EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証等に関連したグローバル動向の最新情報を公表しています。
今月号では、カリフォルニア州の気候関連情報開示義務に備えたFAQ公開、IFRS財団のSASBスタンダード適用に関する教育的資料の発表や、欧州のオムニバス簡素化パッケージを取り上げています。EYによるフォーカスでは、米国の「OBBB法案」成立について解説しています。
7月11日、米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、2026年に施行が予定されている「気候企業データ説明責任法(SB 253)」および「気候関連財務リスク法(SB 261)」に基づく、気候関連情報の開示義務に備える企業を支援するための包括的なFAQ(*1)を公開しました。カリフォルニア州で事業を行い、10 億米ドルを超える売上高をあげる企業は、2026 年からスコープ 1 および 2 の温室効果ガス(GHG)排出量を、2027 年からスコープ 3 の排出量を報告することが義務付けられます。さらに、売上高が 5 億米ドルを超える企業は、2026 年 1 月 1 日から 隔年で気候関連財務リスクに関する報告書を開示する必要があります。保証要件は段階的に導入され、2026 年にスコープ 1 および 2 の排出量に対する限定的保証から始まり、2030 年までに合理的保証へと移行します。
7月10日、IFRS財団はIFRS S1号およびIFRS S2号を適用する際の、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)のSASBスタンダード及びIFRS S2号の適用に関する産業別ガイダンスの両方の役割について、企業が理解を深めることを目的とした教育的資料『Using ISSB Industry-based Guidance when applying ISSB Standards(*2)』を公表しました。
7月3日、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、ISSB基準(IFRS S1号およびIFRS S2号)の導入支援を目的とした、SASBスタンダードの2つの修正案を公表(*3)しました。公開草案『SASB スタンダードの修正案』(*4)では、当初優先指定された 9つの産業(「採掘及び鉱物加工」セクターの 8 つすべての産業と「加工食品」産業)について、基準の修正を提案しています。また、水管理などの産業横断的なトピックについて、41 の産業の指標を揃えるための的を絞った修正も提案しています。公開草案『IFRS S2 号の適用に関する産業別ガイダンスの修正案』(*5)は、影響を受ける SASB スタンダードの気候関連ガイダンスに対する修正案と、IFRS S2号の適用に関する産業別ガイダンスとの整合化を提案しています。両公開草案は11 月 30 日まで意見募集を行っています。提案されている発効日は、最終化後12~18か月後とされており、早期適用も認められています。
6月26日、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)は、エネルギー使用と気候変動対策の影響をより適切に反映するため、企業のサステナビリティ情報開示を拡充する気候変動(GRI 102)およびエネルギー(GRI 103)の基準を公表(*6)しました。改訂された基準では、化石燃料の段階的廃止計画、温室効果ガス(GHG)の除去、カーボンクレジットおよびエネルギー転換戦略に関する開示を含む、公正な移行、気候変動への適応および緩和に関する新たな要件が導入されています。この改訂は、気候変動に関する透明性に対する利害関係者の要求の高まりに対応するとともに、IFRS S2号、欧州連合(EU)の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)、科学に基づく目標設定イニシアティブ(SBTi)のネットゼロ基準など、他のフレームワークとの相互運用性を強化するものです。これらの基準は、幅広いステークホルダー間での比較可能性を高め、意思決定に有用な開示を改善することを目的としています。同日、GRI スタンダードの策定および維持を担当する独立機関であるグローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)は、新たに発表した気候変動(GRI 102)基準について、IFRS S2号における温室効果ガス(GHG)排出量部分との同等性を正式に認めたことを公表(*7)しました。これにより、企業はIFRS S2号を使用してスコープ1、2、3のGHG開示を一度に作成することで、GRI および ISSB の開示要件の両方を満たすことができ、報告の効率性とフレームワーク間の整合性が向上します。この要件を満たすには、報告企業は GHG プロトコルに従い、GRI 1:基礎 2021 のGRI対照表(内容索引)要件を満たさなければなりません。この動きは、GRI と ISSB がグローバルなサステナビリティ報告の調和に向けて継続的に協力している中で、大きな一歩となります。
6 月 23 日、IFRS 財団は、IFRS S2号に準拠した移行計画に関する情報を含む気候関連移行開示を支援するための新しい実施ガイダンス(*8)を公表(*9)しました。英国の移行計画タスクフォース(TPT)(*10)のこれまでの作業を踏まえ、この文書は、移行戦略(緩和措置と適応措置の両方を含む)が存在する場合、重要性がある情報を企業がどのように開示すべきかを説明しています。このガイダンスでは、IFRS S2 号は移行計画を義務付けてはいないものの、気候移行(クライメート・トランジション)に関する開示は、企業の将来の見通しに重要な影響を与える場合には必要であることを明確にしています。ISSB 基準を適用する法域は、高品質で国際的に比較可能な報告を支援するために、この文書を利用することが推奨されています。このガイダンスは、既存の IFRS S2 号の要求事項を補完するものであり、修正するものではありません。
6月17日、国際公会計基準審議会(IPSASB)は、気候関連開示基準の草案を、自社の事業に関する開示と公共政策プログラムに関する開示の2つの基準に分けることを決議(*11)しました。この決定は、当初の公開草案「サステナビリティ報告基準(SRS 1)」(*12)に対するフィードバックを受けて、両方の視点を統合することの複雑さや、能力の限られた企業における実施上の懸念が指摘されたことを受けての決定です。改訂されたアプローチは、報告の効率化を図り、「自社の事業」に関する基準を IFRS S2号 により厳密に整合させることを目的としています。IPSASB は、2025 年 12 月までにこの基準を最終決定する予定です。スコープ 3 の経過措置およびGHG プロトコルの使用は、引き続き中心的な特徴となります。公共政策プログラムに関する開示については 、2026 年に検討される予定です。
6 月 13 日、バーゼル銀行監督委員会は、気候関連金融リスクの自主的な開示の枠組みを発表(*13)し、各国が国内での実施方法を柔軟に決定できることを示しました。2023 年の意見募集を経て策定されたこのフレームワークは、ガバナンス、戦略、物理的リスク、移行リスク、資金調達による排出量に関する定性的および定量的開示の概要を示しています。ただし、この枠組みでは、排出量削減の促進に関する開示義務は省略されており、排出量の報告は、重要性がある気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)セクターに限定されています。この開示の自主的な性質は(一部は米国の反対によるものですが)規制の勢いを弱めるとして、市民団体から批判を受けています。委員会は、実施状況をモニタリングし、データ品質や報告基準の進化に応じて、この枠組みを見直す可能性があります。
6 月 12 日、IFRS 財団はISSB 基準の採用状況に関する透明性を向上させるため、17 法域のプロファイル(*14)を公表(*15)しました。このプロファイルは、サステナビリティ開示のグローバルな整合性を支援する取り組みの一環として、各法域が表明した目標(例:完全導入、部分的整合)および現在の規制の枠組みについて詳しく記載したものです。
7月11日、欧州委員会(EC)は、すでに企業のサステナビリティ報告を行っている企業を対象としたESRS の「クイックフィックス」改正案(*16)を採択しました。この改正は、Wave2および3の企業に適用された「ストップ・ザ・クロック」指令(*17)の対象外であったWave1の企業を対象としています。これにより、Wave1の企業は、2024年度と比較して追加情報を報告する必要がなくなります。さらに、従業員数が 750 人以上のWave1の 企業は、2025 年度および 2026 年度について、従業員数が 750 人未満の企業に現在適用されている移行規定の大部分を適用することができるようになります。
6 月 26 日、欧州財務報告諮問グループ (EFRAG) は、IFRS S2号の修正案であるISSBの公開草案「温室効果ガス排出の開示に対する修正」 に対する最終コメントレター(*18)を発表(*19)しました。EFRAG は、このレターの中で、デリバティブ、資金調達による排出量、保険付き排出量の開示の省略などの一時的な緩和措置を支持しています。ただし、これらの措置は、方法論の進化に応じて将来的に再評価の対象となることを条件としています。レターでは、ESRSに基づいて報告を行う企業がISSB基準を使用する際の相互運用可能性の維持を強調し、進展する市場慣行や投資家の期待との整合性を確保するため、定期的な見直しを実施することを推奨しました。
6月25日、英国政府は、サステナビリティに関する3つの意見募集を開始しました。
これら の3 つの意見募集は、英国が持続可能な金融ハブとしての地位を強化すると同時に、EU および世界の保証要件との相互運用性にも取り組むという目標を反映したものです。意見募集はいずれも 9 月 17 日まで実施されています。
6月25日、スイス連邦参事会(内閣)は、企業に対する気候情報開示に関する条例の改定作業を一時停止すると発表(*23)しました。意見募集段階では、改正案は概ね好意的に受け止められていましたが、内閣は3月21日に、サステナビリティ報告に関する規定について、より現実的な代替改正案の策定を求める声明を発表していました。この条例の施行は、EUにおける提案された改正案および規制動向に関するさらなる明確化が得られるまで、当面見送られることとなります。内閣は、EU が簡素化措置を最終決定した後、遅くとも 2026 年早期までに次なる措置を決定する見込みです。これとは別に、内閣は義務規範改正法案の承認を待つ間、企業に対するより広範な気候情報開示プロジェクトも一時停止することを決定しました。この決定は、遅くとも 2027 年 1 月 1 日までに行われると予想されています。
6 月 23 日、EC のオムニバス簡素化パッケージの一環として、EU 理事会は、EU の企業の競争力を強化するためのサステナビリティ報告およびデューディリジェンス要件の合理化に関する交渉委任状を採択(*24)しました。企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の主な改正案には、従業員数のしきい値を 1,000 人に引き上げることにより上場中小企業(SME)を適用対象から除外するとともに、純売上高 4 億 5,000 万ユーロのしきい値が新たに追加されています。企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CS3D)については、理事会案は、従業員数 5,000 人、純売上高 15 億ユーロを新たなしきい値とし、リスクベースのアプローチに基づき、直接のビジネスパートナーに対する義務に限定しています。理事会はまた、気候移行計画の採用義務を2年間延期し、EU全域における民事責任規則の廃止を維持しました。これらの改正は、政策の有効性を維持しつつ、順守負担を軽減することを目的としており、CS3Dの施行は2028年7月26日に延期されました。欧州議会の立場が確定次第、交渉が進められる予定です。
6月19日、EFRAG は、EC のオムニバス簡素化パッケージ(*25)に沿って、ESRS のデータポイントを 5割以上削減する方針を表明した進捗報告書案(*26)を発表しました。この改正案は、企業にとって過度に詳細な定性情報に対する懸念に対応しており、報告企業およびデータ利用者からの証拠に基づいています。EFRAG は、開示の合理化、ダブルマテリアリティ評価の簡素化、および ISSB 基準との整合性の強化を図る予定です。さらに、7 月 2 日、欧州委員会のマリア・ルイス・アルバカーキ委員は、ESRS の簡素化に関する技術的助言の提出期限を 10 月 31 日から 11 月 30 日に延長することを EFRAG に通知(*27)しました。EFRAG のサステナビリティ報告委員会が 7 月末に公開草案を承認した後、EFRAG は、提案されている簡素化について 60 日間の意見募集を開始する予定です。
6月12日、欧州中央銀行(ECB)は、第3回気候関連財務情報開示を発表(*28)し、自然損失に関する新たな指標を導入しました。この指標は、ユーロシステムの保有資産のうち、30% を占める公益事業、食品、不動産など、自然に大きく依存またはインパクトを与えるセクターに対する社債のエクスポージャーを評価するものです。この追加は、ECB が、既存の TCFD 準拠の報告と並行して、生物多様性に関連するリスクの財務的影響を評価する継続的な取り組みを反映したものです。
7 月 8 日、オーストラリアの会計専門家の倫理規程及び職業的専門家としての基準を設定するための独立機関(The Australian Accounting Professional & Ethical Standards Board:APESB)は、会計専門家倫理規程(APES 110)専門職業人倫理規範(独立基準を含む)の改正基準(*29)を公表しました。この改正では、オーストラリアで実施されるサステナビリティ開示・保証業務に適用される新たな倫理および独立性に関する要件が規定されています。これらの規定は、外部専門家を利用する場合も含め、会計専門家に対するガイダンスを提供するとともに、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が策定したサステナビリティ保証に関する国際倫理基準(IESSA)を反映しています。この改正基準は、グループ1企業においては2025年1月1日より開始される、オーストラリアの気候関連財務情報開示およびサステナビリティ報告要件の適用を支援することを目的としています。
6 月 25 日、マレーシアのサステナビリティ報告に関する諮問委員会は、サステナビリティ保証の枠組み案に関する意見募集文書を発表(*30)しました。この意見募集文書は、国際基準の採用、保証提供者の監督、能力要件、およびスケジュールについて取り上げています。意見募集は 8 月 6 日まで行われます。
7月14日、金融安定理事会(FSB)は、G20財務大臣・中央銀行総裁会議で発表した「気候変動に伴う金融リスクに対処するためのFSBロードマップ:2025年アップデート」(*31)を公表(*32)しました。この報告書は、2021年版の当初のロードマップで特定された4つの主要分野(企業情報開示、データ利用可能性、脆弱性分析、規制手段および慣行)における進捗状況を報告しています。G20議長国南アフリカの要請を受けて、FSB は、国際協調の強化、国境を越えた情報共有、金融の脆弱性(特に物理的な気候リスクや保険適用範囲のギャップに関連する脆弱性)の分析の拡大など、中期的な優先事項についても概要を示しました。これらの優先事項は、気候関連金融リスクに関する包括的で、信頼性が高く、比較可能なデータの収集を世界的に推進し、各国の枠組みとシステミックリスクのモニタリング目標との整合性を強化する取り組みが引き続き進められることを示しています。
6月17日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、自然関連データの原則を検証・改良し、提案されている「自然データ・パブリック・ファシリティ」の設計のために情報提供するためのパイロットプログラムを開始(*33)しました。2025年10月まで実施されるこのパイロットプログラムには、60以上の組織が参加し、データ品質の検証や、報告や目標設定などの使用事例における重要なギャップの特定を行います。TNFDは、11月のCOP30で提言を発表する予定です。さらに、6 月 6 日、TNFD は、漁業(*34)、海上輸送、クルーズ船業界(*35)向けの最終的なセクターガイダンスと、海洋測定に関するディスカッションペーパー(*36)を公表(*37)しました。100以上のセクターの利害関係者と共同で作成されたこのガイダンスには、海洋管理協議会(MSC)や科学に基づく目標設定ネットワーク(SBTN)などの主要な基準に準拠した、相互運用可能な指標が盛り込まれて います。海洋測定の課題に関する調査(*38)は10月1日まで実施されており、一貫性のある実行可能な海洋関連指標の開発を支援しています。
6月12日、世界銀行は、途上国における原子力発電プロジェクトの融資禁止措置を解除する政策転換を承認(*39)しました。この措置は、低・中所得国で2035年までに倍増すると見込まれる電力需要の急激な増加に対応するための、改訂版エネルギー戦略と一致しています。世界銀行は、国際原子力機関(IAEA)と協力して原子力の安全性および規制能力の強化に取り組む予定です。ただし、上流の天然ガス融資に関する合意には未だに達しておらず、現在理事会で審議中です。この決定は、2013年と2017年の政策で定められた原子力および上流の化石燃料融資の制限からの転換を意味します。
6月16日、米国証券取引委員会(SEC)は、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関するファンドの開示および株主提案手続の強化に関する規則案を撤回(*40)しました。2022年に公表されたESG規則案は、環境をテーマとするファンドの温室効果ガス排出に関する開示など、ESG投資戦略に関する報告の標準化を目的としていました。2つ目の規則案は、株主提案の提出と再提出に関する閾値の見直しを目的としていました。両イニシアティブは、バイデン政権下で導入された14の規則案の撤回の一環として、新たなSEC委員長ポール・アトキンスの下で取り下げられました。
6月5日、カナダ競争局は、改正競争法における新たなグリーンウォッシュ防止規定の順守を支援するため、環境主張ガイドライン(*41)の最終版を公表(*42)しました。このガイドラインでは、ネットゼロ目標などの将来予測を含むすべての主張は、国際的に認められた方法論に準拠した検証可能な計画によって裏付けられなければならないと規定されています。企業は、製品やサービスの性能に関する主張を実際の試験で裏付け、比較する主張については具体的に開示することが求められます。違反した場合、最大で 1,000 万カナダドルまたは年間グローバル収益の 3% の罰金が科せられる可能性があります。このガイドラインは、2 回の全国的な意見募集を経て策定され、企業のサステナビリティに関するコミュニケーションに対する監視が強化される中、規制の厳格化が進んでいることを反映しています。
7月15日、英国政府は、英国グリーン・タクソノミーの導入を見送ることを発表(*43)しました。これは、「英国タクソノミーは、グリーンへの移行を推進する上で最も効果的な手段ではないと結論付けたため、持続可能な金融の枠組みの一部としては不適切である」との判断によるものです。この決定は、2024年11月に実施された意見募集の回答結果を受けたものです。この意見募集では、英国タクソノミーの構想に肯定的な意見は回答者の45%にとどまり、回答者の3分の1は「タクソノミーに課せられた2つの主要目標、すなわち投資の誘導とグリーンウォッシュの防止を達成するには、他の政策の方がより影響力がある」と強調しました。政府は、回答者が最も影響力があると指摘した計画の実施に注力し、投資家の投資判断を支援するために政策をどのように整合させるかを検討する予定です。
7月4日、欧州委員会(EC)は、持続可能な経済活動および投資の分類システムであるEUタクソノミーの適用を簡素化するための一連の措置を採択(*44)しました。この変更により、枠組みの中核となる目標を維持しつつ、企業の事務負担が軽減されます。委任法は、欧州議会および理事会に提出され、審議されます。4 か月間の審議期間(さらに 2 か月延長可能)が終了すると、この変更が適用されます。この委任法に規定された簡素化のための措置は、2026 年 1 月 1 日から適用され、2025 会計年度を対象とします。ただし、2026 会計年度から適用を開始することも可能です。
6月17日、オーストラリアは、気候変動の緩和に焦点を当てた自主的な分類システムである、初の「持続可能な金融タクソノミー」を導入(*45)しました。このタクソノミーは、政府とオーストラリア・サステナブル・ファイナンス・インスティテュート(ASFI)による共同イニシアティブとして策定され、鉱業や海運業などの主要セクターにおける低排出の経済活動を識別するための基準を定め、持続可能な投資に関する主張の透明性を高め、パリ協定との整合性を支援することを目的としています。タクソノミーは、低排出経済活動の識別基準を明確にすることで、グリーンウォッシュのリスクを低減し、サステナビリティ情報開示の比較可能性を向上させます。ASFIは、市場での本格的な運用開始に先立ち、一部の金融機関を対象に試験運用(パイロットフェーズ)を実施し、タクソノミーの有用性を検証していく予定です。
7月4日、ドナルド・トランプ大統領は、包括的な税制および歳出法案(正式名称「One Big Beautiful Bill Act」)(*46)に署名し、米国のクリーンエネルギー政策とより広範な財政上の優先事項に重大な転換をもたらしました。この法案は、2022年インフレ抑制法(IRA)に基づく税制優遇措置および税額控除を大幅に変更するものであり、今後10年間の米国のクリーンエネルギー経済の軌道を再構築すると予想されます。
主な法案の成立内容は次のとおりです。
新法は、IRA で導入されたクリーン電力生産税額控除(PTC)および投資税額控除(ITC)の早期廃止を含んでいます。当初の IRA の枠組みでは、プロジェクトは 2032 年まで、あるいは全国の電力セクターの排出量が 2022 年比25%の水準 に減少するまで、全額税額控除を申請することができました。
新法は、太陽光および風力発電プロジェクトに対する税額控除の適用対象となる期間を短縮しています。具体的には、法律施行から12か月以内に着工を開始したプロジェクトのみが全額の税額控除を受けられます。2026年7月4日以降に着工したプロジェクトは、2027年12月31日までに商業運転を開始(サービス開始)しなければ全額の税額控除を受けることができません。ただし、米国財務省に対し太陽光と風力発電プロジェクトの建設規則を見直すよう指示する7月7日の大統領令(*47)により、この期間内の適用対象がさらに制限される可能性があります。
なお、2026年7月以降に着工する新たな太陽光および風力発電プロジェクトについては、2027年末をもってIRA補助金が終了し、2028年以降は税額控除の適用が事実上終了する見込みです。
太陽光発電や風力発電以外のクリーンエネルギー技術(地熱およびバッテリー貯蔵を含む)については、ITCおよびPTCの適用期間が延長されます。これらの税額控除は2033年まで全額適用され、2034年にはその価値が75%に減額、2035年に50%に減額され、2036年に完全廃止されます
すべての技術は、2026年1月1日以降、「懸念される外国の事業体(FEOC)」に関連した調達制限の対象となります。バッテリーのサプライチェーンが中国に大きく依存していることから、多くのバッテリー貯蔵プロジェクトはFEOC要件の順守が難しくなる可能性があります。一方、地熱エネルギー技術は比較的強固な国内製造基盤を有しているため、適格性にかかる障壁が少なく、一部のケースではFEOC非該当による代替税額控除の対象となる可能性があります。
新法は、特にEOR(Enhanced Oil Recovery:原油増進回収)や産業プロジェクトにおけるCCSへの税制優遇措置を拡充しています。
新法は、2025年9月30日以降に取得されたすべての電気自動車(EV)に対する商用クリーン車両税額控除(45W)を廃止します。これまで、車両総重量14,000ポンド未満の適格車両に対して7,500ドル、14,000ポンド以上の車両に対して40,000ドルの控除が提供されていました。自治体は、2025年9月30日以前に取得した対象の商業用クリーン車両の調達費用を補填するため、選択的な補助金申請を継続できます。
また、クリーン車両税額控除(30D)および中古クリーン車両税額控除(25E)も2025年9月30日に終了します。したがって、2025年10月1日以降に購入された新車および中古EVに対しては、新たな税額控除は適用されません。
代替燃料インフラ税額控除(30C)は、EV税額控除よりも長い段階的廃止期間が設定されています。この税額控除は、低所得地域および都市部以外の国勢統計区域において、EV充電ステーション、水素燃料供給システム、その他の低排出燃料供給インフラの設置に関連する資本コストの最大30%を支援する制度です。この税額控除の適用を受けるためには、自治体は2026年6月30日までに、対象となる低排出燃料インフラが稼働状態であることを確認しなければなりません。これ以降に設置が完了した設備は、控除の対象外となります。
この法律は、今年1月に大統領がパリ協定からの正式な離脱を指示する大統領令を発出したことに続くものであり、連邦政府の気候政策の優先事項が大きく転換したことを示しています。バイデン政権下では、米国は2035年までに経済全体のGHG排出量を最大66%削減し、2050年までにネットゼロを達成することを約束していました。法案成立後、大統領は7月7日に大統領令を発令し、法律で定められた段階的廃止期間の実施および厳格な執行を指示しました。
現在予定されている、注目すべき今後の主な日程は以下です。