2022年1月5日
DX投資促進税制の適用に関する留意点と課題

新国際課税の枠組みが明らかに

執筆者 EY 税理士法人

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

Ernst & Young Tax Co.

2022年1月5日

BEPS2.0と呼ばれるOECDの新たな国際課税ルールについて、その大枠と日本企業への影響とその対応について解説します。

本稿の執筆者

EY税理士法人 大堀秀樹

EY税理士法人にて、日本企業のグローバル税務ポジションの分析を提供している。サステナビリティの観点からの税務ガバナンスや税情報の開示についてもアドバイスを担当している。

要点
  • 経済のデジタル化に伴う課税上の課題(BEPS2.0プロジェクト)について、経済開発協力機構(OECD)は2021年7月および10月に声明を公表し、二つの柱からなる基本設計について大枠の合意が示されました。
  • 第1の柱は、多国籍企業が物理的な存在の有無に関わらず利益を稼得している市場国に対して一定の課税権を再配分するものであり、その対象となる多国籍企業約100社弱の選定基準が明らかになりました。
  • 第2の柱は、国際的な法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけて各国の課税ベースの確保を図ることを目指しており、親会社にトップアップ課税が課される15%の最低法人税率が導入されることとなりました。

Ⅰ はじめに

経済開発協力機構(OECD)は、経済のデジタル化に伴う課税上の課題(以下、BEPS2.0プロジェクト)について、2020年10月12日に「第1の柱のブループリント」「第2の柱のブループリント」「経済的影響評価」など、多くの文書を公表しました。

そして21年7月1日に、130にのぼる参加国・地域の合意が反映された「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対処するための2つの柱から成る解決策に関する声明」(以下、7月声明)を公表し、続けて21年10月8日に、BEPS2.0プロジェクトにおける二つの柱からなる基本設計について、136カ国地域の合意を反映した声明(以下、10月声明)を公表しました。10月声明では、7月声明において発表された大枠合意に加えて、重要なパラメータについて具体的な内容を示しています。

本稿では、7月声明と10月声明に示されたBEPS2.0プロジェクトにおける第1の柱と第2の柱の主なポイント、および日本企業への影響と求められる対応について解説します。

Ⅱ 第1の柱:ネクサスおよび利益配分ルール改定

第1の柱において、新たな課税権として市場国に超過利益を配分するAmount Aの対象となる企業は、全世界の売上高が200億ユーロ※1※2を超え、かつ売上高税引前利益率が10%を超える多国籍企業とされています。20年10月に発表されたブループリントでは、自動化されたデジタルサービスを消費者向けビジネスからの収入を対象としていましたが、7月声明では資源採取と規制対象の金融サービスを除く全ての収入が対象とされました。また、一部のセグメントごとに収益性が異なる企業では、開示されている特定のセグメントが適用対象基準を満たす場合、セグメンテーションが適用されることになります。

Amount Aの対象となる多国籍企業においては、売上高税引前利益率の10%を上回る超過利益の25%が、新たな課税権としてネクサス(課税の根拠となる結び付き)のある市場国へ配分されることになります。対象となる企業が100万ユーロ以上の収入を特定の市場国から獲得している場合※3※4は、その市場国にネクサスがあるとみなされ、配分の対象となります。対象となる企業の超過利益が既に特定の市場国において課税されている場合は、マーケティング・販売利益に関するセーフハーバーが適用されることになります。市場国に配分される利益に関しては、免除方式または税額控除方式により二重課税の救済が認められる予定です。

Amount Aに関連する全ての問題について、強制的な紛争解決メカニズムが利用可能になります。一部の発展途上国では、選択的紛争解決メカニズムも利用可能です。

Amount Aの導入に際して、デジタルサービス税(DST)および類似の一方的措置の撤廃が求められています。21年10月21日、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、英国(UK)、米国(US)は、第1の柱が発効するまでに発生したDSTの税金の一部を、第1の柱が発効した際にAmount Aの租税から控除する共同声明を発表しました。米国は、5カ国に対して提案していたDSTに関する貿易措置を取りやめることに合意しました。

Ⅲ 第2の柱:新しいミニマムタックス導入のためのグローバルルール

第2の柱は、国ごとにミニマムタックスを下回る場合に、親会社にトップアップ課税を課す所得合算ルール(IIR)と、IIRにより課税されなかった場合に支払いについて損金算入を認めない軽課税支払ルール(UTPR)からなるGloBEルール、および租税条約の特典否認に関する課税対象ルール(STTR)の二つの要素から構成されています。

GloBEルールは、国別報告書(CbCR)と同様に直近の事業年度におけるグループ全体の連結売上高合計が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業に適用されます。UTPRは、国際的な事業活動が初期段階にある多国籍企業(国外の有形資産が最大5,000万ユーロまで、および5カ国以下の事業活動)については適用対象とされてから5年間は除外されます。多国籍企業グループの最上位が投資ファンド、年金基金、政府系企業、非営利法人、国際機関である場合、GloBEルールの適用が免除されます。

10月の声明においてIIRとUTPRにおけるミニマムタックスの税率は15%とされました。GloBEのトップアップ課税は、対象税額および財務会計上の所得への調整を反映し、国レベルで決定されます。米国のGILTIとの共存についても検討中です。

実態のある所得に関するカーブアウトでは、初年度は有形資産の簿価の8%と給与の10%が除外され、10年間の移行期間終了後は、給与および有形資産の帳簿価額の5%が除外されることになります。

トップアップ課税を課す権利は、分割保有(split ownership)を加味したトップダウンアプローチにて割り当てられます。売上高が1,000万ユーロ未満、利益が100万ユーロ未満の国地域に対しては、デミニマス基準に基づく除外規定が設けられています。

STTRの適用に使用されるミニマム税率は9%となり、利子、使用料およびその他特定の支払に対する名目税率がSTTRのミニマム税率を下回る場合に、差額が徴収されます。STTRは、GloBEルールに優先適用されます。

Ⅳ 導入スケジュール

10月声明では、導入計画について次のように述べています。

<第1の柱>

  • 2022年初頭-Amount Aに関する多国間協定テキストと注釈
  • 2022年半ば-多国間協定の署名式
  • 2022年末-Amount Bに関する作業の最終化

<第2の柱>

  • 2021年末〜2022年初-GloBEルールのモデル法案
  • 2021年末〜2022年初-STTR実施のためのモデル条約
  • 2022年末-GloBEルール各国法制化

V 日本企業への影響と求められる対応

第1の柱のAmount Aについては、導入当初に対象となる日本企業は限定的と想定されますが、中期的には対象企業は増加することが予想されます。

また、日本企業においては、未だ当初案の「巨大なデジタル企業に対する課税」と認識したまま、自社はBEPS2.0の対象外と認識している企業がありますが、特に第2の柱のGloBE課税については、CbCRの対象企業であれば対象となり、結果としてトップアップ課税が生じない場合でもグローバル申告の義務が生じると考えられます。

事業年度の終了後に、法人税の申告期限とは別に、一定の申告準備期間とグローバル申告期限が定められる予定です。ただし、当該事業年度において、グローバルタックスに関する合理的な見積りおよび引当金の計上、その一方では欠損金、超過利益の繰越とクレジットに関する税効果会計への対応が求められることから、決算時の計上が求められると考えられ、監査人との事前確認を要します。

OECDの非常に野心的な実施スケジュールを考えると企業に残された限られた時間の中で、企業グループに与える影響を分析し、グローバル申告に要する情報収集と計算プロセスのロードマップを策定し対応しなければなりません。そして、本社税務部門にとっては、グローバル税務ポジション(特に国別の実効税率)の管理が求められることになると考えられます。

※1 経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)

※2 売上高の閾値は7年後の検証プロセスを通じて、100億ユーロに引き下げられ得ると述べている。

※3 税源浸食および利益移転(Base Erosion and Profit Shifting)

※4 国内総生産が400億ユーロを下回る小規模の国・地域の場合には、25万ユーロの閾値が適用される。

関連資料を表示

  • 「情報センサー2022年新年号 Tax update」をダウンロード

サマリー

BEPS2.0と呼ばれるOECDの新たな国際課税ルールについて、その大枠と日本企業への影響とその対応について解説します。

情報センサー2022年新年号

情報センサー
2022年新年号

※ 情報センサーはEY新日本有限責任監査法人が毎月発行している社外報です。

 

詳細ページへ

関連コンテンツのご紹介

税務サービス

日本国内外の企業・個人に対して、税務アドバイザリーおよび税務コンプライアンスにおいて、EYの豊富な実績とテクノロジーを最大限に活用し、クライアントの期待に応えるサービス提供を心掛けています。

詳細ページへ

この記事について

執筆者 EY 税理士法人

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

Ernst & Young Tax Co.

  • Facebook
  • LinkedIn
  • X (formerly Twitter)