2021年6月第1四半期 四半期報告書分析 第6回:新型コロナウイルス感染症に関する追加情報

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 須賀 勇介

 

Question

2021年6月第1四半期報告書(以下「当第1四半報」という。)における新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)に関連する「追加情報の注記」の開示状況は?

 

Answer 

【調査範囲】

  • 調査日:2021年9月
  • 調査対象期間:2021年6月30日
  • 調査対象書類:四半期報告書
  • 調査対象会社:2021年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する201社

① 3月31日決算
② 2021年6月30日までに有価証券報告書を提出している
③ 日本基準を採用しており、2021年4月1日より開始する年度の期首からIFRSへ移行していない

【調査結果】

調査対象会社201社のうち、当第1四半報において本感染症の見積りに関する追加情報を注記した会社は、116社(57.7%)あった。これは、2020年6月第1四半期報告書(以下「前第1四半報」という。)において本感染症の見積りに関する追加情報を注記した会社が、調査対象会社192社のうち145社(75.5%)であったことと比べて、割合が減少していた。

また、本感染症の見積りに関する追加情報の注記内容について調査した(<図表1>参照)。その結果、2021年3月期有価証券報告書(以下「前期有報」という。)に記載した本感染症に関する仮定に重要な変更がない旨を当第1四半報において記載していた会社が、116社のうち大半の97社であった。さらに、前期有報に記載した本感染症に関する仮定に重要な変更がない旨の記載はないものの、前期有報と同じ内容の本感染症に関する仮定を当第1四半報において記載していた会社が、17社あった。

これらを合わせると、116社のうちほとんどを占める114社(98.3%)となり、前期有報に記載した本感染症に関する仮定について重要な変更を行っていないが、重要な変更を行っていないことが有用な情報となると判断し、当第1四半報において追加情報を注記したものと考えられる。これは、前第1四半報における同様の調査結果が、145社のうち131社(90.3%)であったことと比べて、割合が増加していた。

 

<図表1>本感染症に関連する追加情報の注記内容

記載内容(※)

2020年6月期

2021年6月期

増減

前期有報の本感染症に関する仮定に重要な変更がない旨を記載

116

97

-19

前期有報と同じ内容の本感染症に関する仮定を記載

15

17

2

前期有報と異なる内容の本感染症に関する仮定を記載

7

2

-5

新たな記載(前期有報では非財務情報に本感染症の影響を記載)

7

0

-7

合計

145

116

-29

※「新たな記載」としてカウントしている場合を除き、前期有報の本感染症に関する仮定は、会計上の見積りに関する注記、追加情報の注記、又はその他の注記に記載されていたものを集計している。

さらに、前期有報と当第1四半報における本感染症の見積りに関する注記の開示状況について比較調査を行った(<図表2>参照)。その結果、調査対象会社201社のうち151社は、前期有報において本感染症の見積りに関する追加情報又は会計上の見積りの注記を記載しており、そのうち大半の116社(76.8%)は、当第1四半報において本感染症の見積りに関する追加情報を注記していた。

 

<図表2>本感染症に関連する注記有無の前期有報との比較

記載内容

四半報における注記の有無(※2)


合計

あり

なし

前期有報における注記の有無(※1)あり11635151

 
なし05050
合計11685201

※1 前期有報の会計上の見積りに関する注記又は追加情報の注記における本感染症に関する仮定の記載有無
※2 当第1四半報における本感染症の見積りに関する追加情報の注記の有無

 

(旬刊経理情報(中央経済社)2021年11月1日号 No.1626「2021年6月第1四半報における収益認識・コロナ禍関連の開示分析」を一部修正)


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