日本の新規上場動向 - 2024年1月~12月

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
シニアマネージャー 税理士 左近司 涼子


1. 新規上場市場の概況

2024年1月~12月の国内株式市場は、年明け日経平均株価終値33,288円でスタートし、日米金利差などによる円安基調などの影響を受け上昇を続け2月には1989年末につけた最高値を(38,915円)を34年ぶりに更新し、7月11日には最高値42,426円を記録し、その後も一時下降傾向になりながらもその後回復し12月最終日終値は39,894円となりました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、136社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)となりました。前年同期(2023年1月~12月)と比較した場合8社増となっており、要因としてはTOKYO PRO Marketの18社増があげられます。市場別に見ると、全体の47.1%にあたる64社が東証グロースに上場し、新興市場合計で全体の87.5%を占めています(表1)。

表1  最近5年間(1月~12月)の市場別新規上場企業数

表1  最近5年間(1月~12月)の市場別新規上場企業数

(注1)東証(1部、2部、マザーズ、JASDAQスタンダード)及び名証セントレックスについては2022年1月から4月3日の実績となっています。
(注2)期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注3)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

2. 新規上場企業データの分析

業種別では、サービス業40社(昨年同期34社)、情報・通信業35社(昨年同期48社)、となっており、それぞれ新規上場企業全体の29.4%及び25.7%を占め、他の業種社数との開きが昨年同様に見られます。(表2)。

表2  2024年(1月~12月)の業種別新規上場企業数

表2  2024年(1月~12月)の業種別新規上場企業数

本社所在地別では、全体の62.5%にあたる85社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です(表3)。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。

表3 2024年(1月~12月)の地域別新規上場企業数

表3  2024年(1月~12月)の地域別新規上場企業数

赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)数はプライムに上場した1社、グロースに上場した20社、TOKYO PRO Marketに上場した6社ありました。またTOKYO PRO Marketを除いた新規上場企業においては、初値が公募価格を下回った会社は19社ありました。

直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が29社(21.3%)、10億円以上50億円未満の企業が69社(50.7%)であり、全体の約7割程度を売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています(図1)。売上高が200億円を超える新規上場企業は、東証プライム4社、東証スタンダード4社、東証グロース3社の合計11社となっています。

図1  2024年(1月~12月)新規上場企業・直前期売上高

図1  2024年(1月~12月)新規上場企業・直前期売上高

初値時価総額の分布を見ると、50億円未満の企業が75社(55.1%)、50億円以上100億円未満の企業が19社(14.0%)であり、全体の約7割程度を占めています。500億円を超えた企業は10社(7.4%)あり、昨年同期(12社、9.4%)と比較して減少しています(図2)。なお、初値時価総額が最も高かったのは、株式会社東京地下鉄の9,470億円でした。東証スタンダード市場及び東証グロース市場の平均初値時価総額は211億円と、前年同期の216億円と比較してわずかに減少しました。

図2  2024年(1月~12月)新規上場企業・初値時価総額

図2  2024年(1月~12月)新規上場企業・初値時価総額

監査法人別では、EY新日本有限責任監査法人13社(9.6%)、有限責任監査法人トーマツ10社(7.4%)、有限責任あずざ監査法人10社(7.4%)、となり3法人合計で全体の1/4程度で、中小規模等のその他の監査法人の割合が増加しており、新規上場において担う役割が大きくなってきていることがうかがえます(表4)。

表4  2021年~2024年月の監査法人別新規上場企業数

表4  2021年~2024年月の監査法人別新規上場企業数