ミドルマーケット企業の成長と承継を支える資本戦略とは

情報センサー2026年1月 Trend watcher

ミドルマーケット企業の成長と承継を支える資本戦略とは


日本経済を支える中堅・中小企業を「ミドルマーケット企業」と再定義します。
ミドルマーケット企業は経営者の高齢化・後継者不在問題、証券取引所における上場維持要件の厳格化やアクティビストの台頭等、さまざまな課題を抱えており、それぞれ適切な対策を練る必要があります。

本稿の執筆者

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 EY-Parthenon M&Aアドバイザリー パートナー 山本  康之

金融機関にて法人融資、大企業融資を担当した後に事業継承・M&A業務に従事。2022年よりEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社へパートナーとして参画。現在は地域金融機関のカバレッジ・国内案件・事業継承案件等を担当し、EY Private のEYストラテジー・アンド・コンサルティングリーダーも務める。

要点

  • 規模の特性から注目されにくいミドルマーケット企業は、地域経済・雇用・イノベーションの中核を担う存在である。
  • 変化する経営環境に対応するための資本施策として事業承継、成長戦略、非公開化、M&Aがある。
  • EYの強みは、地域金融機関等とのネットワーク、専門性を生かした総合的なソリューション提供にある。

Ⅰ はじめに

企業の規模には、資本金や従業員数の多寡により「大企業」「中小企業」といった定義付けが各種法令等によりなされています。本稿においては、大企業と中小企業の中間に位置する企業で、有名な大手企業と比較するとなじみが薄い一方、日本経済の屋台骨を支える存在であり、地域経済や産業の中核を担うとともに雇用創出やイノベーションの推進役としても重要な役割を果たしている売上高10億円から3,000億円ほどの企業群を「ミドルマーケット企業」と定義します。近年、国内外の経済環境が大きく変化する中で、ミドルマーケット企業は事業承継や成長戦略、資本政策の見直しを迫られる場面が増えています。特に、人口減少や後継者不足、グローバル競争の激化、デジタル化の進展など、経営環境の変化に柔軟に対応するためには、従来の枠組みにとらわれない戦略的、かつ機動的な意思決定が求められています。

図1 本稿における企業群の定義

図1 本稿における企業群の定義
出所:EY作成

II ミドルマーケットの非上場企業と資本政策

ミドルマーケットの非上場企業においては、経営者の高齢化、及びそれに伴う後継者不在問題が深刻化しています。親族内承継だけでなく、M&Aによる第三者承継、プライベートエクイティ(PE)ファンドへの売却も選択肢として一般化しつつあります。特に地域企業では、地元金融機関やM&A仲介業者が譲渡先との橋渡し役となり、地域経済の維持・発展に資するM&Aが増加しています。売り手企業のオーナーにとっては、従業員の雇用維持や企業文化の継承が重要な論点となるので、買い手企業の選定においては財務面だけでなく、理念の共有も重視される傾向があります。ミドルマーケットの非上場企業のM&Aにおいては、売り手・買い手双方にとって上場企業の場合とは論点が異なるケースが多くあります。例えば、ファイナンシャルアドバイザー(FA)やM&A仲介業者にはオーナーの思いや企業の将来像を踏まえた戦略的提案が求められます。デューディリジェンスでは属人的な経営や未整備な内部統制が課題となることが多いため、それらに対する専門家による適切な検証が必要不可欠です。その後の経営統合プロセス(PMI)では、ITシステムの非標準化や業務プロセスの属人化が散見されることもあり、経営統合での対応が必要となります。

図2 非上場企業のM&Aにおける留意点

図2 非上場企業のM&Aにおける留意点
出所:EY作成

Ⅲ ミドルマーケットの上場企業と資本政策

ミドルマーケットの上場企業においては、株式公開買付け(TOB)やマネジメントバイアウト(MBO)を活用した非公開化が近年増加しています。東京証券取引所による上場維持要件の厳格化や上場維持コストの増加、アクティビストの台頭や同意なき買収等の多くの課題・リスクを背景に、非公開化の流れが加速しています。資本市場で企業価値向上を目的とした資本効率改革が進む中、PEファンドはその受け皿として存在感を強めているのです。特に、非上場化による経営の自由度向上や、再上場を視野に入れた成長戦略の支援が注目されています。また、株主構成の分散や市場評価低迷、経営の自由度確保といった課題から、MBOによる経営権の再集約や、成長戦略の再構築を目指す動きが活発化しています。MBOを実施する際には、資金調達や株価算定、少数株主対応、上場廃止手続きなど多岐にわたる実務的な論点の他にも、既存株主との対立の回避やMBO後の成長戦略の策定も重要と言えます。MBO実施においても、創業家や現経営陣が主導する形でPEファンドを受け入れる事例は増加しており、長期的な企業価値向上を目指す動きが顕著です。後継者不在や事業再編を契機としたPEファンドの参入も目立ち、業界再編の一翼を担っていると言えるでしょう。

Ⅳ おわりに

上述したように、ミドルマーケット企業は事業承継や成長戦略、資本政策の見直しを迫られる場面が増えています。この潮流に対応するためには、戦略的、かつ機動的な意思決定が求められるでしょう。

EYのミドルマーケットチームは、地域金融機関等における業務経験を持ちミドルマーケット企業について熟知、かつそのM&Aにおいて豊富な経験を有するメンバーを擁しています。また、全国の地方銀行や信用金庫、政府系金融機関と緊密に連携し、地域密着型のM&A支援を展開しています。地域金融機関等とのアライアンスにより、地域独自の買い手候補先の探索や、地元企業のニーズに即したソリューション提供が可能です。このネットワークを生かし、案件規模や業種、スピード感に応じて最適なチームを組成し、地域経済の活性化や企業価値向上に貢献しています。地域金融機関等との協働は、M&A関連業務にとどまらず、業務改善支援や税務・会計アドバイザリー等幅広い領域に及んでいます。EYではさまざまな領域のプロフェッショナルによる多種多様なサービス提供が可能です。


サマリー

日本経済を支える中堅・中小企業を「ミドルマーケット企業」と再定義します。ミドルマーケット企業は経営者の高齢化・後継者不在問題、証券取引所における上場維持要件の厳格化やアクティビストの台頭等、さまざまな課題を抱えており、それぞれ適切な対策を練る必要があります。



情報センサー

EYのプロフェッショナルが、国内外の会計、税務、アドバイザリーなど企業の経営や実務に役立つトピックを解説します。

EY Japan Assurance Hub

時代とともに進化する財務・経理に携わり、財務情報のみならず、サステナビリティ情報も統合し、企業の持続的成長のかじ取りに貢献するバリュークリエーターの皆さまにお届けする情報ページ 


この記事について

執筆者