EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2024年10月23日と24日、ワシントンD.C.でG20財務大臣および中央銀行総裁会議が開催されました。同会議は、経済協力開発機構(OECD)/G20包摂的枠組みの「税源浸食と利益移転(BEPS)2.0プロジェクト」に関する2021年10月の声明に対するG20財務大臣の強い決意を再確認し、すべての関係国・地域による迅速な実施を促すコミュニケで締めくくられました。
また、G20財務大臣は、21世紀にふさわしい、より公平で包摂性に富み、安定かつ効率的な国際課税システムの構築に向けた取り組みへの強い決意を表明しました。コミュニケでは、税の透明性と、超富裕層の個人への効果的な課税に関する国際的な対話の促進への取り組みを再確認し、国内の格差を是正し、持続可能な開発目標(SDGs)を達成する上での累進的な課税の重要性を強調しています。
同会議に先立ち、OECDは「OECD事務総長によるG20財務大臣・中央銀行総裁宛ての税務報告書」を発表しました。本報告書では、BEPS2.0プロジェクト、税の透明性、キャパシティ・ビルディングの取り組みに関する進行中の作業など、G20の国際課税アジェンダに関する活動の最新状況が報告されています。
ブラジル大統領の主宰による第4回G20財務大臣・中央銀行総裁会議が、2024年10月23日と24日にワシントンD.C.で開催されました。同会議の閉幕にあたり、国際的な税務協力と累進課税に対するG20の継続的な取り組みを強調するコミュニケが発表されました。
同コミュニケは、BEPSに関するOECD/G20包摂的枠組みと第1の柱および第2の柱に対するG20の強い決意を以下のように再確認しています。
32. OECD/G20「BEPS包摂的枠組み(IF)」は、過去10年にわたり、国際租税協力の可能性を示してきた。我々は、IFにおける二本の柱の解決策に関する進展を歓迎し、IFの2021年10月の声明と、すべての関心を持つ法域による二本の柱の解決策の迅速な実施に対する我々のコミットメントを改めて表明する。可能な限り早期に多数国間条約(MLC)の最終化と署名開放を可能にするため、我々はIF加盟国・地域に、利益Bの枠組みに関する残る論点を解決することにより、第一の柱に関する最終パッケージの交渉を迅速に妥結することを奨励する。我々は、MLCの導入と執行を円滑に進めるため、IFに技術的作業を加速するよう求める。第二の柱に関して、我々は、9月19日の租税条約上の最低課税ルール(STTR)の最初の署名式を、重要なマイルストーンとして歓迎する。我々は、共通アプローチとしてのGloBEルールの進捗を歓迎するとともに、同ルールを実施する国同士の協調を確保するための現在進行中の作業を引き続き支援していく。
また、同コミュニケでは累進的な課税に対するG20の関心も以下のように強調されています。
30. 累進的な課税は、国内の格差を是正し、財政の持続可能性を強化し、財政健全化を促し、SSBIGを促進し、SDGsの達成を促す重要な手段の一つである。国際租税協力は、国内の状況、ニーズ、優先順位を考慮するとともに、各国が実現可能と考える手段の採用および実施に係る各国の主権を尊重しつつ、ベストプラクティスを奨励し、国内の税務行政能力を向上させ、各国の税制改革を支援し、税の透明性を強化し、国内の所得と富の分配を含む累進的な課税を効果的に実施するための各国の取組を強化するための基礎である。幅広い課税ベースと効果的な執行が累進課税制度の基礎である。我々は、2024年7月25日に承認された、我々の画期的な成果たる「国際租税協力に関するG20リオデジャネイロ閣僚宣言」に沿って、21世紀にふさわしい、より公正で包摂的で安定的かつ効率的な国際課税制度を目指し、引き続き協力するとともに、税の透明性への我々のコミットメントを再確認し、超富裕層の個人を対象に含む効果的な課税その他の課題に関する国際的な対話を促進する。リオデジャネイロ宣言第13段落に沿って、また、課税主権を完全に尊重しつつ、我々は、超富裕層の個人が効果的に課税されることを確保するために、潜在的な協力分野について議論することを期待するとともに、「BEPS包摂的枠組み」が、効果的な累進課税政策の文脈で、これらの課題への取組みを検討することを引き続き奨励する。
さらに、同コミュニケでは、国連における進行中の税制に関する議論への支持が以下のように表明されています。
我々の国際租税協力は、不要な努力の重複を避けるよう努めつつ、既存の国際フォーラム間の相乗効果を最大化することで、包摂的かつ効果的であるべきであるとともに、幅広いコンセンサスに達することを目指すべきである。また、我々は、国連における、国際租税協力に関する国連枠組条約とその議定書の策定に関する建設的な議論を引き続き奨励する。
事務総長報告書では、第1の柱と第2の柱に関する現在進行中の作業の最新情報が提供されており、45の国・地域がグローバル税源浸食防止(GloBE)ルールに基づくグローバル・ミニマム課税を導入する法律をすでに制定または導入済みであり、さらに16の国・地域が導入に向けて具体的な措置を講じていることが示されています。同報告書によると、2024年末までに、およそ60%の多国籍大企業(MNEs)がグローバル・ミニマム課税の対象となる見込みであり、2025年には90%がその対象となる見通しです。
さらに、同報告書では、第2の柱の構成要素である「租税条約の特典否認ルール(STTR)」に関する進捗に焦点を当て、STTRを実施するためのMLC(STTR MLC)に関するハイレベルの調印式が2024年9月19日にパリで開催され、この式典で9つの国・地域がSTTR MLCに署名し、さらに複数の国・地域が署名の意向を表明したと指摘しています(2024年9月25日付EY Global Tax Alert「OECD holds signing ceremony for the STTR MLI」を参照)。STTR MLCにより、対象支払に対する法人税率が9%未満である加盟国・地域との租税条約にSTTRを含めるよう、包摂的枠組みに属する70以上の新興国加盟国が要請することが可能になります。
同報告書では、包摂的枠組みの加盟国は、第1の柱の下でAmount Aを実施するためのMLCについてほぼ完全な合意に達しており、Amount Bの枠組みに関する残りのギャップの解消に取り組んでいることが示されています。OECDは、今年後半に同機構のウェブサイト上で、Amount Bを適用する国のリストを公表する予定です。
同報告書では、BEPSプロジェクトで策定されたミニマムスタンダードの採用状況について、行動5(有害税制)、行動6(租税条約の濫用防止)、行動13(国別報告書)、行動14(相互協議の効果的実施)に関する簡潔な最新情報が提供されています。
また、同報告書では、170以上の国・地域が参加する「租税に関する透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」による国際的な税務透明性への取り組みの進展についても焦点を当てています。同報告書によると、2023年時点で、126の国・地域が自動的情報交換基準への参加を表明しており、すでに110近くの国・地域が情報交換を実施しています。これにより、総額12兆ユーロに相当する1億3,000万以上の金融口座に関する情報の交換が行われました。同報告書では、新興国は情報の交換から恩恵を受けており、2009年以降、情報の交換により450億ユーロ以上の歳入を確保したとしています。
最後に、同報告書では、BEPSプロジェクトの2015年最終報告書発表から10年が近づく中、包摂的枠組みがBEPSプロジェクトの総括を行い、将来的な展望を検討する予定であることが示されています。2025年初頭に開催される包摂的枠組みの次回の全体会議では、加盟国は将来に向けた議題について検討し、包摂性と包摂的枠組みにおける利害関係者の参加を徹底させるために2024年中に行われた重要な議論を振り返る予定です。
G20のコミュニケは、BEPS2.0プロジェクトの両柱に対する継続的な取り組みと、特に超富裕層への課税や累進課税の実施といった分野における国際的な税務協力の拡大と深化に向けた継続的な取り組みを反映しています。事務総長報告書では、第1の柱と第2の柱における進捗状況と、それぞれの柱における継続中の作業について説明しています。また、同報告書では、透明性の向上に引き続き重点が置かれていることや、格差是正の手段としての税に対する関心が高まっていることなど、その他の分野における取り組みについても言及しています。
企業は、税制改正に備えるため、関連する各国・地域における法改正や提案の動向を今後も引き続き注視する必要があります。また、今後は、新たな重点分野や新たに拡大された重点分野に関する新たな税制議論や、その他の国際的・地域的なフォーラムにおける議論の動向を把握することも重要になるでしょう。
EY税理士法人
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
大堀 秀樹 ディレクター
※所属・役職は記事公開当時のものです
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