Social insurance and labor update vol. 5 ― 「副業・兼業」について

2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、厚生労働省の「モデル就業規則」に副業を原則として認める旨の記載が追加されて以降、副業・兼業を容認する会社が徐々に増えています。
副業・兼業には、会社に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)、自ら起業して事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任といった形で行うものなど、さまざまな形態があります。

本メルマガでは、会社に雇用されながら他の会社で副業または兼業として仕事を掛け持つことを想定し、副業・兼業のメリットや留意点を紹介します。

副業・兼業を認めるメリット

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によると、以下のメリットや留意点が挙げられています。

【従業員のメリット】

1. 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、従業員が主体的にキャリアを形成することができる。

2. 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。

3. 従業員の所得が増加する。

4. 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

【会社のメリット】

1. 従業員が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。

2. 従業員の自律性・自主性を促すことができる。

3. 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

4. 従業員が社外から新たな知識・情報を得られることで、事業機会の拡大につながる。

副業・兼業を容認する際の留意点

【従業員の留意点】

1. 就業時間が長くなる可能性があるため、従業員自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要となる。

2. 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識する。

3. 自社と副業先の両方に、労務管理に必要な情報提供を自ら行う必要がある。

4. 自社と副業先の両方で社会保険に加入しなければならないケースがあることに留意が必要となる。

5. 2カ所以上から給与を受けるため、副業先から一定の金額を超える給与所得があれば確定申告が必要となる。

【会社の留意点】

1. 副業・兼業に備えて就業規則を確認し変更する。合意書や誓約書を準備する。

  • 必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応やルール設定が必要となる。
  • 副業・兼業に関する各種取扱いについて合意を取り交わす事項を整理する。

2. 自社と副業・兼業先との労働時間を通算した時間外労働を把握する。

  • 時間外労働時間を管理し、適切な割増賃金率で時間外労働手当を計算するための準備をしておく。

3. 労災保険の取扱いを確認・想定しておく。

  • 例えば労災に遭ったのが副業先で、本業と副業の両方の業務ができなくなった場合、従業員は副業先だけではなく本業先の収入を含めて補償されることになる(複数事業労働者に該当する場合)。このような場合に備え、労災保険の手続き等を予め確認しておく。

4. 社会保険上の取扱いを確認しておく。

  • 従業員が同時に複数の社会保険適用事業所で勤務することになった場合、副業(兼業)先での勤務条件にもよるが、基本的に本業と副業・兼業先ともに社会保険料を支払う必要がある。一方で雇用保険は主たる生計を維持する賃金を受ける本業の会社でのみ加入となる。会社の人事労務担当者は、副業・兼業を希望する従業員に対し、社会保険手続上においても適切な指導と手続きを行うことが必要になる。


副業・兼業は従業員、会社、社会の三者にとってメリットがある働き方です。今後、副業・兼業を容認していくことを検討する際、以下サイト等を活用し、事前に精度設計やガイドライン整備を行いましょう。

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