EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2024年9月4日、スイス連邦参事会は、2025年1月1日から所得合算ルール(IIR)を適用することを発表しました。軽課税支払いルール(UTPR)の適用は無期限に延期されます。
適格国内ミニマム課税(QDMTT)、IIR、およびUTPRの法的根拠は、2024年1月1日にスイスの第2の柱条例が発効して以来、存在していました(2023年12月28日付EY Global Tax Alert「Swiss BEPS 2.0 Pillar Two implementation — Switzerland to apply QDMTT beginning 1 January 2024; IIR and UTPR delayed」〈英語のみ〉をご参照ください)。しかし、世界的な実施状況が不透明なため、連邦参事会は2023年にIIRとUTPRの適用の延期を決定しました。今回、連邦参事会は2024年9月4日の会議で、IIRについては2025年から適用することを決定しました(連邦参事会のプレスリリースをご参照ください)。
IIRの導入により、スイスは、対象となるスイス多国籍企業(MNE)の外国構成事業体、および外国MNEのスイス中間持株会社の外国構成事業体の軽課税所得に課税できるようになります。
連邦参事会がIIR適用の理由として挙げたのは、ほとんどのEU加盟国、英国、カナダ、およびオーストラリアが2025年からUTPRを適用する予定であるため、スイスは外国がUTPRを適用することにより国外で生じる課税から自国の税収を守ることができるということです。さらに、これによりスイスに本社を置くMNEグループに法的確実性がもたらされ、UTPRを適用する複数の国外の国・地域において租税手続きの対象となることを回避できます。
推定によると、IIRにより連邦では1億2,500万スイスフランから2億5,000万スイスフラン、州では3億7,500万スイスフランから7億5,000万スイスフランの追加税収が見込まれます。
UTPRは法的な観点から批判を受けており、税収の可能性も、より限定的である可能性が高いことから、連邦参事会はその適用を無期限に延期することを決定しました。しかしながら、連邦財務省は、第2の柱に関する国際的な動向を引き続き注意深く監視する予定です。
多くのMNEグループにとって、この決定は歓迎されるものとなるでしょう。特に、スイスに本社を置き、IIR(およびUTPR)を適用する国・地域に構成事業体を持つMNEグループは、今回の進展を高く評価すると考えられます。これにより、複数の国々での税務手続きに関与することなく、第2の柱のコンプライアンス義務の大部分をスイス国内において履行できるようになるためです。
EY税理士法人
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
工藤 保浩 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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第2の柱のイニシアチブの導入に関するスイスのアプローチは、世界の課税環境において独特な道筋を示しています。スイスのモデルは、税収の保護と外国での税務手続きから企業保護のバランスを取っており、世界の実施状況が断片的な状況である限り、海外の特定の軽課税構造を維持する機会を保持しています。今後、スイス国内で事業を行う企業は、影響分析を行うことを強くお勧めします。
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