ニュースリリース
2023年10月20日  | Tokyo, JP

EY調査、従業員の3分の1以上が転職を意識し労使関係の緊張が続く

賃金、ウェルビーイング、柔軟性に対する考え方に依然ギャップ

プレス窓口

・従業員の35%が賃金は最大の関心事であると回答、一方で企業は人材の惹きつけや維持・確保が最優先課題
・リモートワークとオンサイト勤務に対する考え方にギャップ:従業員の半数は、週1回の出勤にとどめたい考え
・信頼、エンパワーメント、心理的サポートにより、離職の可能性は40%低下

EYは最新の働き方に関する調査「EY 2023 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2023)」を発表したことをお知らせします。

本調査によると、企業の最大の関心事は、人材の惹きつけと維持・確保ですが、従業員の3分の1以上(35%)が、今後12カ月以内に現在の会社を辞める可能性が高いと回答しています。退職する可能性が高いと回答した人が最も多かったのは、Z世代(38%)とミレニアル世代(37%)でした。これは、期待の矛先とモチベーションに対する従業員と企業の考え方にギャップが生じていることが要因です。半数以上(58%)の企業は、経済成長の減速により従業員の離職の可能性は低いと考えていますが、これに同意する従業員は、半数以下(47%)で、22%の従業員が同意していません。こうした結果は、企業が労働市場の継続的流動性を低く見積もっていることを明らかにしています。

今回で4回目となる本調査は、日本を含む22カ国、25産業セクターにわたる1,575名のビジネスリーダーと1万7,000名以上の従業員から得た知見を分析しました。その結果、経済成長が鈍化しているにもかかわらず、職場における力のバランスの変化は、依然、従業員に有利であることが明らかになりました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以前の調査では、全回答者の53%が、力のバランスは企業側が有利であると考え、従業員側が有利であると回答した割合はわずか24%でした。2022年(パンデミックの最中)になると、企業側に有利が44%、従業員側に有利が37%、今回の調査では、企業側に有利は46%、従業員側に有利は32%でした。

EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・アドバイザリー・サービス パートナー 水野 昭徳のコメント:
「本調査は、日本からも昨年同様に約1,000名の従業員、30名のビジネスリーダーに参加いただき、グローバルトレンドとの比較を通じた日本固有の課題、示唆を得ることができました。日本では、グローバルと比べ、フレキシブルな働き方を可能にする仕組み、生成AIといったデジタルツールの活用が遅れている実態が見えてきています。一方、グローバル同様に賃金への関心は高く、人材獲得競争は一層激化すると見込まれます。人的資本経営の機運が高まりつつある今、日本企業においてはさらなる生産性向上とそれに適切に報いていくための変革が必要です」

EYグローバル・ピープル・アドバイザリーサービス担当サブリーダー兼ワークフォースアドバイザリーリーダー Liz Fealyのコメント:
「経済的混乱が続いていますが、それでも従業員の3分の1以上が、より良い賃金を求めて転職を考えています。こうした背景には、インフレに対する自身の適応力の醸成や、パンデミック後の生活と優先事項に合った従業員提供価値(EVP)の追求などが動機としてあります。企業が重要な人材を惹きつけ、維持・確保するためには、組織の将来像を従業員と共に描くことが不可欠です。そのために、企業は、従業員の優先事項を考慮し、信頼の構築と人材の維持・確保を促進する戦略を実行することが重要となります」

プッシュ要因とプル要因

昨年度の調査結果と同様、今回も、賃金は従業員(35%)にとって最大の関心事ですが、一方で企業にとっては3番目の関心事となっています。企業は、新しい人材の惹きつけ(37%)や人材の維持・確保(34%)に高い関心を示しており、企業側と従業員の優先事項にずれが見られます。

企業は、また、人材を惹きつけるためのインセンティブとして柔軟性を過大評価しているようです。本調査結果によると、企業の84%が、柔軟性を提供すれば採用力を強化できると考えていますが、これに同意している従業員はわずか63%です。こうした中、特に、ナレッジワーカーは、柔軟性のある働き方に魅力を感じています。これまで、ナレッジワーカーは、分析ツールが完備されたプロフェッショナルなオフィス環境で自身の専門知識を駆使しながら仕事をするというのが一般的でした。しかし、現在は、ナレッジワーカーにとって柔軟性は基本的な期待事項であり、3分の1以上がフルリモートでの勤務を望んでいます。

リモートワークとオンサイト勤務については、柔軟性やオフィス復帰ルールなどの観点から企業側とナレッジワーカーの考え方に差が生じています。企業の47%は、従業員が週2~3日職場に出社することを望み、ナレッジワーカーの50%は、週1日出社までにとどめたい考えです。

他方、従業員は、ソーシャルなつながり(36%)、コラボレーション(30%)、関係の構築・維持(29%)など、職場におけるエンゲージメントを求めています。一等地にある最高の設備が完備された最高クラスの建物内にオフィスを構えている企業だからといって従業員のオンサイト勤務志向が高いわけではありませんが、本調査結果から、高品質なオフィス環境への投資は、組織文化、生産性、人材の維持・確保などを含むワークフォース関連の重要な成果全般と好ましい相関関係があることが明らかになっています。

EY Work Reimaginedリーダー Roselyn Feinsodのコメント:
「COVID-19パンデミックの影響が後退するにつれ、働く側と企業側の力のバランスに明確な変化が見られます。このように新たなバランスが築かれていく中で、従業員は現状に疑問の声を上げやすくなっており、企業は自身の力を過大評価しないよう慎重になる必要があります。従業員のさまざまな要望に継続的に適応していくためには、コラボレーションを育むオフィス環境などオフィスエクスペリエンスに対する従業員の期待や、柔軟性に対する継続的なニーズに対応可能なオフィス規模などを考慮しながら、オフィスの在り方を再考し、規模を最適化することが不可欠です。さらに、企業は、賃金について、もはや従業員の最優先事項ではないと考えることは賢明ではありません。とりわけ、人材の惹きつけや維持・確保に取り組む際には、賃金が従業員にとって重要な労働条件であることを念頭に置く必要があります」

従業員と企業の意識のずれを解消する

新しい働き方に対するリーダーシップ陣の対応に対する企業と従業員の期待に明確なギャップが見られます。本調査で、企業の73%が、管理職や経営幹部は新しい働き方(勤務スケジュール、休暇、リモートワーク、ハイブリッド勤務など)を受け入れ、相応の対応を行っていると回答しましたが、同様に感じている従業員は、わずか55%でした。

そうした中、共感型リーダーシップを実践している組織では、明るい兆しが表れています。リーダーシップ陣から高いレベルの信頼、エンパワーメント、心理的サポートを得ていると回答した従業員は、そうでない従業員に比べ、過去2年間の外的プレッシャーに対する企業の対応を高く評価する傾向が2.3倍高く、離職の可能性は40%低くなっています。

新しい働き方の時代における生成AIの活用

生成AI利用の可能性の追求はまだ模索状態です。同技術の活用に対する期待は高まっており、働き方への影響についても、肯定的な見方が広がっています。本調査でも、従業員の48%が、生成AIによって柔軟性が向上すると予想しています。企業の84%が、生成AIをすでに活用、あるいは今後12カ月以内に活用する予定と回答しました。

しかし、生成AI関連のスキル研修を予定している企業はわずか18%に過ぎません。従業員も企業も、新しい働き方の下で従業員が能力を発揮するためには、「学習とスキル」が何よりも重要であると考えていますが、この調査結果はそうした考え方と相反するものとなっています。

Liz Fealyのコメント:
「新しい働き方が浸透する中で生成AIが登場したことは、企業にとって従業員の学習とアップスキリングに力を入れる機会でとなります。従業員のスキル強化に向けた投資は、人材の惹きつけに資するだけでなく、組織が将来的な労働力ニーズを計画する上で重要です。人を中心に据えて進化しているテクノロジー先進企業は、本質的にアジャイルでレジリエンスに優れており、そうでない企業よりもはるかに卓越した成果を生み出すことができるでしょう」

「EY 2023 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2023)」について

本調査は、2023年5月から2023年7月まで実施され、日本を含む22カ国、25産業セクターの総計18,625人から回答を得ました。そのうち、17,050人が従業員で、1,575人がビジネスリーダーでした。

※本ニュースリリースは、2023年9月12日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

英語版ニュースリリース:
Pay, well-being, and flexibility prolong workplace tensions as more than a third of employees likely to quit, EY survey finds


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150カ国以上に展開するEYのチームは、データとテクノロジーの実現により信頼を提供し、クライアントの成長、変革および事業を支援します。
アシュアランス、コンサルティング、法務、ストラテジー、税務およびトランザクションの全サービスを通して、世界が直面する複雑な問題に対し優れた課題提起(better question)をすることで、新たな解決策を導きます。
EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。EYによる個人情報の取得・利用の方法や、データ保護に関する法令により個人情報の主体が有する権利については、
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