中華人民共和国関税法 他

中国JBS‐中国税務及び投資速報(日本語要約版)2024年5月

税務法規

1. 関税

・中華人民共和国関税法
・中華人民共和国関税法に付随する中華人民共和国輸出入税則の公布に関する公告

概要

2024年4月26日、第14期全国人民代表大会常務委員会は、中華人民共和国関税法(以下「関税法」)を正式に可決しました。関税法は2024年12月1日より施行され、中華人民共和国輸出入関税条例は同時に廃止されます。

現行の関税制度と比較すると、関税法による税負担水準に大きな変化はありません。 関税法は全7章72条から構成されており、主な内容は以下の通りです。

課税対象

中華人民共和国が輸出入を許可している貨物や物品

納税者

輸入貨物の荷受人、輸出貨物の出荷人、輸入物品の運送人または受取人

源泉徴収義務者

  • クロスボーダー電子商取引の小売輸入に従事する電子商取引プラットフォーム事業者、物流企業及び通関業者
  • 法律、行政法規の規定に基づき、関税を源泉徴収する義務を負う単位及び個人

税率

中華人民共和国輸出入税則に基づき、税率は主に以下の通り

  • 輸入段階における最恵国税率、協定税率、特恵税率、通常税率
  • 輸出段階における輸出税率
  • 輸出入段階における関税割当税率、暫定税率

課税方法

従価税方式、従量税方式、混合方式

租税優遇措置

  • 明確に規定された関税の免除・軽減項目
  • 国務院は必要に応じて特別な優遇政策を策定することができる

徴収管理

  • 貨物の通過と税金の確定を分離する形式を採用することができる
  • 納税者、源泉徴収義務者は規則に従い、税関を選択し納税申告できる
  • 条件に合致する納税者は納税額を合算できる
  • 納税者が税金を過払いした場合の還付申請期間を1年から3年に延長する

今回の関税法の公布は、中国の租税立法が一歩前進したことを表しているといえます。中国ではこれまで、18税目において13の税法が既に立法化されていますが、残りの増値税、消費税、土地増値税、都市土地使用税、不動産税は、まだ立法化が行われていません。


2. 個人所得税

・深圳市における海外ハイエンド人材及び緊急不足人材の2023年度個人所得税財政補助金申告ガイドライン

概要

中国の粤港澳大湾区における個人所得税優遇措置の適用は2027年末まで延長されました。広東省と深圳市は、中国本土と中国香港の税負担の差額(つまり課税所得の15%で計算される納税額を上回った税額)に対して、大湾区珠江デルタ9市で働く海外(香港、マカオ、台湾を含む)のハイエンド人材及び緊急不足人材につき補助金を支給し、かつこの補助金に係る個人所得税は免除されます。

深圳市政府の関連部門は、深圳市における海外ハイエンド人材及び緊急不足人材の2023年度個人所得税財政補助金申告ガイドライン(以下「ガイドライン」)を公表し、財政補助申告に関する事項を明確化しました。

  • 2024年5月15日より、申告者は広東省行政サービスネットワークを通じて、関連する申告資料を勤務先に提出し、審査を受けます。申告単位は、申告者の申告情報及び資料を審査し、かつ書面による説明、承諾を行った後、2024年6月15日までに申告システム上で申請を提出する必要があります。
  • 申告者が個人での労務につき申告を行う場合、勤務先を通じて申告する必要はありません(納税額に給与所得が含まれる場合は、勤務先を通じた申告が必要)。

なお珠江デルタ9市とは、広東省の広州市、深圳市、珠海市、佛山市、恵州市、東莞市、中山市、江門市、肇慶市を指します。


3. その他

・国家税務総局北京市税務局租税事前裁定作業弁法(試行)

概要

北京市税務局は、租税事前裁定に関する作業弁法(以下「北京弁法」)を公布しました。

租税事前裁定制度の下では、税務機関は、企業において将来予想される複雑な税務関連事項に対して租税政策をどのように適用するかにつき、明確な意見を提示します。

北京弁法の要点は以下の通りです。

適用対象者

北京市内における単位納税者

適用対象事項

将来発生が予想される複雑かつ重要な税務関連事項

適用除外事項

  • 立ち上げ予定のないプロジェクト、または近い将来(24カ月以内)に発生しない事項
  • 合理的な事業目的のない事項、または関連する国家法令により明確に禁止されている事項
  • 現行の租税政策で明確に規定され、直接に適用される事項
  • 現行の租税政策で明確に規定されておらず、立法が必要な事項
  • 申請者の過年度に行った取引と同じ特性を有し、かつその過年度の取引は税務当局と協議中で、税務処理の結論が出ていない事項
  • その他、事前租税裁定が適用されない事項

受理機関

  • 北京の1,000社集団は国家税務総局北京市税務局第一税務分局へ申請
  • その他の納税者は所轄税務機関の税務サービスセンターへ申請資料を提出

北京弁法は、裁定手続きやフォローアップ管理などの事項についても規定しています。納税者は、近い将来において、複雑かつ重要な税務問題を含む可能性のある事業計画がある場合、事前裁定制度の活用を慎重に検討することが推奨されます。北京以外にも、広州南沙、上海、中国(江蘇)自由貿易試験区南京地区など、中国の他の地区も既に同様の方針を公表しています。その他、深圳、広州、寧波、青島、雄安新区などでも、租税事前裁定に関する規定が策定されたものの、まだ公表されていません。

関連する納税者においては、事前に具体的な規制を理解の上、十分な資料を準備して税務機関との積極的なコミュニケーションを維持することで、裁定プロセスのより迅速な進捗が期待されます。


・受益所有者情報管理弁法

概要

中国人民銀行及び国家市場監督管理総局は、受益所有者情報管理弁法(中国人民銀行及び国家市場監督管理総局令2024年3号、以下「3号令」)を共同で公布しました。

届出企業

3号令に基づき、以下の主体は関連登録システムを通じて、受益所有者情報の届出を行う必要があります。

  • 会社
  • パートナーシップ
  • 外国会社の支店
  • 中国人民銀行及び国家市場監督管理総局が規定するその他の対象

個人事業主は、受益所有者情報の届出を行う必要はありません。

受益所有者

3号令における受益所有者とは、以下のいずれかの条件を満たした自然人を指します。

  • 直接または間接の方式を通じて、最終的に届出主体の25%以上の持分、株式またはパートナーシップ持分を所有している
  • 第1基準は満たさないが、最終的に届出主体の25%以上の収益権または議決権を享有している
  • 第1基準は満たさないが、個別または共同で届出主体に対し実際の支配を行っている

3号令は2024年11月1日から施行され、3号令が施行される前に既に登記を行った企業は、2025年11月1日までに、規定に従って受益所有者情報の届出を行わなければなりません。
 

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