EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 企業会計ナビチーム 公認会計士 伊藤 毅
国内監査部にて製造業や情報通信サービス業等を中心とした上場企業の会計監査の他、IPO支援業務やJ-SOX支援業務等に従事。FAAS事業部では財務報告業務改善支援・IFRS導入支援・クロスボーダーIPO支援・会計研修サービス等の財務会計アドバイザリー業務を中心に従事している。
当法人ウェブサイト内の「企業会計ナビ」が発信しているナレッジのうち、アクセス数の多いトピックスを取り上げ、紹介します。今回は「解説シリーズ『時価の算定に関する会計基準』第2回:時価とは」を紹介します。
「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格または負債の移転のために支払う価格(いわゆる出口価格)をいいます(企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下、時価算定会計基準)第5項)。
「市場参加者」とは、資産または負債に関する主要な市場または最も有利な市場において、次の要件の全てを満たす買手および売手をいいます。
「秩序ある取引」とは、資産または負債の取引に関して通常かつ慣習的な市場における活動ができるように、時価の算定日以前の一定期間において市場にさらされていることを前提とした取引をいいます。例えば、強制された清算取引や投売りなど他から強制された取引は、秩序ある取引には該当しません。
「主要な市場」とは、資産または負債についての取引の数量および頻度が最も大きい市場をいいます。「最も有利な市場」とは、取得または売却に要する付随費用を考慮した上で、資産の売却による受取額を最大化または負債の移転に対する支払額を最小化できる市場をいいます(<図1>参照)。
時価算定会計基準は、定義する時価について次のとおり基本的な考え方を示しています(時価算定会計基準第31項)。
資産または負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産または負債に適用される会計処理または開示によりますが、金融商品については、通常、個々の金融商品が時価の算定の対象となります。
ただし、次の要件の全てを満たす場合には、特定の市場リスク(市場価格の変動に係るリスク)または特定の取引相手先の信用リスク(取引相手先の契約不履行に係るリスク)に関して金融資産および金融負債を相殺した後の正味の資産または負債を基礎として、当該金融資産および金融負債のグループを単位とした時価を算定することができます。なお、この取扱いは特定のグループについて毎期継続して適用し、重要な会計方針において、その旨を注記する必要があります(時価算定会計基準第6項、第7項、第32項)。
取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が時価算定会計基準に従って算定されたものであると判断した場合には、当該価格を時価の算定に用いることができます。当該判断にあたっては、例えば、次のような手続を実施することが考えられます(時価算定適用指針第18項、第43項)。
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