2023年3月期 有報開示事例分析 第5回:コロナ/ロシア・ウクライナ関連開示

2023年11月27日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 中澤 範之

Question

2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)の新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)及びウクライナ情勢に関する開示の状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2023年8月
  • 調査対象期間:2023年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する201社
    ①2023年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ②3月31日決算である
    ③2023年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ④日本基準を適用している

【調査結果】

(1) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

調査対象会社(201社)を対象に、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において、本感染症又はウクライナ情勢の影響を記載しているか、開示状況を調査した。調査結果は<図表1>のとおりである。また、対処方針又は対応策に関してどのような記載がなされているかについて、開示状況を調査した。調査結果は、<図表2>のとおりである。なお、ウクライナ情勢との関連が明示されていない地政学リスクの高まりに関する記載は、本分析においてはカウントしていない。

<図表1> 本感染症及びウクライナ情勢に関する影響の記載状況

記載状況(注) 本感染症 ウクライナ情勢
2022年
3月期
2023年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
① 自社の属する業界や自社にどのような影響があるかを記載 102社 67社 26社 19社
(うち、事業又はセグメントごとにどのような影響があるかを記載) 34社 19社 3社 4社
② 経済又は社会全般に対してどのような影響があるかを記載(①を除く) 44社 47社 21社 20社
③ 経済全般の先行きが不透明又は影響がある旨のみ記載(①、②を除く) 25社 10社 35社 27社
小計 171社 124社 82社 66社
記載なし 27社 77社 116社 135社
合計 198社 201社 198社 201社

(注)「事業等のリスク」の記載を参照している場合には、参照先の記載内容から判断している。

<図表2> 本感染症及びウクライナ情勢への対処方針又は対応策の記載内容

記載内容(注) 本感染症 ウクライナ情勢
2022年
3月期
2023年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
感染拡大防止に取り組み事業活動を継続していく旨 46社 13社
新たな需要に対応する商品やサービスの提供、増産や安定供給に取り組む旨 36社 21社 4社 3社
将来計画や事業戦略に織り込んだ旨 29社 19社 2社 4社
在宅勤務や業務のデジタル化の推進等を行う旨 25社 11社
既存のコストを削減していく旨 5社 2社 3社
具体策は示さず、影響を注視する、柔軟又は慎重に対応する旨を記載 9社 8社 9社 7社
その他 2社 4社
合計 152社 74社 22社 14社

(注)複数の項目を記載している場合には、それぞれ1社としてカウントしている。

<図表1>のとおり、経営環境についての経営者の認識の説明において影響を記載している会社は、本感染症については2022年3月期から減少し124社(61.7%)、ウクライナ情勢については66社(32.8%)となった。特に、本感染症について、経済が回復した旨を記載している会社が40社あり、会社に与える影響が軽微になったことから本感染症の影響に関する記載を省略する会社が増えたと考えられる。また、<図表2>のとおり、対処方針又は対応策の記載内容を記載した会社は、本感染症については「新たな需要に対応する商品やサービスの提供、増産や安定供給に取り組む旨」や「将来計画や事業戦略に織り込んだ旨」を記載していた一方で、ウクライナ情勢については、そのような対処方針又は対応策を記載した会社は少数であり、「具体策は示さず、影響を注視する、柔軟又は慎重に対応する旨を記載」した会社が最も多かった。

(2) 事業等のリスク

調査対象会社(201社)を対象に、「事業等のリスク」において、本感染症及びウクライナ情勢に関連するリスク及び当該リスクに対する対応策を記載しているか、開示状況を調査した。調査結果は<図表3>のとおりである。

「事業等のリスク」に関連するリスクを記載している会社は、本感染症については2022年3月期に引き続き大半の175社(87.1%)、ウクライナ情勢については47社(23.4%)であった。このうち、当該リスクに対する対応策を「事業等のリスク」に記載している会社は、本感染症については2022年3月期に引き続き大半の140社(69.7%%)、ウクライナ情勢については25社(12.4%)であった。

リスクの記載内容は、本感染症については<図表4>のとおりであった。本感染症に関するリスクの記載は、2022年3月期とおおむね近い傾向であったが、「自然災害・感染症リスク」のように自然災害と並列してリスクを開示する会社が多く見受けられた。また、「操業の中止等の事業の停止リスク」や「需要の減少を含む販売市場の環境に及ぼすリスク」を記載した会社が多かった。

<図表3> 本感染症及びウクライナ情勢に関するリスクの記載状況

記載状況 本感染症 ウクライナ情勢
2022年
3月期
2023年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
リスクの記載あり 185社 175社 45社 47社
(うち、リスクへの対応策の記載あり) 153社 140社 23社 25社
リスクの記載なし 13社 26社 153社 154社
合計 198社 201社 198社 201社

<図表4> 本感染症に関するリスクの記載内容

記載内容(注1) 2022年
3月期
2023年
3月期
操業の中止等の事業の停止リスク(注2) 140社 142社
需要の減少を含む販売市場の環境に及ぼすリスク 88社 74社
サプライチェーンの中断リスク 46社 40社
取引先の信用リスクの悪化 19社 17社
資産価値の毀損リスク 12社 9社
資金調達リスク 8社 2社
在宅勤務の拡大に伴う情報流出リスク 4社
追加的な債務負担リスク 3社 2社
その他 11社 6社

(注1)複数の項目を記載している場合には、それぞれ1社としてカウントしている。

(注2)自然災害に関するリスクに本感染症の内容を含めて記載している場合には、「操業の中止等の事業の停止リスク」としてカウントしている。

(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」分析」を一部修正)

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