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2025年9月16日、米国通商代表部(USTR)は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の発効6年目の初めてのレビューに向けた公開プロセスを正式に開始しました。この公開プロセスは、北米3カ国間の年間約1兆3,000億米ドルの貿易を管理するUSMCAの運用、効果、そして今後の方向性について、さまざまな業界の利害関係者が意見を述べる重要な機会となります。
USMCAは、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる協定として、2020年7月1日に発効しました。USMCAの重要な特徴の1つは、第34.7条に基づき義務付けられたレビューメカニズムです。加盟国はこれにより、6年ごとに協定の運用状況と成果を共同で検証することが義務付けられています。初回のレビューは2026年7月1日に実施される予定です。米国、カナダ、メキシコは2026年6月1日までに共同レビューに向けた提言を提出しなければなりません。
USMCA実施法は、レビュー関連の活動について、タイムリーな議会報告と一般への通知を義務付けています。より具体的には、実施法はUSTRに対し、パブリックコメント期間を設けて公開ヒアリングを開催し、利害関係者がUSMCAの運用に関する意見を述べる機会を提供するよう求めています。9月16日のUSTRによる発表は、この義務付けられたプロセスを正式に開始するものです。関係者からの意見は、今後カナダおよびメキシコと行う正式なレビューに向け、米国政府のアプローチを形成する参考となります。
USTRの通知では、2020年7月1日の発効以降生じたUSMCAの機能に関連する多くの問題についてコメントを募集しています。これには以下が含まれます。
パブリックコメントの受け付けは9月17日に開始し、締め切りは11月1日です。
利害関係者が書面による意見を提出できる機会に加え、USTRは11月17日よりワシントンD.C.の国際貿易委員会(ITC)で公開ヒアリングを開催します。USTRは、必要に応じて公開ヒアリングを翌営業日も継続するとしています。公開ヒアリングでの証言を希望する関係者は、11月1日までに出席申請書および証言要旨を提出する必要があります。
6年ごとのUSMCAレビューは、北米経済統合を強化する機会であると同時に、継続する課題または新たな課題に対処する重要な機会でもあります。北米のサプライチェーン、国境を越えたデータフロー、または規制の整合性に依存する企業や組織は、このプロセスを協定の将来を積極的に形作る機会と捉えるべきです。一方で、このプロセスへの参加を怠れば、事業機会の喪失、そして特定セクターの現実やニーズを反映しない政策が進められる可能性があります。
北米貿易に関心を持つ利害関係者は、USMCA発効以降の自社の経験を振り返り、優先事項が適切に反映されるよう、個人または業界団体・連合を通じて公開プロセスへの関与を検討すべきです。関係者は、障壁や成功事例、協定が期待を下回ったまたは上回った分野を特定し、書面によるコメントや証言を裏付けるデータまたは事例を収集することが望まれます。
USTRによるUSMCAレビュー公開プロセスの開始は、北米貿易政策における重要な時期の幕開けを意味します。この協定が米国、メキシコ、カナダ全体で経済成長、イノベーション、繁栄の共有を確実に促進し続けるためには、全ての利害関係者による積極的かつ情報に基づいた参加が不可欠です。
プロセスの進展に応じて、追加の情報が提供される予定です。さらなる詳細または提出用コメント作成に関するサポートについては、EYまでお問い合わせください。
USTRによるコメント募集および公開ヒアリングの通知は こちらでご覧いただけます。
EY税理士法人
大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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