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減損会計(減損損失の認識と測定)

2021年4月1日 PDF

情報センサー2021年4月号 企業会計ナビダイジェスト

企業会計ナビチーム 公認会計士 大浦 佑季

監査部門に所属し、主に上場会社を含む情報・通信業、外食業、アパレル業などの監査に従事している。

当法人ウェブサイト内の「企業会計ナビ」が発信しているナレッジのうち、アクセス数の多いトピックスを取り上げ、紹介します。今回は「解説シリーズ『減損会計』第5回:減損損失の認識と測定」を紹介します。

Ⅰ 減損損失の認識と測定の概要及び相違点

減損会計のプロセス

1. 減損損失の認識

まず、減損の兆候がある資産又は資産グループについて、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額以上かどうかの回収可能性テストを行います。資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に、減損損失を認識し、次の減損損失の測定のステップに移ります。

2. 減損損失の測定

減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とします。各資産グループに係る減損損失の計算式は次のようになります。

減損損失の金額 = 帳簿価額 - 回収可能価額

ここで、企業は、資産又は資産グループに対する投資を売却と使用のいずれかの手段によって回収しますが、その際、投資から得られるキャッシュ・フローを最大化するインセンティブを有しています。そのため、回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれかの高い方の金額と定義されています。

3. 「認識」と「測定」の相違

<表1>は減損の兆候の有無や、帳簿価額と割引前将来キャッシュ・フローとの関係から、減損損失が計上されるかどうかをまとめたものです。

表1 減損損失認識までのステップ

<表1>に示す資産グループCのように、減損の兆候があっても、減損損失が認識されないような場合には、減損損失の測定は行いません。両者の違いは、減損損失の認識が割引前将来キャッシュ・フローを用いるのに対して、減損損失の測定は割引後将来キャッシュ・フローを用いるという点です。

Ⅱ 減損損失の測定(使用価値の算定と減損損失の配分)

1. 使用価値の算定

使用価値は、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値として算定されます。

使用価値の計算に当たっては、以下の要素を考慮します(<図1>参照)。

 

図1 使用価値の計算要素

① 将来キャッシュ・フローの定義・範囲
② 継続的使用から生ずる将来キャッシュ・フローの見積り
③ 使用後の処分によって生ずる将来キャッシュ・フローの見積り
④ キャッシュ・フローを見積もる期間
⑤ 現在価値の算定に使用する割引率

2. 減損損失の配分

資産グループについて認識された減損損失は、合理的な基準により、資産グループの各構成資産に配分されます。合理的な基準の例示として、次の二つの方法が挙げられています(<図2>参照)。

① 帳簿価額に基づいて各構成資産に比例配分する方法
② 各構成資産の時価を考慮して配分する方法

図2 減損損失の配分

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