戦略分野国内生産促進税制 事業適応計画の承認申請様式を公表

令和6年度税制改正で創設された戦略分野国内生産促進税制について、関係省令等が令和7年3月25日に交付・施行されました。

戦略分野国内生産促進税制とは、青色申告書を提出する法人で、改正産業競争力強化法の施行の日(令和6年9月2日)から令和9年3月31日までの間に産業競争力強化法の認定に係る認定事業適応事業者であるものが、その認定事業適応計画に記載された電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ半導体)の生産をするための設備の新設又は増設をする場合に、その新設又は増設に係る機械その他の減価償却資産の取得等をして、その法人の事業の用に供したときは、その事業の用に供した日からその認定の日以後10年を経過する日までの期間内の日を含む各事業年度において、その機械その他の減価償却資産により生産された商品のうち、その期間に販売されたものの数量等に応じた一定の金額が税額控除されるというものです。

租税特別措置法の税額控除制度は、従来、初期投資としての設備投資額に対する一定の割合を税額控除する方式が一般的でしたが、本制度は生産段階のコストが大きい点に着目し、対象設備によって生産・販売された商品の数量に応じて税額控除する制度となっています。

戦略分野国内生産促進税制

出典:経済産業省「戦略分野国内生産促進税制」、https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/senryaku_zeisei.html(2025年3月27日アクセス)

令和6年9月2日の改正産業競争力強化法の施行により租税特別措置法の適用は開始されていましたが、事業適応計画の申請様式や計画認定の基準が明らかにされていなかったことから、今まで事業適応計画の申請を行うことができませんでした。この度、以下の関係省令等が公布されたことにより、申請可能な状態となりました。

  • 租税特別措置法施行規則の一部改正
  • 産業競争力強化法施行規則の一部改正
  • 事業適応の実施に関する指針の一部改正
  • 産業競争力基盤強化商品に関する省令
  • 我が国産業の基盤強化に特に資することその他主務大臣が定める基準
  • 以下の事業分野別実施指針の改正
    • 半導体産業の事業適応の実施に関する指針
    • 石油精製業の事業適応の実施に関する指針
    • 金属産業の事業適応の実施に関する指針
    • 自動車産業の事業適応の実施に関する指針
    • 化学産業の事業適応の実施に関する指針

事業分野別実施指針では、それぞれの産業に応じた要件が掲げられているため、事業適応計画の認定を受けようとする場合は個々に確認する必要があります。

例えば新規(初期)投資額の一例を示すと以下の通りです。

半導体産業

石油精製業

金属産業

自動車産業

化学産業

新規(初期)投資額

50億円以上

500億円以上

120億円以上

15億円以上

30億円以上

上記以外にも、生産数量・生産能力の目標、カーボンニュートラルへの取り組み、付加価値率の向上、サプライチェーンの競争力強化の取り組みなど、要件は複数定められています。

その他、本税制の適用に当たっては、以下のポイントもあり、設備投資の時期とその設備による販売計画なども見据えた上で、事業適応計画の認定を受ける必要があると考えられます。

  • 事業適応計画の認定は令和9年3月31日までの間に受ける必要があること
  • 新規投資は改正産業競争力強化法の施行日以後における取締役会等の決議によるものであること
  • 税制の適用期間は事業適応計画の認定の日以後10年を経過する日までの期間内の日を含む各事業年度であること(10年のスタートが生産及び販売開始の日ではないこと)

本税制は最大10年間という長い期間にわたって利用することが可能な制度です。非常に高い効果が見込まれるため、明らかとなった事業適応計画の認定条件を踏まえて、申請を行う前に税額控除の効果を最大限享受できる計画になっているか、社内の関係各部署とも入念な打ち合わせを行うことが重要です。

本税制の適用に関するお問い合わせは以下までお願い致します。
 

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EY税理士法人

矢嶋 学 パートナー

※所属・役職は記事公開当時のものです