最新法令等紹介―金融商品取引法施行令の一部改正案、企業内容等の開示に関する内閣府令の一部改正案、令和7年保険業法改正に係る内閣府令等の改正案

今回ご紹介する法改正は、①金融商品取引法施行令の一部改正案、②企業内容等の開示に関する内閣府令の一部改正案、及び、③令和7年保険業法改正に係る保険業法施行規則等の改正案です。


1. 金融商品取引法施行令の一部改正案

2025年12月26日、金融庁は「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」を公表し、2026年1月30日までの期間においてパブリックコメントを募集しました。本改正の内容は、①有価証券とみなさない特定信託受益権の範囲の拡大等、②インサイダー取引規制における「親会社」の定義の見直し、の2点です。


(1)有価証券とみなさない特定信託受益権の範囲の拡大等

金融商品取引法において、信託受益権については「みなし有価証券」として規制の対象となるのが原則ですが、有価証券とみなさなくても公益又は投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」と言います)上の「特定信託受益権」は例外的に規制の対象外とされています。

この「特定信託受益権」は、いわゆるステーブルコインにおける電子決済手段の一つとして法制化されたものであるところ、現行法においては、特定信託受益権に係る信託の受託者が受け入れた金銭の全額を預貯金により管理することが求められており、その他の債券により運用することは認められていませんでした。これについて、受託者の受け入れた金銭の運用の柔軟化を図り、特定信託受益権の発行を促進する趣旨で、資金決済法が改正され(資金決済に関する法律の一部を改正する法律。令和7年法律第66号)、特定信託受益権の発行額のうち一定の割合を上限、一定の要件を満たす国債等の債券による運用が可能となる形で「特定信託受益権」の定義が変更されました。

今回の改正は、改正後の「特定信託受益権」について、上記の資金決済法改正と平仄を合わせる形でみなし有価証券としての規制の対象から外すことにより、特定信託受益権の発行を金融商品取引法の制度面からも後押しすることを意図したものと考えられます。


(2)インサイダー取引規制における「親会社」の定義の見直し

インサイダー取引規制においては、上場会社等の役職員のみならず、その親会社の会社関係者についても規制の対象となります。この点、現行の金融商品取引法においては、「親会社」の定義については直近の有価証券報告書等に「親会社」として記載されていた会社と定義され、また有価証券報告書等に記載されるべき「親会社」は、「会社の意思決定機関を支配している会社」とされています。

しかし、有価証券報告書等における記載を前提とした上記の「親会社」の定義については、以下の問題点が指摘されていました(金融審議会 市場制度ワーキング・グループ報告:2025年12月26日)。

  • 有価証券報告書等の提出後に支配の獲得があった場合にそれが反映されないため、支配を獲得した会社の関係者は、次回の有価証券報告書等の提出まで規制の対象とならない。
  • 公開買付者が有価証券報告書提出会社でない場合、当該公開買付者の実質的な支配会社が上場会社であっても「親会社」として記載される文書がないため、インサイダー取引規制の解除措置として法定されている、公開買付者が「親会社」である上場会社に要請して適時開示を行わせる公開買付け等事実の公表方法が利用されない。

そこで、改正案においては、「親会社」の定義について、有価証券報告書等における記載に依拠せず「他の会社の意思決定機関を支配している会社」とすることが提案されています。


2. 企業内容等の開示に関する内閣府令の一部改正案

金融庁は2025年11月26日、企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」と言います)の改正案を公表し、2025年12月26日までの期間においてパブリックコメントを募集しました。本改正は、2025年7月17日に公表された「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」において示された方針を踏まえ、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が策定する開示基準(以下「SSBJ基準」と言います)を有価証券報告書等における法定開示に導入することを主眼としています。サステナビリティ開示基準関連の主な改正ポイントは以下のとおりです。


(1)SSBJ基準の適用とその開始時期

東京証券取引所プライム市場に上場する会社のうち、平均時価総額(原則として、有価証券報告書の対象事業年度の前5事業年度の各末日における時価総額の平均値を言います)が1兆円以上である会社を対象に、SSBJ基準に従って、有価証券報告書等の記載事項のうちサステナビリティ関連記載事項を記載することが義務付けられます。

この点、SSBJ基準の導入初期における企業の負担や実務的な準備期間を考慮し、段階的な適用開始や柔軟な開示方法について想定されています。


段階的な適用開始

SSBJ基準の適用については、平均時価総額3兆円を分岐点として、開始時期に差が設けられています。

すなわち、2026年3月31日を基準として、平均時価総額が3兆円以上である会社については、2027年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からSSBJ基準が適用されることになります。したがって、3月末日に事業年度末を迎える平均時価総額3兆円以上の会社については、2027年3月期に係る有価証券報告書等からSSBJ基準が適用されます。

一方、2026年3月31日基準の平均時価総額が3兆円未満(1兆円以上)である会社については、2027年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からSSBJ基準が適用されることになります。3月末日に事業年度末を迎える会社を例にすれば、平均時価総額が3兆円未満の会社については、SSBJ基準が適用されるのは3兆円以上の会社から1年遅れて2028年3月期に係る有価証券報告書等からSSBJ基準が適用されることになります。


柔軟な開示方法(二段階開示)

SSBJ基準が初めて適用される年度及びその翌年度においては、有価証券報告書の提出時点ではSSBJ基準に基づく詳細な記載を行わず、各翌期における半期報告書の提出期限までに訂正報告書として後日詳細を記載し提出することで対応することが可能です。


(2)SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加

SSBJ基準が適用される会社においては、SSBJ基準上開示が求められる事項のほか、SSBJ基準に準拠している旨、二段階開示やSSBJ基準上の経過措置の適用状況について記載が求められます。

また、将来情報やScope3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、推論過程等に関する記載及びこれらの情報に係る社内の開示手続の記載が求められます。


(3)Scope3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルールの整備

サステナビリティ情報については将来予測や見積もりの要素の強い情報も含まれるところ、企業が委縮せずに積極的な開示を行えるよう、有価証券報告書等における虚偽記載の責任を負う懸念を軽減するためのセーフハーバー・ルールが設けられる予定です。

具体的には、企業内容等開示ガイドラインにおいて、Scope3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、有価証券報告書等に記載した将来情報と実際に生じた結果との間に差異がある場合であっても、重要な事項について一般的に合理的と考えられる範囲で具体的な説明が記載されている場合には、虚偽記載等の責任を負うものではないと規定される予定です。


3. 令和7年保険業法改正に係る内閣府令等の改正案

保険金不正請求事案や保険料調整行為事案等、近時の損害保険業界において相次いで発覚した不祥事を契機として、2025年5月30日、保険業法の一部を改正する法律案が国会で可決・成立し、2026年8月1日の施行が予定されています。そして、金融庁は今回の保険業法改正に関係する各種規定の整備を行う趣旨で、2025年12月17日に保険業法改正に係る内閣府令(案)等を公表し、2026年1月30日までパブリックコメントを募集しました(同様の趣旨で、金融庁は2025年12月17日に「保険会社向けの総合的な監督指針」等を公表するとともに、同月19日には保険業法改正に係る政令を公布していますが、本記事においては割愛いたします)。主な改正ポイントは以下のとおりです。


(1)「特定大規模乗合保険募集人」の定義と体制整備義務

損害保険代理店のうち、複数の保険会社の商品を扱い規模の大きい代理店(原則として、所属保険会社等から保険募集業務に関して受領した手数料等が20億円以上の代理店)については「特定大規模乗合保険募集人」として、以下の体制整備措置をとることが義務付けられることとなりました。

  • 営業所又は事業所ごとに、役職員が法令等を遵守して保険募集業務を実施するため必要な助言・指導を行う者を設置すること
  • 本店又は主たる事務所において、上記の助言・指導を行う者の指揮等を行う者を設置すること
  • 保険募集以外の業務に係る苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために必要な措置(原因究明、改善措置、苦情受付窓口の設置等)


(2)兼業業務に関する監視体制

また、上記(1)の「特定大規模乗合保険募集人」のうち、「兼業特定保険募集人」にも該当する場合は、以下の体制整備措置をとることが義務付けられることとなりました。

  • 保険募集業務以外の業務(自動車修理業等)を兼業している場合に、保険関連業務における顧客の利益が不当に害されることを防止するための必要な措置(当該業務に関する監視、責任者の設置、社内規則等の整備、記録の保存等)
  • 保険募集以外の業務に係る苦情の適切かつ迅速な処理を確保するために必要な措置(原因究明、改善措置、苦情受付窓口の設置等)
  • その他、顧客への情報提供等に関する指針の制定・公表、内部監査体制の整備、内部通報への体制整備等


(3)委託元の保険会社による監督の強化

特定大規模乗合保険募集人に対して業務を委託する保険会社についても、保険募集業務の委託に関して方針を定めるとともに、業務の適切な運営を確保するため法令遵守状況を検証するための責任者を設置することが義務付けられることとなりました。


(4)便宜供与の禁止範囲の拡大

現行法においては、保険契約者又は被保険者に対して、保険料の割引きや割戻しその他特別の利益を提供する行為が禁止されていましたが、今回の改正により、保険契約者又は被保険者の役職員や親子会社といった、保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者に対する行為、及び、物品の購入や役務の提供等の取引で取引上の社会通念に照らし相当であると認められない行為についても便宜供与として禁止行為に追加されることとなりました。


(5)比較推奨販売に関する改正

現行法上、乗合保険募集人に認められている比較推奨販売として、複数の保険会社の商品を比較して提案する方法と、比較選別しないで提案する方法が一定の要件の下でいずれも認められていましたが、今回の改正により、複数の保険会社の商品を比較選別しないで提案する方法は今後認められないこととなりました。


お問い合わせ先

EY弁護士法人

津曲 貴裕 パートナー

※所属・役職は記事公開当時のものです