EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 VC&ファンドセクター
公認会計士 前川 健太郎
ここからは、資金調達に種類株式が利用される理由を解説します。スタートアップの資金調達に種類株式が利用される理由は、以下の通り経営者及び投資家にとってメリットがあるからです。
経営者にとってのメリット |
投資家にとってのメリット |
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以下では、上記のメリットについて解説します。
スタートアップの事業を進捗(しんちょく)させていったところ、IPOは難しいがそこそこの値段でM&Aにより売却ができる場合があります。この場合、種類株式の優先分配権をうまく使うことで、創業者と投資家双方にとって良い形でExitすることができます。
創業者 | 80株 | 取得単価10万円 | (投資総額800万円) |
VC | 20株 | 取得単価100万円 | (投資総額2,000万円) |
M&Aで4,000万円での売却先が見つかった場合
② VC投資が種類株式(優先分配権付き 参加型 1倍)の場合(優先分配権付き参加型1倍とは、投資額の1倍まで優先分配を受ける権利を有し、かつ優先分配後の残余財産の分配を受ける権利を有するものである)
希薄化防止条項を付すことで、ダウンラウンド時にはファイナンス単価を減少させることができるよう、種類株式を設計することができます。
転換比率 = 1株あたりの払込金額/転換価格
基本的に転換比率は上記の通り規定されます。原則として、「1株あたりの払込金額=転換価格」となるので、転換比率は1となる。転換価格についてダウンラウンド発生時に金額を低くなるように規定を工夫することで、ダウンラウンド時にファイナンス単価を下げることができます。
税制適格ストックオプションは、税務上のメリットがあるが、ストックオプション付与時の原資産の公正な価格を下回る行使価格を設定できないとされています。
そこで、普通株式での資金調達を行った場合、当該資金調達により普通株式の公正な価格が上昇することとなり、税制適格ストックオプションの権利行使価格が上昇することとなります。一方、種類株式での資金調達を行った場合は、当該資金調達があったとしても普通株式の公正な価格は必ずしも上昇しないため、税制適格ストックオプションの権利行使価格は必ずしも上昇しないこととなります。(経済産業省『「コンバーティブル投資手段」活用ガイドライン』)
創業者:1株10万円で出資 VC:1株100万円で出資
資金調達にConvertible Securityが利用される理由は、主に「シード期にコスト・時間のかかる種類株式を使用しないようにするため」「企業価値の決定を先延ばしするため」です。具体的には、適格資金調達が起こった際に、当該資金調達に際して発行される種類株式と同等の株式をディスカウントやキャップを考慮した転換価格で取得できるというものです。ここで、適格資金調達とは、通常種類株式を発行して行う資金調達で一定金額以上のものをいい、ディスカウントとは転換価格について適格資金調達で発行される株式の単価から○%引いた価格のように設定されるものであり、キャップとは適格資金調達時のバリュエーションの上限を設定し、仮に適格資金調達がそれ以上のバリュエーションで行われたとしても、当該設定された上限値をもとに転換する株数を決定するものです。
企業価値の決定を先延ばしする効果は以下の設例で説明します。
発行済み株式総数 1万株
エンジェル投資家 J-KISS(Convertible Equity) 投資総額1,000万円 ディスカウント20% キャップ2億円
シリーズA投資家 4000株 単価10万円 投資総額4億円
キャップベースのほうが単価が低いので、1,000万円÷2万円=500株エンジェル投資家はシリーズA株式を取得することができる。
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