旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』― 第33回 自分の手の中のものを活かす ~キャリアの「わらしべ長者」になるために~

梅澤 真由美
管理会計ラボ(株) 代表取締役/公認会計士


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2019年12月1日号に掲載された記事をご紹介します。



起業のきっかけは、双子を出産したことでした。外資系企業での管理職の仕事は充実していました。しかし、本国との時差や子どもたちの体調の関係で、会社のペースで働くことに負担を感じました。起業は、やりたいことという「事業内容」が先に立つことが多いと思いますが、私の場合には「働き方」が主な目的でした。自分の都合で、時間と場所を決められることを重視しての起業であり、4年目の現在もこれを大事にしています。

もともとは生態学を志して、大学では農学部に入りました。しかし、研究室に閉じこもっているのが性に合わず、農村の活性化に専攻を変更しました。授業で受けた農業簿記が面白かったことから、簿記を自分で学び始め、その延長線上で公認会計士試験に挑戦しました。合格後、監査法人で数年勤務しましたが、いろいろな企業をみられる面白さの反面、外部者という立ち位置が自分の性格に合わず、事業会社勤務の道に進みました。

日本マクドナルド(株)を経て、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)へ移りました。ディズニーで働くことは、ディズニー好きの私にとって10年来の夢で、時々ホームページで求人をチェックしていました。あるとき、ディズニーが小売部門の経営企画の募集をしており、マクドナルド時代の経験を買われて、転職できました。このときの経験から、キャリアは「わらしべ」のようなものだと思っています。たとえ自分では大したことがないと思うスキルや経験も、それを欲しい人がいるものです。手元のわらを交換していくと、大きな仕事につながっていきます。

興味があったディズニーでの仕事はとても楽しいものでした。さらに、経理や経営企画の仕事では、ビジネスの表も裏もみることができます。このことは、今の会社のビジネスモデルを考えるうえでとても役に立ちました。たとえば、ディズニーはコンテンツビジネス中心の多角化企業として成功しています。これを自分なりに応用して、1つのテーマを、コンサルティング、セミナー、雑誌、書籍と多重活用しています。また、マクドナルドのフランチャイズビジネスにヒントを得て、遠方では、コンテンツを提供し代わりに講師をやってもらうという取組みをしています。

起業論に、「Bird in Hand」という言葉があります。手持ちの手段で何か新しいものをつくるという意味です。この考え方を踏まえて、わたしの会社は自分が経験を積んできた管理会計という分野に特化にしています。起業といってもスケール化を必ず目指す必要はありません。ニッチな分野でも価値を認めてくれるお客様は必ずいます。ないものを案じるよりも、今自分の手の中にあるものをじっくり棚卸してみて、それを活かすのもひとつの方法です。

ゲームのルールが自分に合わないと感じたら、ゲームとルールを自分で作るという選択肢もあることを思い出してみてください。自分の人生を、しなやかにしたたかに生きていく。そんな仲間が増えていくことを楽しみにしております。

(「旬刊経理情報」2019年12月1日号より)
(企画・協力 EY新日本有限責任監査法人 EY Entrepreneurial Winning Women)



梅澤 真由美

梅澤 真由美(うめざわ・まゆみ)
管理会計ラボ(株) 代表取締役/公認会計士

2002年公認会計士試験に合格後、監査法人トーマツ(当時)に勤務。その後、日本マクドナルド(株)とウォルト・ディズニー・ジャパン(株)にて、経理やファイナンス業務に10年間従事。2016年、現在の管理会計ラボ(株)を創業。管理会計や経理実務関連の著作や記事を多数執筆。Retty(株)などの社外役員も務めている。



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