EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
「人的資本経営」への関心が高まっている。従来はESG(環境・社会・企業統治)の観点から投資家向けに訴求する意味合いが強かったが、最近では人手不足対策としても重要視されるようになり、その位置付けが変化してきた。速やかな人材確保のためにM&Aを選ぶケースも増えてきた。人的資本経営の向上につなげたM&A事例から、その背景や効果についてEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社トランザクション・アンド・コーポレート・ファイナンス リード・アドバイザリーの七澤氏と石川氏に聞いた。
人口減に加えて少子高齢化が叫ばれて久しいが、状況が反転する気配は見受けられず、労働人材としての生産年齢人口は2050年に総人口の3割以下にまで落ち込むと試算されている(内閣府の「高齢社会白書」より)。特に建設業、医療・福祉業、運輸・郵便業などの一部職種では、有効求人倍率が10倍近くと過去最高水準で推移しており、「人材配置の最適化」と「生産性向上」が事業運営上の重要課題となっている。
上記課題に紐づくM&A事例調査を進める中で、主として人材配置の最適化に資する「アウトソーシング業務の内製化」と生産性向上に資する「高度人材の獲得」に類型化されることが確認された。
アウトソーシング業務の内製化については、従来は業務の繁閑調整を目的にアウトソーシングを戦略的に選択する動きが強かったが、近年は人手不足から外注先確保自体が困難になりつつあることから、むしろ内製化を選好する動きが見受けられる。特に建設・不動産業における人手不足は深刻で、既存人的リソースの配置をより最適化するために、M&Aを通じて管理業務、営業支援業務、システム管理業務などを内製化する事例が散見された。特にシステム管理業務の内製化については、コスト削減や業務効率化という点で一定の成果を得ている事例も確認された。
高度人材の獲得については、データサイエンス、AI・人工知能、あらゆるモノがつながるIoT関連人材などに代表される先端IT(情報技術)人材の獲得を目的としたM&A事例が多く確認された。デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による生産性向上を志向する企業にとって、社内ナレッジ共有・蓄積に加え、急速に進行するテクノロジーの発展に応じたアジャイル開発力の重要性は高まっている。しかしながら、高度人材の育成には相応の時間を要することから、「時間を買う」という側面でM&Aを選択する動きが強まっているものと推察される。
国内の生産年齢人口減に伴う人手不足に加えて、急速に進行するテクノロジーの変容は加速度的に進展する可能性が高いとみられ、企業価値向上のみならず既存事業維持のために、より一層、戦略的な人材管理を通じた必要人材の質と量の適正化を図ることが求められるとみられる。その手段としてのM&A、すなわちアクハイアリングが戦略上重要な選択肢になり得ると考えられる。
以下に記載するEYのWebページでは、具体的なアクハイアリングの事例とその効果をより詳細に分析し、M&Aの取り組みと傾向を読み解いている。主体的かつ戦略的な「人材配置の最適化」を目的としたM&A動向にご関心がある方は、ぜひご一読いただきたい。
著作・制作 日本経済新聞社(2024年日経電子版広告特集)
※2024年5月20日~2024年6月17日に日経電子版にて掲載。文章・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。
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人材管理の戦略的手段の1つとしてM&Aを今後どのように活用していくか
人的資本経営が注目されている近年において、人材に焦点を当てた国内M&A事例を調査することで取り組みの背景や傾向を明らかにします。
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