改善できる」バランス型内部統制の導入を支援しています。

「内部統制制度に取り組もうか悩んでいる」「制度を導入したが形骸化している気がする」といった団体様をはじめ、興味・関心がありましたらお気軽にご連絡ください。

<図表2>

【共同執筆者】

前橋佑也

サマリー

内部統制は、チェックを増やすための制度ではなく、業務に潜むリスクを見える化し、より良い業務の進め方を考えるための仕組みです。制度の趣旨を正しく理解し、業務改善の視点で活用することが、内部統制制度の定着と形骸化防止につながります。


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