EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY税理士法人 公認会計士 南波 洋
1993年から、太田昭和アーンスト アンド ヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。2004年から、日本公認会計士協会 租税調査会国際租税専門部会 専門委員。
平成29年12月14日に、平成30年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主として法人に関連する改正・見直し項目の概要を説明します。なお、国会における法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意ください。
大企業が賃上げや設備投資を一定割合以上行った場合には、給与支給増加額の15%の税額控除ができる制度になります。さらに教育訓練費の増加要件を満たす場合には、20%の税額控除が認められます。平成30年4月から3年間の時限措置です。
企業内外のデータを連携・高度利活用することにより、生産性の向上を図る一定の要件を満たす情報連携投資を行った場合、ソフトウエア・設備等の取得価額について特別償却(30%)又は税額控除(5%あるいは3%)ができる措置が講じられます(3年間の時限措置)。
所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資をほとんど行っていない大企業について、生産性の向上に関連する税額控除(研究開発税制等)の適用を行わないこととします(3年間の時限措置)。
産業競争力強化法の特別事業再編(仮称)に基づき、保有する株式を譲渡し、対価としてその認定を受けた事業者の株式の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとされます(3年間の時限措置)。
わが国の国内法におけるPEの定義規定に、PE認定の人為的回避防止措置が導入されます。国際的スタンダード※1に合わせる見直しです。
前記の改正は、平成31年分以後の所得税及び平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。
外国企業をターゲットにした国際的M&A実施後の再編・統合(PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション)に伴う外国関係会社株式の移転に伴う譲渡益に係る取扱いが見直されます。一定の要件を満たした場合には、当該譲渡を行った外国関係会社が合算対象会社であったとしても、株式移転に伴う譲渡益は適用対象金額の計算上控除されることとなります※2。この改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
事業承継税制について、10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が行われます。
大法人(資本金の額が1億円を超える法人等)については、法人税等は平成32年4月1日以後に開始する事業年度から、消費税は同日以後に開始する課税期間から電子申告が義務化されます。
※1 BEPS報告書、新OECDモデル租税条約、BEPS防止措置実施条約(MLI)
※2 譲渡の日から2年以内に当該譲渡をした外国関係会社の解散が見込まれること、などが要件とされる。