多面的な取り組みを通して管理職を「罰ゲーム」ではなく「魅力的な仕事」に――調査研究と現場の実態から探る企業施策のヒント

多面的な取り組みを通して管理職を「罰ゲーム」ではなく「魅力的な仕事」に――調査研究と現場の実態から探る企業施策のヒント


「若手の管理職志向を高めるには? ~ドライバーは、報酬のプレミアム感と管理職同士の仲の良さ」セミナーレポート(2025年2月28日開催)

会社員が昇進や出世競争に目の色を変えたのも今は昔。昨今、若手社員の管理職志向が薄まり、「罰ゲーム*化」とまで言われるほどです。また、女性管理職の比率も諸外国と比較すると相変わらず低く、2030年までに30%を目指すという政府の目標にもなかなか届いていません。
では、管理職が目指されなくなった背景にはどのような要因があり、どんな施策が改善につながるでしょうか。EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社が開催したセミナー「若手の管理職志向を高めるには? ~ドライバーは、報酬のプレミアム感と管理職同士の仲の良さ」では、EYと立教大学 経営学部の田中聡准教授とが実施した共同調査研究の結果を基に、その要因を探り、優秀な若手人材がキャリアアップを目指せるような環境づくりのヒントが紹介されました。

* パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児 氏が提唱された表現です。


要点

  • 若手から見ても管理職が魅力的に思える体制や組織風土づくりがポイントに
  • 「なりたい」から「できる」へ、順番を踏みながら健全な管理職志向の醸成を
  • 先進的な企業は人事制度刷新やロールモデルの紹介、チームワーク醸成などを実践

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Section 1

やりがいと報酬のベストミックスを通して、管理職を若手から見ても魅力的な存在に

EYと立教大学 田中聡准教授との共同調査からは、若手社員が今の仕事と組織にやりがいや充実感を持ち、組織が管理職をサポートしてふさわしい処遇をしていくこと、そして管理職本人が若手の視座を引き上げるためのマネジメントをしていくことの重要性が浮き彫りになりました。

「管理職」という言葉から、どんなイメージが浮かぶでしょうか。

不確実性が高まるビジネス環境の中、チームとしての成果が求められ、そのために人材力の強化や若手の育成を行い、同時に労務リスクやコンプライアンスにも配慮しなければならないーーこのように、今の管理職は非常に多忙を極めていると、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング パートナーの桑原由紀子は指摘しました。こうした厳しい状況が、管理職志向が低下している一因かもしれません。

そこでEYでは、管理職のネガティブ面を洗い出して解消するだけでなく、管理職ならではの魅力にスポットを当て、管理職志向をマイナスからプラスにするためには何が必要なのか、という発想で、立教大学 経営学部 田中聡准教授とともに「管理職への憧憬・志向性を高めるマネジメントに関する調査」を実施し、2025年1月に結果を公表しました。

「若手が管理職に憧れ、いずれは自分も管理職になり、組織に貢献し、ひいては社会に貢献していきたいと思えるようになるにはどういった要素が必要なのかにフォーカスを当てました」(桑原)

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング パートナー 桑原 由紀子

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ピープル・コンサルティング パートナー 桑原 由紀子

優秀な若手の管理職志向をいかに高めるか

結論から言うと、当初の予想通り、管理職志向の高い若手は4人に1人にとどまりました。一方で、「管理職は罰ゲームである」というネガティブな認識も想定ほど高くなく、全体の4分の3はそうした認識を持っていないことが明らかになっています。

注目したいのは、高い人事評価を得ている若手のうち、3人に2人は管理職志向が低かったことです。ただ同時に、そのうち7割は、組織のサポートがあり、かつ自分の実力さえ備われば、管理職にチャレンジしたいと考えていることも明らかになりました。「組織としては非常にもったいない結果が出ています。優秀層のうち管理職志向が低い若手のマインドを変化させることが、組織にとって肝になってくるでしょう」(桑原)

調査からは、若手が管理職を志向しない理由も見えてきました。「そもそも将来のキャリアについて具体的に考えていない」「そもそも管理職の仕事の内容や醍醐味(だいごみ)を知らない」、そして「そもそも、管理職の責務の大きさに対し、魅力的な処遇(報酬)が成されていない」という3つの「そもそも」が原因となっていると桑原は分析します。

企業に求められる3つの視点からのアプローチ

こうした原因を踏まえると、若手の管理職志向を高めていくには、若手本人と組織、そして管理職それぞれの立場に即したアプローチが求められるでしょう。まず若手本人に関しては、今の仕事にやりがいや充実感を持ち、組織に対し高い貢献意欲と愛着を持ってもらうことがポイントです。「管理職は今の仕事と分断したところにあるのではなく、チーム力を生かしてより大きな仕事、面白い仕事にしていくものだという認識を持つことが、管理職志向を高めます」(桑原)。それが、目的志向を持って将来のキャリア像を設定し、その実現に向けた自己投資につながっていくとしました。

次に組織においては、管理職の役割を明確にし、その責務にふさわしい処遇をしていくことがポイントとなります。同時に、管理職の負荷軽減をサポートする施策を打ち、「管理職を孤独な存在にせず、また、そのように見せないことが大事です」(桑原)

そして管理職本人に関しては、メリハリ感を持ってよく働き、よく休むというセルフマネジメントに加え、部下に仕事の意義を伝え、視座を高く持ってもらえるようなメンバーマネジメント、心理的安全性を保ちオープンな議論ができるような組織マネジメントという3つの立場でのマネジメントが効果的だとしました。

こうしたポイントを踏まえると、相互信頼を育み、やりがいと報酬のベストミックスを通して、若手から見ても管理職が魅力的に思えるような体制や組織風土をつくっていくことが企業に求められます。

分析データから見えてきた現実的な打ち手とは

同社ピープル・コンサルティング マネージャーの小沼和弘は、調査結果をより深く分析し、いくつかのポイントを指摘しました。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・コンサルティング マネージャー 小沼 和弘

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ピープル・コンサルティング マネージャー 小沼 和弘

  • 人事評価は高いが管理職志向が低い層は、「実力が備わる」「後押しを受ける」「打診される」などの条件がそろえば管理職になりたいと思っている
  • 仕事の意義を伝えることや上位層との接点を提供することが管理職志向にプラスの効果をもたらす
  • 「働き方の柔軟さや働くスタイル」と管理職志向には関係が見られなかった

1つ目の結果については、若手に一足飛びに実力や自信を持たせるのは困難なため、現実的には「まずなってほしいと打診し、その後押しをし、そして管理職としてやっていける自信を持てるだけの実力を付けさせるという具合に段階を踏んでいくと、効果的に機能するように思います」(小沼)と述べました。

また、「会社への思い入れがないほど管理職志向は下がる」というマイナスの関係がある一方で、ここに「管理職同士の良好な関係」という要素が加わると志向が改善されることも判明しました。

もちろん、「会社への思い入れを持たせる」と一口に言っても、決して簡単なことではありません。「これは、社員に対して中長期的にいかに働きかけていくかという話であり、即効性のあるものではありませんので、その現実的な打ち手の一つが管理職同士の良好な関係の構築と言えるでしょう」(小沼)と結論付けました。



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Section 2

管理職を「なりたい」から「できる」へーー順番を踏みつつ健全な管理職志向を醸成

立教大学の田中准教授は研究から得られた知見を織り交ぜながら、管理職を「憧れる職種」に持っていき、新しい管理職のイメージを訴求し、さらに「自分でもできる」という健全な期待感を育むという3つのステップを順に進めることで、健全な管理職志向を高められると説明しました。

続けて、今回の調査をはじめ、マネジメント領域でEYと共同研究を行っている立教大学の田中准教授が、アカデミアの知見を織り交ぜながら、若手の管理職志向にまつわる課題について講演しました。

立教大学 経営学部 経営学科 准教授 田中 聡 氏

立教大学 経営学部 経営学科
准教授 田中 聡 氏

管理職の本質は何か

そもそも、なぜ若手に管理職志向を高く持ってもらう必要があるのでしょうか。企業にとって、管理職というポジションに就いてもらうことはあくまで手段にすぎず、目的ではありません。すべての社員が管理職になってもらう必要もないでしょう。田中准教授はまず、手段の目的化に陥ることなく「管理職として、一体何を成すのか」に目を向けながら議論するべきだと指摘しました。

管理職の役割は、端的に言えば「人を通じて事を成す」と表現できます。しかし現在の組織においては、現場での事業推進や課題解決にはじまり、経営と現場、顧客を結ぶ「連結ピン」としての役割、そして人づくりや組織づくりに至るまで、多岐にわたる役割が求められています。

「文字通りの現業の管理・監督業務だけでなく、人や組織といった経営資源をいかに最大化し、パフォーマンスを最大化していくかという観点からも、管理職は会社の未来をつくる中核的な存在として位置付けていく必要があると思います」(田中准教授)

また「会社に愛着を持ち、貢献したいと考える若手ほど、管理職志向が高い」という調査結果にも触れながら、田中准教授は、これは単に出世を目指しているのではなく、「会社の未来づくりに関与したい」という貢献意欲の表れであると指摘し、そのような「健全な管理職志向」をいかに伸ばしていくかが重要だと強調しました。

キャリア自律への投資は離職率を高めるか

その手段として有効なのが、キャリア自律の取り組みです。しかし世の中の経営者や人事担当者の中には、「優秀でキャリア意識の高い若手ほど、辞めてしまいがちだ」という声が根強く存在します。会社がキャリア自律に投資すると、「寝た子を起こす」結果となり、転職につながってしまうのではないかという懸念があるようです。

しかし田中准教授は「研究によれば、むしろキャリア自律に積極的に投資することで、『この会社は個人に投資してくれるのだ』という認知が高まり、離職意識が抑えられ、結果的にその会社に対する帰属意識が高まることが分かっています」と指摘しました。それも、単に書籍や研修を通した学びだけでなく、さまざまな業務経験や他者との関わりを通して、自分の強みやポテンシャル、探究したいテーマを見いだす機会を提供することが、より有効だと述べました。

成功のポイントは施策の順番

田中准教授は、「管理職を若手にとって“選ばれる” “憧れる”職種にすること」「管理職に対する固定観念を解体し、新たなイメージを訴求すること」、そして「自分にも管理職ができるという健全な期待感を育むこと」の3つのステップで取り組みを進めることで、健全な管理職志向を高めていくことができると説明しました。

まず現在の管理職の役割や職務範囲を見ると、非常に曖昧で非定型的な業務が多くを占めており、それが管理職の負担感にもつながっている状況です。こうした現状を直視し、「本当に管理職でなければできない仕事」と「そうでない仕事」とを切り分け、後者については必要に応じて権限委譲していくことで、管理職の負担を軽減していくことが重要だと田中准教授は説明しました。あわせて報酬水準の見直しを行うことで、管理職を「憧れる職種」として位置付けることができると述べました。

また、管理職というポストそのものの概念についても、キャリアの最終到達点である「上がりのポスト」やステータスシンボルとしてではなく、一つのプロフェッショナルな職種として再定義すべきだとしました。

そして、こうした取り組みを通して管理職の魅力と価値を高めると同時に、若手社員の自己効力感を育て、「自分にもできる」という意識を持たせることで、管理職志向は大きく高まると述べました。この際、正式に管理職になる前に「プレ管理職」として経験を積ませる機会を設ける方法や、管理職と非管理職を固定的に分けず、いつでも自分の意思でプレイヤーに戻れるという安心感を確保することも大切であるとしました。

また、管理職がチームの先頭に立ってメンバーを率いていく伝統的なリーダーシップから、管理職とメンバーがリーダー・フォロワーの関係を柔軟にスイッチしながら全員でチームを動かしていく「シェアード・リーダーシップ」という新しい考え方を採用していくこともポイントになると述べました。

田中准教授はこうした知見を紹介し、最後に「キャリア自律の話ともつながりますが、将来のキャリアにおいて、この管理職経験がどのように生かせるのかを意識させながら、自分に対する健全な期待感を育てていくアプローチが求められてくるのではないでしょうか」とアドバイスし、施策を実施する「順番」を意識しながら、管理職志向を育む組織づくりに努めてほしいと呼び掛けました。

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Section 3

2社の実践から学ぶ、若手の管理職志向を高めるためのヒント

後半のパネルディスカッションでは、双日株式会社、アフラック生命保険株式会社からゲストをお招きし、若手の管理職志向の向上に向けた試行錯誤と成果が紹介されました。自分自身の経験も織り交ぜた現場の生の声からは、同じ悩みを抱える多くの企業にとって有益なヒントが得られました。

セミナーの後半では、双日株式会社で人事部人材開発課課長を務める浅井雄太氏、アフラック生命保険株式会社 ダイバーシティ&インクルージョン推進部課長の横尾真紀子氏を招いて、若手の管理職志向を高めるためにどのような取り組みを進めてきたか、桑原、田中准教授を交えてパネルディスカッションが行われました。

双日株式会社 人事部 人材開発課 課長 浅井 雄太 氏

双日株式会社 人事部 人材開発課
課長 浅井 雄太 氏

アフラック生命保険株式会社 ダイバーシティ&インクルージョン推進部 課長 横尾 真紀子 氏

アフラック生命保険株式会社 ダイバーシティ&インクルージョン推進部
課長 横尾 真紀子 氏

ミドルマネジメント職を魅力的なポジションに

「商社は人なり」と言われますが、その中でも、双日では現場と経営の結節点であるミドルマネジメントを重視してきました。年に1回実施してきたエンゲージメントサーベイの結果から「会社の成長にはミドルマネジメントの強化が非常に重要である」ことを確認し、人材戦略の柱の一つに掲げています。

その一手として2024年度に人事制度を刷新し、役割等級の見直しを行いましたが、課長の役割給は全社員平均の倍に設定し、インセンティブを付与しました。この結果「2024年度に実施したエンゲージメントサーベイでは、管理職志向に対する積極回答率が51%と、2023年度の47%から上昇しています」(浅井氏)

管理職のイメージギャップを埋める取り組み

アフラック生命保険でも、2014年から全社で意識調査を行って管理職志向について確認してきましたが、EYの調査と同様、やはり管理職志向が下がる傾向にあるそうです。理由を尋ねたところ、「家庭との両立が難しい」という理由がトップに挙げられました。ただ、この「忙しくて大変ではないか」という印象は一般社員の推察によるところが大きく、実際の管理職からはそれほどでもないという回答も寄せられているそうです。

この調査結果を踏まえて「管理職の働き方や仕事の内容、やりがいを皆さんに伝えていくことが重要だと考えています。そのために管理職、特に仕事と家庭や育児を両立させている社員にいろいろな場に出てもらい、どんな働き方をして、どんなやりがいがあるかを伝える取り組みをしています」(横尾氏)。それもアフラック生命保険社内だけではなく、他社との合同セミナーというユニークな形でも実施し、ロールモデルを示しています。

プレ管理職の経験が不安解消につながる

横尾氏も浅井氏も、実際に管理職になる前の段階において、上司の計らいで管理職としての「プレ経験」を積むことができたことがプラスに働いたそうです。横尾氏は上司が休暇を取っている二週間の間に課長としての業務を一部経験することで、「管理職はどんなことをするのか」が分かり、まったく未知の世界へのチャレンジという不安を解消できました。浅井氏も、チームのリーダーとして働くことで、人材育成やマネジメントを経験し、それが今に生きています。

田中准教授はお二人のこうした経験を踏まえ、「管理職になって初めて管理職経験を積むわけですから、一日目からいきなり『さあどうぞ』と言われても辛いものがあります。着任前の助走期間での支援とともに、着任後も早期に成果を求め過ぎず、成長のマイルストーンをつくってバックアップできる体制を整えておくこと、そしてそのことが管理職本人だけでなく周囲のメンバーにも見えるようにして安心感を与えることが大事だと感じました」とコメントしました。

管理職を支える関係構築とコミュニティが重要

同時に、管理職自身が今どういう状況にあり、何に悩んでいるのか、どんな希望があるのかを周囲に率直に伝えていくことも重要だそうです。横尾氏は自らの経験を振り返り、時には弱音を吐くことができる「本音で語れる関係性」を上司との間で築き、ストレートに話すことで、自分が必要としているサポートやアドバイスを得ることができたと述べました。

同じ管理職同士の横のつながりを生かし、悩みを相談し合うことも効果的です。「双日では人事部が主催し、課長同士がマネジメント上の悩みや事例などを共有できる座談会を実施しています」(浅井氏)。田中准教授はさらに、「こうした管理職同士の学びの機会に一般社員がオブザーバーとして参加できるような関係性があれば、さらに発展していけそうです」とコメントしました。

桑原は、調査に当たって実施した仮説構築インタビューの中で、ある若手社員が「課長や部長のチームワークがすてきだ」と回答したことが印象的だったと振り返り、「管理職を一人で孤軍奮闘させるのではなく、チームとして共にやっていくことが、管理職本人にも若手にもポジティブに働いているのではないかと捉えました」と、組織としてのサポートの重要性に言及しました。田中准教授も同意し、「管理職を孤立させず、管理職を取り巻くコミュニティを健全に育んでいく姿勢が会社全体に求められてくるように思います」とコメントしました。

女性の管理職志向の現実と2社の取り組み

もう一つ課題となっているのが女性の管理職志向の低さです。双日の労働組合が実施したアンケートでは、課長を志望する割合は男性が70%だったのに対し、女性は49%と、意識差が如実に表れる結果となりました。

横尾氏は、「期待して、機会を与え、鍛える」という3つの「き」が、女性は男性に比べるとまだ少ないことが一因ではないかと述べ、まず機会を積極的に与えることに取り組んでいると述べました。

一方、まさに自らも育児中の浅井氏は、時には早く帰宅したり、テレワークを活用したりしながら仕事と育児を両立させている背中を課内で見せています。この結果「課の総合職7名に管理職になりたいかどうか質問してみたところ、男性が50%だったのに対し、女性は60%以上になりました。育児と両立している自分の姿を目の当たりにして『これなら自分でもできるのかな』と思ってくれているのではないかと解釈しています」と言います。

管理職育成に悩む企業にエール

こうした興味深いディスカッションを受けて、多くの質問も寄せられました。

「シェアード・リーダーシップという考え方を踏まえ、リーダーシップはもちろん、マネジメント力についても新入社員の頃から学ぶべきか」という問いに対し、田中准教授は「その通り」と答えました。そして「リーダーシップもマネジメントも、組織を前に動かす力と捉えればそれほど違いはありません。今自分が身を置いているチームや組織が前に進むために、自分はどんな立場でどんな貢献ができるのかを考え、発揮できる影響力だと捉えれば、誰もが持っておくべき考え方ではないでしょうか」と説明しました。

「自分が管理職になった時若手を苦労させないように、今のうちからスキルを身に付けたいが、どのような学びが有効か」という質問もありました。横尾氏は「今の時代、誰かが正解を持っているわけではない」という前提があるとし、「だからこそ特定のスキルというより、自分で考える力を養っていただきたいなと思います。管理職になってからも、一人で引っ張っていくのではなく、みんなの意見を聞いて答えを組み合わせながら、正解に近いところにたどり着いていくリーダーシップを発揮するのが良いのではないでしょうか」とアドバイスを送りました。

また、「この組織をどうしたいのか、ビジョンを語れる管理職を増やすことが重要ではないかと考えているが、果たして若手にこの考え方が刺さるのかどうか…」という管理職の立場からのコメントに対し、浅井氏は全社的に対話力向上に取り組んでいることに触れ、「対話力を向上させるには、聞く前に、自分の意見やアイデアを発信することが大事です」と述べました。さらに浅井氏は「刺さると思いますし、刺さると信じて取り組んでいます」と思いを語り、同じ悩みを抱える企業にエールを送りました。


本セミナーのアーカイブを配信中です。ぜひご覧ください。
若手の管理職志向を高めるには? ~ドライバーは、報酬のプレミアム感と管理職同士の仲の良さ
(配信期間:2026年2月27日まで)



サマリー 

「管理職は罰ゲーム」などと言われます。しかしEYと立教大学 田中聡准教授との共同調査結果を分析していくと、処遇を含めた管理職の魅力を高め、チームワークを深め、組織としてサポートしていくことで、「自分でもできる」という若手の健全な管理職志向が高まることが分かってきました。また、会社全体で管理職の位置付けやイメージを新たに定義し直すことも求められていくでしょう。

多面的な取り組みを通して管理職を「罰ゲーム」ではなく「魅力的な仕事」に――調査研究と現場の実態から探る企業施策のヒント

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