EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYは、2024年のIPOに関する調査結果「EY Global IPO Trends 2024」(以下、「本調査」)を発表したことをお知らせします。2024年、世界のIPO市場では、1,215件のIPOにより計1,212億米ドルの調達を記録しましたが、これは2023年をわずかに下回るレベルでした。2024年下半期は、上半期に比べてIPOの実績が上回り、特に第4四半期は直前の3四半期を上回るパフォーマンスとなりました。
今回初めてインドがIPOの件数で世界首位となり、新規上場株式数は米国のほぼ2倍、ヨーロッパの2.5倍を記録しました。一方、米国はIPOの調達額で、2021年のピーク以来、初めて世界首位の座を奪還し、引き続き最もダイナミックで魅力的な市場として世界の投資家を惹きつけています。米国株式市場の時価総額は前例のないレベルに達し、他のすべての株式市場を上回りました。さらに、米国で2024年に新規上場した企業に占める外国籍企業の割合が、過去最高の55%となりました。中国では規制強化により、IPO件数が過去10年で最低となりました。オーストラリアでは、IPO件数の減少率が過去20年余りで最大となりました。一方、マレーシアはIPOのバリュエーションと流動性への関心が高まり、IPO件数が19年ぶりに最高記録を更新しました。
2024年には、プライベートエクイティ(PE)およびベンチャーキャピタル(VC)が支援するポートフォリオ企業の新規上場が、全世界のIPO調達額の46%を創出しました。これは、世界のIPO活動におけるプライベートエクイティとベンチャーキャピタルの貢献度の高さを物語るもので、IPOの状況を左右する彼らの重要な役割が再認識されました。2024年の20件のメガIPOのうち、12件がプライベートエクイティの支援を受けたもので、昨年の2件から大幅に増加しました。2024年には、18社のユニコーン企業がIPOを実施しましたが、これらユニコーン企業の半数はベンチャーキャピタルによって立ち上げられたものでした。2023年にはわずか3社だったので、大きな増加です。
セクターの中では、テクノロジー、メディア・エンターテイメント、テレコム(TMT)、製造業、消費財セクターが合わせて、件数、調達額の両方で約60%のシェアを有し、世界のIPOで上位を占めました。
クロスボーダーIPOは2024年にも増加を続け、件数が113件と、2023年の83件から上昇しました。米国は引き続きIPOの主要な市場となっており、評価価値が中規模から大規模のディールは、上場後も堅調なパフォーマンスを見せました。
3つの地域の中で、件数、調達額ともに首位となったのはEMEIAで、522件のIPOにより532億米ドルを調達しました。全世界で上位10件のIPOのうちEMEIAが6件を占め、そのうち3件はプライベートエクイティやベンチャーキャピタルに支援されていました。
AmericasではIPO活動の勢いが大きく回復し、205件のIPOが331億米ドルを調達するという、件数、調達額ともに2021年以来の最高記録となりました。
Asia-PacificのIPO活動は、2021年に始まった下降傾向が続き、前年同期比で件数が35%、調達額が51%の減少となりました。しかし、2024年下半期には、上半期よりも実績が上向きました。
現在、600社以上のAIおよびAI関連の公開企業があり、そのほぼ半数が過去4年間に新規上場しています。こうした企業の多くは、ベンチャーキャピタルの支援を受けています。これは、IPOが資金調達の課題を克服し、イノベーションと成長を加速させる手助けとなることを示しています。
約60社のAI企業が現在IPOの申請を行っており、パイプラインには400社以上のAI関連企業が控えています。AIを活用したイノベーションに対する投資家の関心が依然として高く、ベンチャーキャピタルの支援も継続していることの現れです。AI分野の一連の企業がIPO成功のベンチマークを確立することができれば、他の高成長分野の企業も刺激を受けてIPOを検討するようになり、市場の勢いはより広範囲にわたり今後も活性化していくでしょう。
2024年、米国でビットコインETF(上場投資信託)とイーサリアムETFが承認されたことで、暗号通貨の資産正当性が高まりました。機関投資家によるアクセス拡大が見込まれ、市場流動性が向上するでしょう。このため、暗号通貨関連企業からのIPO申請が相次ぐ可能性があります。しかし、これらのIPOが成功するかはまた、規制上の課題を乗り越え、堅牢なコンプライアンス構造を示せるかどうかにもかかっています。
米国大統領選挙でどちらの党が多数派を獲得したかにかかわらず、IPO活動は選挙後の数年間、増加する傾向にあるのが、これまでの通例です。大統領選挙が終わるまでは、ある程度の不確実性が存在するものですが、選挙後には、一般的に政策の方向性や経済イニシアティブについてより明確な情報が得られます。
これにより市場のセンチメントが安定し、IPOにとってより条件の良い環境が生まれます。選挙後の年に他に先駆けて上場する企業は、通常、製造業、TMT(テクノロジー、メディア、テレコム)、金融などのセクターの企業である傾向があります。しかし、ほぼすべてのセクターでIPO活動が上昇します。
財政・金融政策の転換、地政学的緊張とグローバルサプライチェーン、AIとデジタル変革、環境・社会・ガバナンス(ESG)の新たな優先事項、米国の新政権の影響などのメガトレンドが、世界のIPO市場の様相を変化させています。これらの変革的な外的要因にもかかわらず、IPO市場は2025年に、慎重ながらも楽観的な経済環境、ますます好ましい金融政策、市場流動性と評価額の上昇に支えられ、引き続き強力なパフォーマンスを維持する見込みです。
同時に、世界のIPO市場は変貌をとげており、地域同士のつながりはあるものの、各地域特有の強化セクターや成長ドライバーを有する独自のエコシステムへと進化しています。各セクターの成否は、各国の経済状況と地域の戦略的優先事項にますます影響を受けるようになっています。
EY Global IPOリーダーのGeorge Chanのコメント:
「ビジネス変革には資金が必要であり、IPOは成長とイノベーションを推進するために必要な資本を調達するための強力な手段を提供します。世界のIPO市場は、活動が鈍化していた時期を経て、より好ましい市場状況に支えられ再び勢いを取り戻しています。
この新たな市場の勢いが提供する機会を活用しようと、あらゆるセクターの企業がパイプラインに控えているため、2025年の見通しは一層明るいものとなっています」
EY Japan IPOリーダー/EY Startup Innovation共同リーダー/EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター長の齊藤 直人(さいとう まさと)のコメント:
「2024年(年間)の日本のIPO件数は、2023年の96社よりも10社減の86社となりました。そのうちグロース市場への上場は64社(全体の74%)となりました。第4四半期には、2024年初となるプライム市場への上場が4件(陸運業、精密機器、電気機器、小売業)ありました。2024年、日本における調達額トップのIPO案件(陸運業)は、グローバルベースで上位7位となっています。2024年の日本のIPOの特徴としては、①資金調達額が1,000億円を超える大型銘柄が増加、②成長性の高い優良銘柄はグローバルオファリングを行うなど高い評価を受けているものの、一方で③グロース市場の株価指数は低迷していることから、投資選別の二極化が進んでいる、④業種としては、AIや宇宙といった最新のビジネス領域、コロナ禍明けの回復を受けて飲食業界、リスキリングを背景とした教育、学習サービス、さらには人材関係、バイオ・創薬といった分野の案件が多い点が挙げられます」
セクター |
2024年 |
2023年 |
対前年増減率 |
---|---|---|---|
テクノロジー |
211 |
258 |
-18% |
製造業 |
174 |
251 |
-31% |
小売 |
119 |
107 |
11% |
不動産/ホスピタリティ/建設 |
117 |
96 |
22% |
ライフサイエンス |
109 |
107 |
2% |
消費財 |
81 |
81 |
0% |
モビリティ(自動車など) |
79 |
101 |
-22% |
プロフェッショナル・ファーム/サービス |
67 |
80 |
-16% |
鉱業、金属 |
63 |
78 |
-19% |
メディア/エンターテインメント |
35 |
35 |
0% |
エネルギー/公益 |
34 |
34 |
0% |
ヘルスケア |
30 |
27 |
11% |
銀行/証券 |
28 |
25 |
12% |
石油・ガス |
23 |
21 |
10% |
ウェルス&アセットマネジメント |
16 |
16 |
0% |
政府/公共 |
15 |
14 |
7% |
保険 |
8 |
7 |
14% |
テレコム |
6 |
13 |
-54% |
合計 |
1215 |
1351 |
-10% |
出典:EY、Dealogic
セクター |
2024年 |
2023年 |
対前年増減率 |
---|---|---|---|
テクノロジー |
23.6 |
30.5 |
-23% |
不動産/ホスピタリティ/建設 |
14.3 |
5.3 |
168% |
小売 |
13.7 |
5.9 |
134% |
ライフサイエンス |
12.8 |
10.8 |
19% |
モビリティ(自動車など) |
11.7 |
9.6 |
21% |
消費財 |
11.6 |
10.0 |
16% |
製造業 |
9.2 |
25.3 |
-64% |
ヘルスケア |
4.3 |
1.7 |
151% |
石油・ガス |
3.9 |
6.1 |
-36% |
エネルギー/公益 |
3.1 |
6.6 |
-53% |
ウェルス&アセットマネジメント |
3.1 |
1.3 |
145% |
プロフェッショナル・ファーム/サービス |
2.6 |
3.3 |
-23% |
銀行/証券 |
2.3 |
3.0 |
-22% |
メディア/エンターテインメント |
1.8 |
0.6 |
200% |
鉱業、金属 |
1.3 |
4.8 |
-72% |
保険 |
1.1 |
0.7 |
71% |
テレコム |
0.6 |
0.5 |
17% |
政府/公共 |
0.2 |
0.2 |
-18% |
合計 |
121.2 |
126.1 |
-4% |
出典:EY、Dealogic
※本ニュースリリースは、2024年12月18日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文を優先します。
英語版ニュースリリース:2024 IPO wrapped: Americas and EMEIA recover, Asia-Pacific lags
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データについて
本レポートに示されたデータは、ey.com/ipo/trendsでご覧いただけます。
本レポートにおける2024年4Qとは、2024年の第4四半期のことを指し、2024年10月1日から12月9日に完了しているIPOおよび2024年12月末までに完了すると予想されるIPO(2024年12月9月時点での予測)を含めています。本レポートにおける2023年4Qとは、2023年の第4四半期のことを指し、2023年10月1日から12月31日に完了しているIPOを含めています。本レポートにおける2024年H1とは、2024年上半期のことを指し、2024年1月1日から6月30日に完了しているIPOを含めています。本レポートにおける2024年H2とは、2024年下半期のことを指し、2024年7月1日から12月9日に完了しているIPOおよび2024年12月31日までに完了予定のIPO(2024年12月9月時点での予測)を含めています。本レポートにおける2024年とは、2024年暦年全体のことを指し、2024年1月1日から12月9日に完了しているIPOおよび2024年12月31日までに完了予定のIPO(2024年12月9月時点での予測)を含めています。本レポートにおける2023年とは、2023年暦年全体のことを指し、2023年1月1日から12月31日に完了しているIPOを含めています。
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