EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
IAドメイン 服部 伸一郎
外資系のBPOベンダーやコンサルティング会社で、SSC設立やデリバリー、業務改革、要員再整理や人事制度設計など多数のプロジェクトに参画。当法人では、SSC、BPOの戦略立案、設計、立ち上げから、デリバリー以降の各種管理(契約管理、プロセス管理など)までを支援する、SRA(Sourcing Risk Advisory)サービス提供に従事。EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株) パートナー。
現在の日本において、経理、人事、総務、購買などのバックオフィス業務を外部委託するBPO(Business Process Outsourcing)は、コスト削減や品質強化、自社リソースのコア業務へのシフトなどを解決する手段として代表的なものになりつつあります。BPOの立ち上げの仕方や、どの業務を外部委託するか、どのようなベンダーを選定すべきかなど、「戦略立案・計画策定」フェーズに興味やリソースが注がれがちです。しかし、BPO対象業務は、企業が存続する限り発生し続けるため、BPO稼働後の「運用・デリバリー」フェーズのあるべき姿を見据えることこそが、BPOのメリットを最大限享受できるものと考えます。今回は、BPO稼働後に重要視すべき、BPOの品質管理について解説します。 (<図1>参照)
経理や人事などBPO対象業務に対する品質管理として、最も重要視することは業務の「見える化」です。ここで言う見える化とは、具体的には以下のことを指します。
①業務の流れ、インプット、アウトプットが可視化されている:業務フローなど
②業務の手順や規程、基準が可視化されている:業務マニュアル、業務手順書など
③業務品質として、定量的に測定可能であること:SLA(Service Level Agreement)
BPOにおける品質管理とは、前記の三つを指し、日々の業務トランザクションを数量的かつ客観的に集計、測定可能にすることを意味します。そして、それらを管理するための指標がSLAとなります。
SLAとは、業務請負契約に基づき、SSC(Shared Service Center)の責任下で提供する業務のうち、業務プロセスについての極めて重要な運用状況を測定する指標であり、サービスレベル基準値となるものです。
一般的なSLAには以下があります。
①正確性:システムインプットミス、チェックミスなどのエラー率
②納期順守率:定められた期日までの支払処理・納期超過処理率
③TAT(Turn Around Time):業務の開始から業務終了までにかかった時間(期間)
前記のSLAは、初期に導入、設定しただけではBPOの適切な品質管理はできません。測定・監視、分析、報告・評価、改善のPDCAサイクルとして絶えず回し、導入企業とBPOベンダーの両者が本サイクルに携わることが重要です(<図2>参照)。
日本の企業では、SLAを現行業務に導入し、数量的に可視化して品質管理をすることは、あまり一般的ではないかもしれません。しかし、グローバルの先進的な事例として、前記のPDCAサイクルの「測定監視」ではリアルタイムに処理状況を電光掲示板などで表示し、誰もが状況把握が可能な環境を用意したり、「分析」では実績値から将来的な業務量を予測し、業務ピーク時に適切な役割配分を行うなど、各種のSLA指標を限りなく100%に近づけた運用を行っている企業も存在します。BPOを検討している企業はもちろんのこと、その他の企業においても、現行の業務品質を高めるための手法としてこの方法論の導入は有効と考えます。