2021年6月第1四半期 四半期報告書分析 第3回:新型コロナウイルス感染症に関する非財務情報(経営環境等及びMD&A)

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中澤 範之

Question

2021年6月第1四半期報告書(以下「当第1四半報」という。)の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(以下「MD&A」という。)における新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)の影響の開示状況は?

 

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2021年9月
  • 調査対象期間:2021年6月30日
  • 調査対象書類:四半期報告書
  • 調査対象会社:2021年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する201社

① 3月31日決算
② 2021年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用しており、2021年4月1日より開始する年度の期首からIFRSへ移行していない

【調査結果】

調査対象会社(201社)を対象に、MD&Aにおいて、「会計上の見積り及び当該見積りを用いた仮定」及び「経営方針・経営戦略等又は当該指標等」について、有報から追加的に本感染症に関する内容を記載しているか、開示状況を調査した。調査結果は<図表1>及び<図表2>のとおりである。

 

<図表1>会計上の見積り及び当該見積りを用いた仮定の記載内容

記載内容

2020年6月期

2021年6月期

当該項目の記載なし

133

138

重要な変更はない旨のみ記載

44

56

重要な変更はない旨を記載し、かつ、本感染症に関する仮定については、追加情報を参照

7

4

本感染症の影響に関する仮定について、追加情報に記載している旨のみ記載

4

1

重要な変更を行っている旨を記載し、かつ、詳細は追加情報に記載している旨を記載

3

1

本感染症の収束時期や影響を受ける会計上の見積り項目を記載したうえで、重要な変更がない旨を記載

1

1

合計

192

201

<図表1>のとおり、会計上の見積り及び当該見積りを用いた仮定については、項目の記載をしていない会社が半数を超過する138社(69.0%)であった。また、「重要な変更はない旨のみ記載」した56社のうち、37社が注記事項の追加情報において新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定について重要な変更はない旨を注記していた。

 

<図表2>経営方針・経営戦略等又は当該指標等の記載内容

記載内容

2020年6月期

2021年6月期

当該項目の記載なし

95

79

重要な変更はない旨のみ記載

72

90

本感染症が現在の経済環境や経営環境に及ぼす影響を記載し、かつ、中期経営計画等の戦略を実行していく旨

2

28

本感染症に対する具体的な対応策を記載

4

0

本感染症の拡大等に伴い中期経営計画等を見直した旨または有報提出時点では未定としていた経営計画を算定した旨

10

0

有報と同様に本感染症の収束時期等が不明な状態が続いており、中期経営計画について依然として未策定としている旨

2

0

その他(※1)

7

4

合計

192

201

※1 本感染症以外のみに関する記載を含む。

 

<図表2>のとおり、経営方針・経営戦略等又は当該指標等について、当該項目の記載がない又は重要な変更はない旨のみ記載している会社が合わせて171社(84.2%)であった。前年同期は167社であり2021年第1四半期も過半数を占める結果となっていることにより、6月の有価証券報告書の開示から経営方針・経営戦略等又は当該指標等の変更が少ないことがわかる。これに対して、「本感染症が現在の経済環境や経営環境に及ぼす影響を記載し、かつ、中期経営計画等の戦略を実行していく旨」を記載した会社が前年同期2社から28社に増加している点が特徴である。

(旬刊経理情報(中央経済社)2021年11月1日号 No.1626「2021年6月第1四半報における収益認識・コロナ禍関連の開示分析」を一部修正)


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