EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
職場の若者が減り、人材難からシニア世代に活躍の場を広げる。そんな日本のような話が世界中で起きているとしたら、そこには単に「高齢化だから仕方ない」だけではない論点が潜んでいるかもしれません。今回は若年層に広がる価値観の変化から、現経営層や会社そのものの運用に流れる基本的な思想との世代ギャップを捉え、そこから組織がこれから何をすべきなのかを考えてみましょう。
近年、さまざまな国で休みを取る人が増えています。例えばOECDの調査によれば2019年から2023年にかけドイツでは病欠が25%増えました。フランスは全体の6割程度しか捕捉できていないものの、それでも+35%と増加傾向を示しています。また、統計取得が困難で定量化されにくい米国でも、同期間(2019年から2023年)に病欠が55%増えたという調査があります。これは必ずしも高齢化で病気がちな従業員が増えたというわけではありません。もちろん、高齢なほど病欠日数は増えるのですが、近年の傾向として高齢層よりも若年層で病欠取得が増加している、とする報告が数多く見られるのです。その一方でシニア世代は職場に戻りつつあります。“The Great Retiree Return”とも表現されるように、英国では退職者の14%が仕事に復帰し、米国では退職者の8人に1人(13%)が2025年に再就職を希望しています。つまり若者は休みがちに、そしてシニアは定年後も職場に戻る、そんなオフィス高齢化が広がっているのです。
これらの行動変化の根底には価値観の変化があるという解釈が一般的です。実際、弊社がグローバルに行った若者の意識調査でも、若年層(18歳~34歳)は金銭的な富やキャリアよりも心身の健康を優先する*1という結果が得られており、これまでの企業組織が前提としてきた価値観とはやや趣が異なります。この変化については、かつてキャリアと言うと学卒から退職までという一定の時間軸を持ったものであったのが、コロナ禍やテクノロジーの興亡、地政学リスクの高まりなどの影響で先行きの不透明さが増し、「時間軸」への信頼が揺らいでいることが影響していると言われています。つまり将来保障がない中で「退職したら充実した余暇を」という前提でのライフプランニングが困難になり、結果的に「現在」のバランスや満足度を重視する傾向につながっているのでは、という説です。シニア世代が職場に戻っているのは経済的理由が大きいですが、その実態を見ることがまた、若年層の価値観変化を加速させているのかもしれません。
そしてこのような価値観変化の結果を反映した“Micro-Retirement”という行動が、近年にわかに注目され始めています。少し(Micro)退職する(Retirement)という名のとおり、数週間から数カ月(数年にわたるケースも)の間、仕事から離れることを指します。ただ、理由は病欠だけではありません。元々Call-in-sick世代とも呼ばれる現代の若年層に広がるメンタル休暇は必ずしも病気であることを必要としません。「このままいくと危ない」時にさっと休み、そして回復すればまたしっかり働く、そういう価値観の延長にあります。サバティカル休暇のような公的制度と違い、Micro-Retirementは私的に自由度高く活用されます。ですから、人によってはBurn-out対策の緊急避難かもしれませんし、そうではなく単に休みたい、旅行に行きたい、個人の成長に投資したい、副業を始めたいなど理由は本当に人それぞれです。今の仕事を辞めたいとか、金輪際働きたくないとかではなく、目的が達成されれば復職意思があるという点だけは共通しており、このような行動をどう扱うか、海外では議論を呼び始めています。
日本は海外ほどには雇用の流動性が高くありませんので、そこまでリスクの高い行動を選択するケースが多いとは思いませんが、それでも将来不安、キャリア展望という点ではグローバルに類似した点も多く、価値観としても今を大事にする若者が増えている印象はあります。もし仮にそうであれば、Micro-Retirementのような仕組みは福利厚生的な意味合いを持つ可能性があるものです。1カ月休ませてください、と言われた時、そんな勝手な行動は認められないと返すのか、1カ月後にフル充電して頑張ってねと返すのか。欠員と捉えるのか、シニア層の活躍の場や多様性の拡大と捉えるのか。あるいは別角度から、もしキャリアを通したライフプランが描けないのだとしたら、社内のキャリアパスを示すこと以上に個人の成長にフォーカスした「今」を見せるべきなのではないか、など。若年層の価値観からも、新しい組織運営の在り方をアグレッシブに考えたいものです。
参考文献 ※内容はアクセス当時のものとなります。
参照
*1 How the first global generation is redefining adulthood(英語版)
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