2021年6月第1四半期 四半期報告書分析 第5回:新型コロナウイルス感染症に関する特別損失

2022年2月9日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 中澤 範之

Question

2021年6月第1四半期報告書(以下「当第1四半報」という。)において、新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)により特別損失を計上した会社の傾向と開示の状況は?

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2021年9月
  • 調査対象期間:2021年6月30日
  • 調査対象書類:四半期報告書
  • 調査対象会社:2021年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する201社

① 3月31日決算
② 2021年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用しており、2021年4月1日より開始する年度の期首からIFRSへ移行していない

【調査結果】

P/L特損注記において、本感染症に言及した会社の状況は<図表>のとおりである。項目別では、80社が「操業、営業停止中の固定費等」を特別損失に計上していた。前年同期は特別損失に「操業、営業停止中の固定費等」を計上した会社は191社であった。このようにコロナ禍が2年目となり、関連した特別損失の計上自体が減少している。また、テナント支援、感染症に関する対策費用等の固定費以外の項目である「その他」の発生は1件であり、特別損失に計上する内容が限定されていることがわかる。

<図表>第一四半期P/L特損注記において「コロナ」又は「感染症」に言及している会社の業種別内訳と記載状況(※1)

区分

特別損失の計上内容(※2)

合計

調査の対象における業種別の会社数(B)

A/B
操業、営業停止中の固定費等(※3)(A) その他
小売業
25   25 136 18.4%
サービス業 11 1 12 212 5.2%
陸運業 8   8 62 12.9%
卸売業 7   7 211 3.3%
情報・通信業 6   6 211 2.8%
不動産業 5   5 57 8.8%
化学 1   1 148 0.7%
電気機器 1   1 157 0.6%
輸送用機器 1   1 69 1.4%
機械 2   2 158 1.3%
その他の業種 13   13 775 1.7%
総計 80 1 81 2,196 3.6%

※1 東京証券取引所の33業種区分で集計している。

※2 同一の会社で複数の項目を記載している場合、それぞれ1社としてカウントしている。

※3 操業、営業停止中の固定費のほか、イベント等の中止又は延期等に伴う損失も含めている。

(旬刊経理情報(中央経済社)2021年11月1日号 No.1626「2021年6月第1四半報における収益認識・コロナ禍関連の開示分析」を一部修正)