2021年6月第1四半期 四半期報告書分析 第2回:収益認識会計基準(収益の分解情報)

2022年2月9日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 清宮 悠太

Question

2022年3月期決算会社の第1四半期決算において、「収益認識に関する注記」に記載する収益分解情報の開示状況は?

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2021年10月
  • 調査対象期間:2021年6月30日
  • 調査対象書類:四半期報告書
  • 調査対象会社:2021年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する185社

① 3月31日決算
② 2021年6月30日(法定提出期限)までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用している
④ 2021年4月1日より開始する連結会計年度の期首からIFRS(国際財務報告基準)へ移行した会社を除く
⑤ 収益認識に関する注記を記載していない会社等(※)

※ 収益認識に関する注記を記載していない会社のほか、収益認識に関する注記においてセグメント情報等の注記を参照しているものの、従来のセグメント情報等の注記内容から概ね変更がない会社など含む。

【解説】

四半期報告書の「収益認識に関する注記」として、いわゆる収益の分解情報の注記が求められている。

具体的には、当四半期累計期間に係る顧客との契約から生じる収益について、当該収益及び当該契約から生じるキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に当該収益を分解した情報であって、投資者その他の四半期財務諸表の利用者の理解に資するものを注記しなければならないとされている(「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」27条の3、「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」22条の4)。

【調査結果】

調査対象会社(185社)を対象として、「収益認識に関する注記」の分解区分(どのような収益の分解情報を記載しているか)に関する調査を行った。なお、調査にあたっては、セグメント情報等の注記(以下「セグメント注記」という。)における報告セグメントとの関係性も考慮した。

調査の結果は、<図表1>のとおりであった。

収益の分解情報の区分としては、「顧客との契約から生じる収益か、それ以外か」の項目を設けている会社(127社)が最も多く、次に、「財又はサービスの種類」の115社が続いた。「財又はサービスの種類」は、セグメントにおける分類よりも詳細な商品・製品・サービス区分での収益情報を記載する傾向にあることが読み取れた。

また、「セグメント注記における報告セグメント」に関して「単一セグメント」で開示している会社は26社であったが、うち22社(84.6%)が収益の分解情報として「財又はサービスの種類」の区分に関する内容を開示するなど、自社又は自社グループの単一セグメント内における「財又はサービスの種類」のより詳細な分類・情報が開示される傾向が読み取れた。

そのほか、185社のうち、①収益認識に関する注記において、収益の分解情報はセグメント注記に開示している旨のみを記載し、かつ、②セグメント注記において収益の分解情報をまとめて記載している会社は、37社(20.0%)であった。

<図表1>収益の分解情報における分解区分

収益の分解情報の区分 セグメント注記における報告セグメント
主に製品・サービス別 地理的区分 会社グループ

単一セグメント

合計
(※1)
顧客との契約から生じる収益か、それ以外か(※2)
109 3 1 14 127
財又はサービスの種類(※3) 85 5 3 22 115
地理的区分(※4) 48 1 7 56
財又はサービスの移転の時期(※5) 18 1 3 22
販売形態別(※6) 1 2 3
得意先グループ(※7) 2 1 3

※1 複数の区分での開示を行っている場合には、それぞれ1社とカウントしていることから、合計は185社と一致しない。

※2 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の対象となる顧客との契約から生じる収益と、同会計基準の対象ではないその他の収益に分類しているケースなど。

※3 セグメント注記に記載した事業を、さらに商品・製品ごとに分類しているケースなど。

※4 日本、北米、ヨーロッパ、アジアなどの地理的区分に分類しているケースなど。

※5 一時点で移転される財又はサービス、一定の期間にわたり移転される財又はサービスに分類しているケースなど。

※6 店舗販売、通信販売などに分類しているケースなど。

※7 商社、メーカーなど得意先の属性ごとに分類しているケースなど。

(旬刊経理情報(中央経済社)2021年11月1日号 No.1626「2021年6月第1四半報における収益認識・コロナ禍関連の開示分析」を一部修正)