ニュースリリース
2023年10月13日  | Tokyo, JP

EY Japan、インバウンド観光回復後のツーリズムのリジェネレーション(改新)に向けた取り組みの重要性を分析

プレス窓口

・2023年上半期のインバウンド観光客の回復状況では、2019年同期比、64.4%まで回復
・消費額内訳では2019年同期比で約1.4倍、金額にして約5万円の増加。円安下ではあるものの、買い物は減少し、宿泊や飲食、アクティビティなど体験への消費が高まっている傾向
・宿泊者数では、東京はすでにコロナ前の水準を超える回復で、京都、栃木は9割超、福岡、石川、宮城は8割超の水準にまで回復
・インバウンド観光の回復後、ツーリズムを通じたポジティブなインパクトを観光地にもたらすべく、旅の価値を改新する、リジェネレーティブ・ツーリズムの取り組みが重要

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡、以下EYSC)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)水際対策の緩和以降の日本におけるツーリズムの現状や、地方への誘客の状況の分析、また、オーバーツーリズムなど負の影響を踏まえ、ポジティブな効果を生み出す取り組みに向けたツーリズムのリジェネレーション(改新)への提言を取りまとめたレポートを発表したことをお知らせします。

以下は、本調査レポートの概要です。

2023年上半期のインバウンド観光客回復状況

2023年上半期のインバウンド観光客は、新型コロナウイルス感染症が発生する以前の2019年の同期比で64.4%、8月までの積み上げでは68.6%まで回復しています。特に米国からの観光客はコロナ禍以前に比べて100%を超えて推移するなど、活況を呈しています。
図1:日本のインバウンド市場の推移

2023年上半期のインバウンド観光客の消費動向

インバウンド観光客の消費額は、2019年と比べて約1.4倍、金額にして5万円程度増加しています。円安により、日本での購買が増加していると予測しましたが、消費の内訳は、宿泊費の割合が5%上昇し、買い物が10%減少しています。宿泊や飲食、アクティビティなどの体験への消費が高まっていることが明らかになりました。

図2:訪日客消費額

地方のインバウンド観光回復状況

都道府県別のインバウンド観光客の延べ宿泊者数について、全国平均の回復を超えているのは、9つの都県です。東京はすでにコロナ前の水準を超える回復率で、京都、栃木、福岡、石川、宮城はコロナ前の8割の水準にまで回復しています。一方、多くの地方では、6割以下にとどまり、特に東アジアからのインバウンド観光回復が遅れていることが一因です。まだまだインバウンド需要の復活を実感できない状況と考えられます。

図3:都道府県別 訪日客宿泊者数回復状況

下記図は都道府県ごとに、横軸に対2019年上半期で見た2023年インバウンド観光客の延べ宿泊者数(人泊)回復状況のプロットで、回帰曲線の傾きは負となっており、東アジアからのインバウンド観光客が多かった地域は相対的に回復が遅いことが見て取れます。

図4:各都道府県における訪日客宿泊者数回復状況(23/19)×19年の国・地域の割合

インバウンド需要の回復がもたらす負の影響

2019年同期比での回復率が8割を超える東京、京都、福岡、石川などの地域については、一部でオーバーツーリズムの懸念の声が上がっています。インバウンド観光客は東京を除いては2019年のレベルに戻っていないこと、政府が観光立国として2030年に向けて6,000万人のインバウンド観光客数を目指していることから、今後ますます問題は顕在化していくことが予測されます。

海外では、イタリア北部のアルプス地方に位置する南チロルで、環境への負荷軽減などを目的として、観光客を制限したり、イタリアのベネチアのように入域料を徴収することで観光客の数を制限したりする方針を打ち出す地域などもあります。一方、米国のヨセミテ国立公園では、パンデミック時に導入された予約システムを2023年は継続しない方針を打ち出しています。観光地の実情を踏まえると、必ずしも「量」をコントロールし、「質」を取るだけがオーバーツーリズムをはじめとした観光地経営の方向性ではなく、地域でどのようにバランスを取っていくかを議論していく必要があると考えられます。

ポジティブな効果を生み出す取り組みに向けたツーリズムのリジェネレーション(改新)について、本レポートを担当したEYSC ストラテジック インパクト パートナー 平林 知高のコメント:
「2023年上半期を振り返り、インバウンド観光客は約1,071万人に達し、コロナ前の水準で65%まで回復しました。さらに、その回復の早さが増している状況です。地方への波及はまだ限定的ですが、先行きの見通しは明るく、一部の地域ではオーバーツーリズムの懸念が出るほどに活況を呈しています。オーバーツーリズムへの対処は、量のコントロールだけでなく、質とのバランスが重要です。
このバランスの取り方として、サステナブル(持続可能)な取り組みを超えて、よりポジティブなインパクトを生み出すために『リジェネレーション(改新)』という考え方が議論されています。観光地においてポジティブなインパクトを生み出していくためには、これまでの枠組みを超えて、イノベーションを意識した取り組みが必要です。そのためには、あらゆるステークホルダーがツーリズムに対する考え方、価値を再定義し、具体的な行動につなげていくことが重要です。リジェネレーティブ・ツーリズム、それは旅価(旅の価値)の改新と言えるのではないでしょうか」

図5:Re-generative Tourism(旅価の改新)

本レポートの詳細は、以下をご覧ください。
水際緩和から1年の今考える、サステナブルのその先へ、リジェネレーティブ・ツーリズム「旅価の改新」とは何か?
 

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