EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
さて、突然ですがクイズです。2018~23年の年成長率4.6%、今後10年の年平均成長率8%、これは何の産業でしょう。ちなみに日本の産業成長率は全産業で1.6%、最も成長率が高かった「その他金融業」でも3.6%です。コラムタイトルから推測できたかもしれませんが、こちらはコーポレートギフト市場の値です。コーポレートギフトとは例えば企業ロゴ入りグッズやポイントプログラムの交換品などを扱う市場です。このコーポレートギフト市場が近年急に伸びている背景に、実は従業員向け報酬ギフトというものがあるとしたら、人事の皆様は興味を持つのではないでしょうか。そこで今回はいつもより実践的テーマではありますが、従業員向け報酬ギフト、それも「ギフトカード」の現状についてご紹介しようと思います。
コーポレートギフト市場は極度のレッドオーシャンで、シェア1位のAmazon社でもその規模はわずか0.04%だそうです。確かにコンビニに行けばプリペイドカードや金券類がずらりと並んでいますし、急なプレゼントにコーヒーチェーン店に走った方も結構おられるでしょう。となると個人消費メインかなと思いきや、実は市場の45%は企業が自社従業員に渡すギフトで、しかもそのセグメントが市場成長をけん引しているのです。米国では2022年の時点で84%の企業が現金外※インセンティブに年間1,760億米ドル(当時のレートで約23兆円)を費やしています。その半分が従業員に回されており、約60%の人が過去1年に雇用主からギフトカードを受け取った、しかも2019年~22年の3年間でその割合は2倍に増えた、という調査もあります。欧州、そして日本でも増加傾向は一致しており、特に〇〇Pay等の電子決済が増えてきた日本(および中国・インドなどのアジア)では、デジタルギフトカードを使ったインセンティブ制度が増加の兆しを見せているようです。
※金券は現金報酬とも取れますが、給与・賞与・株式報酬を現金、それ以外を「現金外」と分類する例も多く見られ、本稿ではデータ元に合わせます。
さて、そうなってくるとやはり気になるのがその効果ですが、紙の金券時代から歴史は長いので、一定の研究成果があります。最も多く言われるのが、現金外報酬は現金報酬よりも「特別感」がある、というものです。現金報酬はたとえそれが特別なインセンティブ制度であったとしても「追加の給与」と認識されやすく、印象に残りません。一方でギフトカードなど、通常の給与や現金とは異なる形態の報酬を付与することで、従業員にとってはそれが特別な成果や自分自身に対するご褒美と認知され、それがモチベーションやリテンションにつながるというものです。実際、79%の従業員がそのような「特別な報酬」で自分が大切にされ、感謝されていると感じると回答しており、賞与や昇給、株式報酬よりも認知や称賛の方が動機付け効果が高いというマッキンゼー社のレポートもあります。このような側面から、商品券などの現金外報酬はROIの高い施策のひとつとして活用されてきました。
そして現代、デジタル化によって現金外報酬が進化しつつあります。発端は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だったようで、出社できない時間給社員たちに苦肉のリテンション策として少額のデジタルギフトを配ったことに始まるとする説が多く見られます。その効果に味を占めたのか、ピアボーナスや褒賞制度にさっと渡せるデジタルギフトカードを導入する例が散見されるようになります。そして面白いことに、物理的なギフトカードと比較し、デジタルギフトカードで配ると金額が若干増えるという報告もあり(物理的なギフトカードは5千円や1万円などのキリの良い数字になるが、デジタルの場合は予算内で少しでも額面を多くしようとする傾向が生じるのではないかとされている)、従業員にもうれしい仕組みと受け止められたようです。さらにその後、デジタルギフトカードの即時性を応用した施策も見られるようになります。これは要するに「何が褒められたか」が分かりやすくなったということで、従来の人事ワークフローで遅延的に付与されるリワードと比較し、褒める対象となった行動が見られた直後にギフトを付与することで、対象行動を繰り返す可能性が40%ほど高まったという研究に顕著です。また、逆に報酬プラットフォーム(先述のピアボーナスシステムなど)が行動データとつながりやすくなった点を活用し、より深く従業員の成果創出行動に関するインサイトを探求しようという動きもデジタルギフトに絡めて出始めているようで、あまり知られてはいないもののこれからが楽しみな領域となっています。
日本では賃金のデジタル払いがスタートしたとは言え、実際に導入している割合は1割にも満たないようです。皆様の企業でもあまり視野に入っていないかもしれませんが、古くて新しいRewards & Recognition(報酬・認知)システムとしてデジタルギフトカードを再考してみるのも良いかもしれません(少額現物を一律支給する場合を除き、企業が従業員に渡すギフトカードはほぼどの国でも福利厚生ではなく給与扱いとなるのでご注意ください)。
参考文献 ※内容はアクセス当時のものとなります。
メールで受け取る
EY PC 人事・組織 メールマガジンで最新の情報をご覧いただけます。
EYは、適材適所(適切な人材に、適切なコスト、適切な場所で、適切に活動してもらうこと)による競争力の獲得を通じ、経営・事業戦略における人材アジェンダを実現していくことをサポートいたします。