EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2024年10月30日および31日、欧州委員会はEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に関する2つの実施規則案を発表しました。これらはそれぞれ、CBAM申告者としての認可申請およびCBAM登録簿の設置に関するものです。CBAMの完全な実施には、両方の実施規則が必要です。CBAM申告者の認定に関する規則案では、EUにおけるCBAM申告者の認可に関する主要な手続きと条件が定められており、CBAM登録簿が2026年1月1日までに運用を開始できるよう、ITシステム開発に十分な時間を確保できるように2024年12月24日から適用される予定です。
関心のある企業は、EUの「Have Your Say」プラットフォームを通じて、それぞれ11月27日および28日までにコメントを提出する必要があります。
2024年10月30日、欧州委員会は認可CBAM申告者になるための申請に関する実施規則案を公表しました。この規則案は、輸入者であるか非居住輸入者の間接代表者であるかを問わず、全てのCBAM申告者にとって重要であり、これらの当事者がCBAM申告者の認可を申請し維持するために満たすべき条件が定義されています。この協議に関するフィードバックの締め切りは2024年11月27日です。
この実施規則案には、委員会、加盟国の所轄当局および申請者が満たすべき手続きおよび基準が以下のように示されています。
申請プロセスとタイミング:申請は申請者が所在する加盟国内で電子的に提出されます。管轄当局は、申請を受理してから120日以内1に申請を評価します。評価には協議フェーズが含まれ、ここで委員会および他の加盟国(両者を合わせて〈協議当事者〉)が評価に関して意見を提示する機会が設けられます。最終決定はCBAM登録簿で通知されます。
評価基準:申請者はCBAM規則に概説されている基準2に従って評価されます。この基準には、申請者がEUの経済事業者登録および識別(EORI)番号を有しているか、申請が所在する加盟国で提出されているか、申請者に過去5年間においてCBAM規則に関連する関税法、税法などに対して重大または反復的な違反がないか、そしてCBAM規則の下で義務を果たすための財務的および業務上の能力を有しているか、などが含まれます。
財務および業務の能力に関する条件:申請者は次の4つの条件を満たす必要があります。
管轄当局は、申請の一環として、輸入量の見積もりや年間CBAM証明書の義務などの追加的な要素も評価します。
保証金:申請時点において設立されてから2会計年度未満の申請者は3、CBAM登録簿に記録されるために保証金が必要となります。CBAM規則に従い4、管轄当局が保証金額を決定します。申告者が、保証金がCBAM証明書の数を十分にカバーしていることを監視し、確認する責任を負います。
再評価、取消および意見申し立ての権利:管轄当局は、認可された申告者の遵守状況を監視し、特定の状況において認可のステータスを再評価することができます。申告者が不遵守であることが判明した場合、CBAM証明書の計算および提出における不十分な手続き、故意または過失による行為などの基準に基づいて、管轄当局は認可を取り消すことができます。申請プロセスと同様に、取消プロセスには協議期間が設けられており、その後、申告者は認可が取り消される前に意見を申し立てる権利を行使することができます。また、申告者自身が取消プロセスを開始することも可能です。いずれの場合も、実施規則において、従う必要のあるCBAM遵守要件が定められています。
2024年10月31日、欧州委員会はCBAM登録簿の設置に関する実施規則案を発表しました。この登録簿は、関連する全当事者がCBAMの遵守および報告の義務のためのハブとなり、以下の指定されたポータルへのアクセスを提供します:
これらのポータルは、EORIシステム、欧州連合統合関税率表(TARIC)、各国の税関データシステムなど、多くの既存のEUシステムと相互に連携されます。
登録簿に保存される全ての情報は機密と見なされ、データアクセスに関するパラメーターが定義されています。これらのパラメーターには、自己の個人データにアクセスできる権利を有する認可CBAM申告者、ならびに申告者にアクセス権を付与した運用事業者によって登録されたデータなどが含まれます。
欧州委員会は受理したコメントをレビューした後、必要に応じて実施規則案に変更を加え、2024年末までに採択する予定です。
影響を受ける企業は、以下の対応を検討することが望まれます:
脚注
EY税理士法人
上田 理恵子 パートナー
大平 洋一 パートナー
岡田 力 パートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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世界各国において持続可能な経済成長を志向する中で、主要な国や地域では脱炭素化に向けた新たな租税制度を採用しています。 CBAMとは、欧州連合(EU)および英国で導入・検討される炭素国境調整メカニズムで、域外からの特定の輸入産品に対してその製品が含有する炭素排出量の報告とそれに応じた価格調整のための課徴金を課す制度のことです。 EYは、企業が直面するCBAM上の課題に対して、環境・税務の専門家集団によるアドバイザリーやコンプライアンス支援を提供することで、サプライチェーンにおける効率的な管理をサポートします。
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