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EY新日本有限責任監査法人 企業会計ナビチーム 公認会計士 加藤 大輔
監査部門にて会計監査業務に従事したのち、アドバイザリーサービスを行うFAAS事業部へ異動。現在は、主にIFRSや新基準などの導入支援業務などに従事している。また、書籍の執筆や雑誌への寄稿、法人ウェブサイト(企業会計ナビ)に掲載する会計情報コンテンツの企画・執筆に携わっている。
今回は、「解説シリーズ『税効果会計(平成27年度更新)』第6回:「その他有価証券の評価差額に対する税効果会計」」を詳解します。
その他有価証券の時価評価に伴い生じた評価差額は、税効果会計適用上の一時差異に該当します。当該一時差異の取扱いについて、解説します。
個々の銘柄ごとにスケジューリングを行い、評価差損に係る将来減算一時差異については当該スケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上し、評価差益に係る将来加算一時差異については繰延税金負債を計上します(企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、適用指針)38項本文)(<図1>参照)。
個々の銘柄ごとではなく、次のように一括して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上することも認められます(適用指針38項但し書き)(<図2>参照)。
評価差額を評価差損が生じている銘柄と評価差益が生じている銘柄に区分し、評価差損の銘柄ごとの合計額に係る将来減算一時差異については、スケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上し、評価差益の銘柄ごとの合計額に係る将来加算一時差異については繰延税金負債を計上します(適用指針38項(1))。
評価差損の銘柄ごとの合計額と評価差益の銘柄ごとの合計額を相殺した後の純額の評価差損に係る将来減算一時差異又は評価差益に係る将来加算一時差異について、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上します。ただし、純額の評価差益はスケジューリング不能な将来加算一時差異であるため、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、その他有価証券の評価差額以外の将来減算一時差異とは相殺できない点に留意が必要です。また、純額の評価差損に係る将来減算一時差異は、スケジューリング不能な将来減算一時差異であるため、原則として当該繰延税金資産の回収可能性はないものとして取り扱います。ただし、その他有価証券は、通常は随時売却が可能であり、長期的には売却が想定される有価証券であることを考慮し、会社の業績等の状況に基づき判断した会社分類に応じて取り扱うことが認められています(適用指針38項(2)、39項)。例えば、(分類1)及び(分類2)に該当する企業においては、純額の評価差損に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断することが認められます。
減損処理したその他有価証券に関して、期末における時価が減損処理の直前の取得原価に回復するまでは、減損処理後の時価の上昇に伴い発生する評価差益は将来加算一時差異ではなく、減損処理により生じた将来減算一時差異の戻入れとなります。このため、原則どおり、個々の銘柄ごとにスケジューリングを行い、当該その他有価証券に係る将来減算一時差異については当該スケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断した上で、繰延税金資産を計上することになります(適用指針38項なお書き)。
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