EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
「思っていたのと違った」、これはミスマッチな企業に入社した人からよく出るコメントです。こういう人は早々に転職していくケースが多いのですが、近年では入社直後に限らず慢性的に「こんなはずでは・・・」という感覚を抱く人が増えているようです。SNSで#boredatworkというタグを見ると、今の仕事がいかに自分の理想とかけ離れたものか、期待していたものとどのくらい違っているかを語った多くの若者の本音を垣間見ることができます。一日中やることが無いと愚痴るケースや、「この仕事やる意味ある?」と疑問を抱きながら淡々とこなすケースなど、バラエティーは何パターンかありますが、共通しているのはbored、つまり仕事に「飽きた」と彼らが訴えている点です。タフチャレンジが無いのに給料が払われるなんて天国じゃないかと思われる方もいるかもしれません。しかし人間という生物は面倒に作られているようで、この慢性的退屈感や無意味さへの感情は精神的・身体的に負の影響力を有しており、それが症状として顕在化したケースをBore outと呼びます。
多忙が続いた後に心と体がキープできなくなってしまった状態をBurn out(燃え尽き症候群)と呼びますが、Bore outはちょうどその対照概念で、そして精神、身体への有害性という点で両者は同等とされています。なぜか。それは「仕事が無い」とか「暇だ」という状況の問題ではなく、その状況がうつ症状、ストレス、不安、自律神経の不調などを起こしやすいからです。つまり、「仕事しないで金がもらえるなんて天国だ、意地でもしがみついてやろう」と思うような思考パターンの人であれば問題は起きづらいが、「自分はこれから〇〇年キャリアを歩んでいかなければならない、今ここで立ち止まっていては市場価値が下がってしまう」と思うような人が気分的なバランスを崩していくというわけです。現に、Bore outは若い世代や女性に多く見られるという傾向があります。そして組織にとってケア、リテインすべきなのも、しがみつこうとする人たちではなく、そうして心身に負の影響を受けてしまう人たちでしょう。故にBore outというのが対処すべき課題として近年、認識され始めているのです。
といってもまだピンと来ないかもしれません。ただ、このBore outのその後の経過を見ると、まずエンゲージメントが低下してQuiet Quitting(静かな退職)という、やる気が消えて最低限の業務を淡々とこなす状態になります。そしてCyberloafing(勤務中のネットサーフやSNS利用)、Busyness-theater(本当は忙しくないのに忙しいと見せかけるプレゼンティーイズムの一種)などを起こすようになり、最終的にはメンタル不調による休職や、Bare Minimum Mondaysのように最低ラインを意図的に狙いに行く、あるいはそもそも「ほどほど」で許されるような業務へと転向・転職していく、とご説明すれば、最近のZ世代絡みのバズワードの多くが根っこの部分でこのBore outと関連する、根深い問題だとご理解いただけるでしょう。
さて、それではBore outにはどう立ち向かえばよいでしょう。暇ならどんどん仕事を与える、というのも1つの考え方です。しかしこれではBurn outやブラック体質化など別の課題を生むリスクが高まります。かつての追い出し部屋のような特殊環境はともかく、通常の組織で業務に意味や価値が無いということは実際にはほぼ起こりません。つまり意味が無いのではなく意味が「見いだせない」ことに課題の原因があると解釈すれば、その意味を上司部下がしっかり議論する、また部下が1人でも意義を考えられるようにする(ジョブクラフティング)打ち手が有効でしょう。他方で本当に意味や価値が無い業務がまん延している可能性も忘れてはなりません。例えば官僚主義的組織に散見される形式的、形骸化した手続きに意義が見いだせない、というのが根源的問題なのであれば、それはジョブクラフティング以前に仕事の在り方を組織として見直していくことが求められるはずです。両者に共通して言えるのは自身がBored状態だと上司とコミュニケーションする、そこが問題のスタート地点ということです。暇だと言うとサボっていると取られるのではないかと懸念し、言い出せない人は実は結構な割合で存在します(実際、多くの社会人は週に何時間か暇な時間を体験しているにも関わらず)。そのようなことも含め語り合える上司部下関係が築けているか、まずはご自身から見直してみましょう。
参考文献
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