EYの事例

AIを活用したダイキンの事業変革――複雑性から俊敏性への移行

事業運営の方向性をそろえ、従業員が主体的に能力を発揮できるようにし、持続可能でグローバルな変革を進めるために、ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)はどのように「North Star(北極星のように、進むべき方向を示すもの)」を定めたのでしょうか。本記事で詳しくご紹介します。

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The better the question

世界的な総合空調企業であるダイキンは、業務統合を通じて、どのように成長とエンゲージメントの促進を実現しているのか?

事業運営の方向性をそろえ、持続可能でグローバルな変革を進めるダイキンの取り組みを、EYとSAPのチームが支援しました。

総合空調業界が急速に変化する中、多国籍企業であるダイキンは、極めて重要な問いに直面していました。それは「業務統合を通じて、どのように成長とエンゲージメントの促進を実現するか」というものです。 製品は多岐にわたり、400を超える販売代理店を抱えるダイキンは、この複雑な構造を北米全域における競争優位性に変える必要があると考えていました。そこで、「North Star(北極星のように、進むべき方向を示すもの)」を明確にするため、大胆なビジョン「One Daikin」を定めました。これは、持続的な事業変革を通じて運営をシンプルにし、従業員が主体的に能力を発揮できるようにして、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための指針となるものです。このビジョンの中心となるのは、ダイキンが掲げる「人を基軸におく経営(People-Centered Management)」へのコミットメントです。これにより、エンゲージメント向上と成功の推進に向けて、各従業員が主体的に能力を発揮できるようにすることに常に焦点が当たります。

ダイキンは、人を基軸におくAI変革戦略を通じて、事業の再構築に取り組みました。この動画では、その実現をEYがどのように支えたかをご紹介します

ダイキンは、事業運営の再定義に向けた取り組みに乗り出しました。目的は、革新的テクノロジーにより、従業員、販売代理店、卸売業者のエクスペリエンスを向上させるとともに、住宅所有者に最適な製品・サービスを提供することでした。しかし、長年にわたる急成長の過程で構築されてきた、旧式のERP(企業資源計画)エコシステムの管理が大きな課題となっていました。Daikin Comfort Technologies社の上級副社長兼最高情報・デジタル責任者、Vaidy Subramanian氏は「ダイキンは、業務効率の向上とイノベーションの文化を定着させる、有意義な変革の推進に力を入れています」と述べています。 この戦略的ビジョンを通じてダイキンが目指したのは、総合空調業界をけん引する存在となり、卓越性の新たな基準を打ち立てるという目標の達成でした。

同社では、積極的な買収を通じた事業展開の結果、各部門で多様な業務が行われるようになり、受注管理、サプライチェーン、フルフィルメント、財務の業務プロセスが地域・支店間で統一されていませんでした。この複雑な組織構造を競争優位性へと転換させるため、プロセスの標準化と、ステークホルダー全てに対する一貫した世界最高水準のエクスペリエンスの提供に努め、「One Daikin」ビジョンを実現しました。 この転換の取り組みの焦点となったのは、企業データの統合と協力体制の強化です。これにより、シームレスな自動化とモバイルオーダーのようなリアルタイム機能、在庫・出荷状況の完全な可視化、サービスプロセスの効率化が可能になりました。

ダイキンは、極めて重要な問いを自らに突き付けていました。それは「AIを組み込んだ一体的なシステムを通じて、価値主導型のデジタルエクスペリエンスを創出するには、自社の働き方をどのように近代化し、統一するべきか」というものです。かつ、テクノロジーだけでは、プロセス、プラットフォーム、業務フロー全体にわたる、必要な変革を推進できないことも理解していました。  そこで、経営陣は「One Daikin」のビジョンの下、北米全域に及ぶ統一事業モデルを構想し、それに沿って、人事、調達、IT、財務のサービスの共有化と統合を進め、グローバルな標準化に向けて、拡張性の高い基盤を構築しました。「真の変革の起点は人です。テクノロジーだけではありません。この事例で最も重要な点は、販売代理店のエクスペリエンスの刷新と、従業員が主体的に能力を発揮できるようにし、適応と目標達成を可能にすることでした。信頼を築き、有意義な変革に力を注ぐことで、持続可能な成長と未来に通用する組織の実現への扉を開くことができます」と、Ernst & Young LLP、People Consulting、Managing DirectorのJennifer Maddoxは説明しています。

ダイキンにとって、テクノロジー導入は最終目標ではなく、プロセスや日常業務を見直すための手段でした。高度なAI機能を組み込むことで、販売代理店や卸売業者のネットワークへの価値提供の加速と、持続可能な事業拡大の推進を目指しました。このビジョンを実現するため、2019年から欧州およびアジア太平洋地域で進めていた、多地域を対象とするより広範なSAPイニシアチブと、自社のトランスフォーメーションの取り組みを統合しました。また、ビジョンを迅速に従業員の主体的な能力発揮や販売代理店のエクスペリエンス向上につなげるため、Ernst & Young LLP(EY)のプロフェッショナルに、この事業変革の調整、チェンジマネジメントの支援、迅速なAI活用機能の導入を依頼しました。

上空から見た、テキサス州ウォーラーのダイキンビル
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The better the answer

エクスペリエンス志向の事業変革アプローチの価値

ダイキンは、ペルソナ(典型的な架空のユーザー像)起点の考え方、AIを活用した設計、SAP S/4HANA® を融合し、全拠点の成長に向けて、拡張性の高い基盤を構築しています。

ダイキンは2023年、EYとSAPの提携から生まれた、グローバル事業のSAP導入の勢いに乗って、北米全域でトランスフォーメーション拡大の取り組みに踏み出しました。この取り組みの目的は、SAP S/4HANA® 導入の加速と、AI活用が浸透した、アジャイル手法によるエクスペリエンス志向のトランスフォーメーションの達成でした。ダイキンは当初から、この取り組みを、プロセスの統合、ユーザーエンパワーメント、販売代理店に再現性のある価値をもたらす拡張性の高い基盤の構築を目的とする事業変革の手段として位置付けました。

EYの部門横断チームは、最適化されたデジタル環境で、販売代理店、支店の窓口、バックオフィスの各ペルソナにとって「現実的に達成可能なこと」を見極めるため、没入型体験を実施しました。この体験を通じて、SAP S/4HANA®の標準機能に準拠したベストプラクティスや、ユーザーの生産性を重視する、ペルソナ起点のエクスペリエンスが明らかになりました。これらの設計原則に基づき、ダイキンとEYのチームは、窓口担当者が作業を単一画面で実行できる仕組み、販売代理店の担当者が現場で利用できるモバイルオーダー機能、財務業務と倉庫業務を統合したプロセスをつくり上げました。これにより、手作業が必要な業務の削減と、意思決定の迅速化が実現しました。

仮定の検証と、展開に関する意思決定リスクの軽減のため、EYのチームは10週間にわたり25回に及ぶ支店訪問を実施し、5つの顧客チャネルについてカスタマーエクスペリエンスの全体をマッピングしました。この取り組みの結果、ダイキンの数十の支店を対象とする、財務、物流、調達、販売の業務プロセス近代化のための精度の高い設計図とパイロット版が作成されました。これらは全て、想定される規模拡大を迅速に実行するという目的に沿った設計となりました。

Ernst & Young LLP、Industrial Products、PartnerのGundeep Singhは、このアプローチ全体の土台となっているのは「全ペルソナにとっての成果、効率、価値を高めるために、中核となるSAPに加えて、経験に基づくソリューションを活用すること」だと指摘しました。 その理念を行動に移すため、EYのチームとダイキンは、SAP S/4HANA®のデジタルコアを拡張し、SAP Business Technology Platform(BTP)上で開発された再利用可能なアクセラレータを通じて、フロントエンドの受注管理、在庫計画、倉庫管理の機能を追加しました。この手法の導入により、従来の作業画面は、販売代理店、窓口担当者、バックオフィス部門の役割に応じた利便性の高いアプリに置き換わり、日常業務の簡素化が実現しました。

パイロット版によって
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決算業務が迅速化。

また、この取り組みでは、EY NextWaveなどの全社的な施策や業界との連携を活用し、製造レベルでのレジリエンス、規制上の統制、セキュア・バイ・デザインに基づく運用が導入プロセスに盛り込まれました。トレーサビリティ、監査に備えたレポート機能、各地域に適したコンプライアンス統制機能を基本業務に組み込むことで、ガバナンスの強化と業務効率化を達成しました。

全ての段階においてチェンジマネジメントと変革の導入が必須要素として実施され、これにより、新しい働き方への移行が円滑に進み、顧客が最新のAI搭載ツールを活用できるようになりました。同社は、ユーザーエクスペリエンスとAIを活用したトレーニングを統合してスーパーユーザーに提供することで、導入を促進し、導入ペースの鈍化を防ぎました。この取り組みにはガバナンスが当初から組み込まれていたため、北米全域へと規模が拡大していく中で、トランスフォーメーションの成果測定、維持、反復型実行ができました。

Workers inside the Daikin plant in Waller Texas
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The better the world works

「One Daikin」のビジョンを通じて、組織全体でシームレスなエクスペリエンスを実現

ダイキンは、最新のデジタルエクスペリエンスを実現するため、再現性と拡張性の高いトランスフォーメーションを推進しています。

北米におけるトランスフォーメーションにより、ダイキンでは「One Daikin」のビジョンが急速に浸透し、事業上の大きな成果に結び付きました。わずか10カ月で立ち上げられたパイロット版プロジェクトでは、数十の支店に勤務する300人超の現場担当者の、財務、物流、調達、販売の業務フローが刷新されました。初期段階で得られた第一弾の成果として、明確な商業・事業上の実績アップが明らかになりました。具体的には、窓口業務の効率が10%向上、決算業務が20%迅速化し、価格設定および運賃収益の管理が強化されたほか、データとコンプライアンス基盤の一元化により、連続的な不備や品質上の問題が根絶されました。

このような実績をもたらしたのは、成長志向の考え方と、ペルソナ起点のエクスペリエンス、SAP S/4HANA®の標準機能に準拠した運用、SAP BTP上に構築された再現性の高いアクセラレータを重視した意図的な設計判断です。また、グローバルなトランスフォーメーションのために作成された、体系的な青写真の所産でもあります。コード生成や自動テストなどにAIを活用して導入を進めた結果、目標達成がさらに約30%加速し、今後の段階に向けて、再現性と拡張性のあるフレームワークが確立されました。 この取り組みは、インテリジェントな製造手法と配送ルートの最適化や輸送ロスの抑制を可能にする予測・予見を通じて、事業に有意義な恩恵をもたらしました。最終的には、従業員や顧客のエクスペリエンスを向上させるとともに、サステナビリティの推進にも貢献しました。

Ernst and Young LLP、Industrial Products、Executive Directorであり、Daikin Americas社担当のEY Global Client Service Partnerを務めるSteve Grimmerは、この協働の重要性を、次のように強調しました。「ダイキンおよびSAPと共に進めているトランスフォーメーションの取り組みは、持続可能な成長の推進に全力を尽くすという私たちの決意の表れです。最先端テクノロジーの活用と人を基軸におくアプローチを通じて、業務能力の向上を支援するとともに、ダイキンと販売代理店および顧客との関係の深化を支えています」

導入を戦略的トランスフォーメーションの必須課題と位置付けた結果、「one-click confidence(ワンクリックで確実に操作が行える状態)」が実現し、ダイキンのユーザーは、関連情報全てを単一画面で確認し、ワンクリックで操作を完了できるようになりました。これにより、新たなAI搭載ソリューションの利用がさらに容易になりました。まず、従業員が主体的に能力を発揮できるようにすることで、これらの機能により、季節的な人員配置の合理化、窓口業務の効率の最適化、研修時間の短縮が実現しました。これによって確保できた時間を付加価値の高い業務に充てることで、従業員は創造性の限界を押し広げ、販売代理店に世界最高のサービスを提供できるようになります。調達と財務を対象とする統合サービスモデルにより、部門間の連携がさらに強化され、企業データに関する信頼できる単一の情報源が確保できました。

この取り組みでは、AIが支援する目標達成の基盤を拡充しています。その成熟度は、以下の3つの相互に補完し合う道筋に沿って着実に高まっています。

  1. 導入へのAI活用:コード生成、自動テスト、AIによる仕様書作成を通じて、目標達成を加速する。
  2. エクスペリエンス向上のためのAI活用:統計的予測、対話型インターフェース、意思決定支援の増強により、販売代理店の注文履行とサービスの向上を図る。
  3. 選択的自動化:日常的な意思決定は自動化し、例外やリスクの高い状況は人による監督の対象にする。

ダイキンの「エクスペリエンスファースト」の事業変革の取り組みは包括的に実施され、同社はこれを通じて、ビジネス環境、技術環境、規制環境の変化に柔軟に対応できる体制を整えています。「当社のトランスフォーメーションの取り組みの核心にあるのは、お客さまに素晴らしいエクスペリエンスをお届けするというコミットメントです。世界最高の顧客志向の組織をつくり上げることで、チームが主体的に能力を発揮し、あらゆる顧客接点において、販売を拡大し、期待を上回る成果を上げられるようにしています。私たちは単に製品を販売しているのではありません。カスタマーエクスペリエンスを向上させ、当社の成功の原動力となる、永続的な関係を築いているのです」と、ダイキンの情報技術担当副社長であるKen Landry氏は述べています。

同社は今後も、「One Daikin」のロードマップを世界的に積極的に拡大していきます。トランスフォーメーションの次の段階では、最先端の与信管理基盤を導入し、インテリジェントでコンプライアンスに準拠した意思決定が全ての地域で可能になるようにします。「ダイキンでのテクノロジーとAIの活用および体験型ソリューションの構築の事例は、この業界における私たちの取り組みを象徴しています。この事例は、製造業界の事業変革とSAP S/4HANA®への移行についてのベンチマークとなるものです」と、Singhは締めくくりました。

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