最新法令等紹介―AI事業者ガイドライン(第1.2版)の公表、令和7年保険業法の改正、他

今回紹介する法改正案等は、①AI事業者ガイドライン(第1.2版)の公表、②令和7年保険業法の改正、③法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会第12回会議(令和8年3月18日開催)における、「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」、④「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」、⑤コーポレートガバナンス・コード改定案です。

1. AI事業者ガイドライン(第1.2版)の公表

総務省・経産省は、令和8年3月31日、AI事業者ガイドラインの第1.2版を公表しました。第1.1版からの変更点としては、AIエージェント(特定の目的を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム)やフィジカルAI(センサ等によるセンシングを通じて物理環境の情報を取り込み、AIモデルによる処理を経て、設定された目的を達成するための最適な方策を自律的に推論・判断し、アクチュエータ[駆動系]等を介して物理的な行動へとつなげるシステムであり、サイバー空間での処理にとどまらず、現実世界に対して直接的な働きかけ[移動、操作、加工など]を行うことを特徴とするもの)に関する事項の追加や、全てのAI関係者が準拠すべき指針として、広島AIプロセス「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」に関する事項の追記が挙げられます。

2. 令和7年保険業法の改正

令和8年6月1日より、改正保険業法が施行されます。主な改正の内容としては、以下が挙げられます。


(1)特定大規模乗合保険募集人(特定大規模乗合生命保険募集人及び特定大規模乗合損害保険代理店をいう)に対する体制整備義務の強化(保険募集の業務関連)

  • 特定大規模乗合保険募集人の要件の規定
  • 営業所又は事務所ごとの法令等順守責任者の設置
  • 本店又は主たる事務所への法令等順守責任者を指揮する者(統括責任者)の設置
  • 苦情処理体制の整備


(2)特定大規模乗合損害保険代理店に対する体制整備義務の強化(兼業業務関連)

  • 対象となる特定大規模乗合損害保険代理店
  • 兼業業務に係る体制整備等
  • 苦情処理体制の整備
  • 内部監査・社内通報等に関する体制の整備


(3)保険会社等に対する体制整備義務の強化

  • 特定大規模乗合保険募集人に業務を委託する場合の措置
  • 兼業業務を行う特定保険募集人(兼業特定保険募集人)に関して損害保険会社に求める措置


(4)保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止

  • 保険契約者又は被保険者と密接な関係を有する者を規制対象に拡充


(5)保険仲立人の活用促進に向けた対応等

  • 海外直接付保に関する手続き及び海外直接付保の許可に係る保険媒介における保険仲立人の活用
  • 保険仲立人の不祥事件の届出義務の新設に伴う届出事項等の整備

3. 「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」

法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会第12回会議(令和8年3月18日開催)において、「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」が取りまとめられました。主に以下の内容につき議論がなされています。


(1)株式の発行の在り方に関する規律の見直し

  • 株式の無償交付の対象範囲の見直し
  • 株式交付制度の見直し
  • 現物出資制度の見直し


(2)株主総会の在り方に関する規律の見直し

  • バーチャル株主総会及びバーチャル債権者集会に関する規定の検討
  • 実質株主確認制度
  • 株主総会のデジタル化に関する検討
  • 「会議体」としての株主総会等に関する規律の見直し
  • 株主提案権に関する規律の見直し


(3)企業統治の在り方に関する規律及びその他の規律の見直し

  • 指名委員会等設置会社制度の見直し
  • 責任限定契約制度の見直し
  • 事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化

4. 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」

デジタル技術の急速な進展に伴い、個人情報を含むデータの利活用に対する需要が高まっている一方で、個人情報の違法な取扱いにより個人の権利利益が侵害されるリスクも高まっていることを踏まえ、個人情報の有用性に配慮しつつ、その一層の保護を図るため、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。概要は以下のとおりとなります。


(1)適正なデータ利活用の推進

  • 個人データ等の第三者提供について、統計情報等の作成にのみ利用される場合は本人同意を不要とする
  • 目的外利用、要配慮個人情報取得及び第三者提供に関する規制について、学術研究例外の対象である「学術研究機関等」に、医療の提供を目的とする機関又は団体が含まれることを明示する等


(2)リスクに適切に対応した規律

  • 16歳未満の者が本人である場合、同意取得や通知等について当該本人の法定代理人を対象とすることを明文化
  • 顔特徴データ等について、取扱いに関する一定の事項の周知を義務化し、利用停止等請求の要件を緩和するとともに、オプトアウト制度に基づく第三者提供を禁止する等


(3)不適正利用等防止

  • 個人情報ではないが、特定の個人に対する働きかけが可能となる情報について、不適正利用及び不正取得を禁止する
  • オプトアウト制度について、提供先の身元及び利用目的の確認を義務化する


(4)規律遵守の実効性確保のための規律

  • 重大な違反行為により個人の権利利益が侵害された場合等について、当該違反行為によって得られた財産的利益等に相当する額の課徴金の納付を命ずる等

5. コーポレートガバナンス・コードの改定案

金融庁及び東京証券取引所では、2026年4月10日、コーポレートガバナンス・コードの改訂案を取りまとめ、パブリックコメントの募集を開始しました。改訂の主な内容は以下のとおりとなります。


(1)成長投資の促進

取締役会の役割・責務として、成長投資等に向けた取り組みの重要性を明記しています。例として、①会社の目指すところに向けた成長の道筋を構築すべきこと、②成長実現に向けた投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し等に係る経営資源の配分に関し具体的に何を実行するのかを説明すべきこと、③自社の経営資源の配分が、成長の実現を目指して策定・公表した経営戦略や経営計画に照らし適切なものとなっているかについて不断に検証を行うべきであること、が挙げられています。


(2)取締役会の機能強化

独立社外取締役の主たる役割・責務である監督機能をより効果的に果たすための環境が整いつつあることも踏まえ、特に独立社外取締役の実効性確保の重要性を強調しています。また、議長や独立社外取締役を含めた取締役を支援する重要な役割を果たす事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化を推進すべき旨も追記されています。


(3)有価証券報告書の定時株主総会前の開示

有価証券報告書には投資家の意思決定に有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれているため、本コード改定案の原則において、有価証券報告書を株主総会前に提出することを、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として記載しています。その際、有価証券報告書は株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましく、選択肢として株主総会の開催時期の後ろ倒しも含めて検討することが考えられる旨も同原則の解釈指針で補足しています。


上場会社は、遅くとも2027年7月までに、改訂コードに関する事項について記載したコーポレートガバナンス報告書を提出するよう求められる見込みであり、これらの提出時期については、東京証券取引所において具体的に検討が行われる、とされています。


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津曲 貴裕 パートナー

※所属・役職は記事公開当時のものです